上 下
103 / 121

103 生贄?

しおりを挟む
 レプトロック。それは時を止める呪文だ。あのロリババア固有魔術の一つでもある。

 私は目を覚ました。いや、目はずっと開けていた。ただ、時が解かれたのだ。

「モナ。大丈夫?」

 目の前にキラキラリアンの顔があった。苛つく!!いや、その前に何が起こった!

「ここはどこよ!」

 周りを見渡してもジュウロウザとシンセイの姿が見えない。すごい不安感が襲ってきた。ヤバイ。ここやばいよ!

「ルルド遺跡だよ」

「はぁ?!リアン!馬鹿でしょ!今のレベルでルルドに来てどうするの!」

 絶対に死ぬ。こんなところに居たら絶対に死ぬ。

「うるさいわね。ここに来ることが目的だったのだから、ルルドに来るなんて当たり前でしょ!」

 ルナは何を言っているのだと言わんばかりの態度だ。私が何を言っているんだと言いたい。

「ルナ!常闇の君のサブイベントを攻略して、そんなことを言っているのよね」

 あのサブイベントを攻略して言っているのなら、何か考えがあってのことなんだろう。

「はぁ?サブイベントなんてする必要ないでしょ?ああ、でもネットでは見たことあるから大丈夫。常闇の君を見つけたら逃げればいいのでしょ?」

 駄目だ。サブイベントを攻略してなかった。戻ろう。私だけ戻ればいい。

「悪いけど、私は帰るから」

「駄目よ。メリーローズ!」

「悪いけど来てもらうのじゃ」

 ロリババアがそう言うと、小さなステッキを私に向けて振り、『エルバアノ』と呪を唱えた。草が私に絡みつき、帰ろうとした私を引き止めたのだ。
 まだ、ここは転移装置がある部屋だ。時間はかかるだろうが、待てば転移装置が使えることになるのに!
 っていうか魔術で拘束されているのに結界が反応してない!使えない!
 あれか!攻撃性がないからか!

 私はノアールごと拘束され歩かされている。そう、ノアールを抱えたままだ。す、少しならいいのだけど、流石に筋肉のない私の腕がプルプルしてきた。

「ぷっぷー?」

 何を言っているかわからないけど、心配してくれているのだろう。

「ちょっと、早く歩けないの!」

 ルナに文句を言われた。いや、私の歩く速度はこれ以上早くならない。幼児並の速さからは早くはならない。

「悪いけど、私の歩く速度はこれで精一杯。リアンに聞いてみなさいよ。答えは同じだから」

「リアン!モナが遅すぎるわよ!」

「え?モナとの散歩はこんなものだよ。これ以上早く歩くとコケるから、もっと遅くなるよ」

 リアンは経験済みだ。私を散々引っ張り回したのだから。

「チッ!まぁいいわ。もうすぐだから」

 何がもうすぐ?出口はまだまだ先だけど?

「でも、ここは魔物がいないのじゃろうか?」

「いないならそれでいい。それよりもお腹が空いた」

 お腹を擦りながら女剣士ルアンダが言っている。携帯食でもかじっておけばいいのに。

「ここで、休憩なんて取らないからね」

 ルナの言うとおりだ。ここで休憩なんて命取りになってしまう。はぁ。私はここで死んでしまうのだろうか。

 ん?あれ?踊り子シュリーヌが居ない?ああ、そうか転移は5人まで私を転移させるために踊り子シュリーヌを置いてきたということか。


「ああ、多分ここね」

 ルナがそんなことを言って足を止めた。目の前には厳重な金属製の扉がある。あれ?なんかここであったような?うーん?

「メリーローズ!」

「わかっておるのじゃ。すまぬのぅ」

 ロリババアは私に謝って部屋の中央に連れて行った。そして、四角い台の上にのるように促す。

 くー!喉の奥に何かが詰まっているように思い出せない。違うな。目からウロコが溢れるくらい?ああ、なんだか不安感に押しつぶされそうで、思考がまとまらない。

「リアン!さっさとしてもらえる?」

「モナごめんね」

 そう言ってリアンは腰に佩いてある剣を抜いた。
 あ!思い出した!

 私の左胸に衝撃が走った。

 転移の間からはルルド遺跡の出口にはいけない。だけど出入りできる方法があるとネットで流れていた。仲間を犠牲にすると扉が開くと。

 はぁ、そういう事か。だから、私に一緒に来ないかといい続けていたのか。最悪だなリアン!お前が犠牲になれ!

 っていうか結界は!!エスターテ神!使えないスキルをジュウロウザに与えたのか!

 胸の衝撃に私は後ろに倒れていく。そして、扉の開く音。去っていく足音。


 ·······



 ·····ん?痛くない。痛いのは倒れた時に打った頭が痛い。
 私を拘束してた草もなくなっていたので、刺されたはずの胸元を擦るが何も傷が付いていない。
 結界が役に立っていた!これはあれか!私の身を傷つけるモノに対して防御するというものだったりするのか!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で婚活を ~頑張った結果、狼獣人の旦那様を手に入れたけど、なかなか安寧には程遠い~

リコピン
恋愛
前世、会社勤務のかたわら婚活に情熱を燃やしていたクロエ。生まれ変わった異世界では幼馴染の婚約者がいたものの、婚約を破棄されてしまい、またもや婚活をすることに。一風変わった集団お見合いで出会ったのは、その場に似合わぬ一匹狼風の男性。(…って本当に狼獣人!?)うっかり惚れた相手が生きる世界の違う男性だったため、番(つがい)やら発情期やらに怯え、翻弄されながらも、クロエは幸せな結婚生活を目指す。 シリアス―★☆☆☆☆ コメディ―★★★★☆ ラブ♡♡―★★★★☆ ざまぁ∀―★★☆☆☆ ※匂わす程度ですが、性的表現があるのでR15にしています。TLやラブエッチ的な表現はありません。 ※このお話に出てくる集団お見合いの風習はフィクションです。 ※四章+後日談+番外編になります。

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました

白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。 「会いたかったーー……!」 一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。 【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】

転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?

下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。 エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった! なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。 果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。 そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!? 小説家になろう様でも投稿しています。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【完結】若き最強のサムライ、異世界でも剣を振るう ~神威一刀流の秘剣を伝授された拙者、異世界に誘拐された婚約者を見つけるため剣鬼とならん~

岡崎 剛柔
ファンタジー
 片桐進之介は、江戸で最強の流派の1つと言われていた神威一刀流の正統継承者。  その進之介には剣の師匠の1人娘であり婚約者でもあった梓がいたのだが、ある日、梓は神隠しに遭ったように姿が消えてしまった。  進之介は行方不明の婚約者・梓を探すため、「神隠し」の噂が絶えない時坂神社へ向かう。  そこで進之介は異世界から来た謎の人物――クラウディオスと出会い、梓を攫った犯人だと思い戦いを挑む。  人間を超えた激闘の末、クラウディオスは進之介から逃げるように古池に飛び込んで姿を消してしまう。  進之介は驚愕しながらも、クラウディオスのあとを追って古池に飛び込む。  そして気づいたときには、進之介は見知らぬ異世界へ転移していた。  行方不明の婚約者・梓がいるかもしれない、南蛮国のような異世界へと――。  果たして進之介は、異世界で梓を見つけられるのか?  若き最強のサムライが、異世界で婚約者を見つけるために剣を振るう壮絶な冒険譚、ここに大開幕!

【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス
恋愛
「え、ここって四つ龍の世界よね…?なんか体ちっさいし誰からも見えてないけど、推しから認識されてればオッケー!待っててベルるん!私が全身全霊で愛して幸せにしてあげるから!!」 乙女ゲーム「4つの国の龍玉」に突如妖精として転生してしまった会社員が、推しの悪役である侯爵ベルンハルト(通称ベルるん)を愛でて救うついでに世界も救う話。 本編完結!番外編も完結しました! ●幼少期編:悲惨な幼少期のせいで悪役になってしまうベルるんの未来を改変するため頑張る!微ざまあもあるよ! ●学園編:ベルるんが悪役のままだとラスボス倒せない?!効率の良いレベル上げ、ヒロインと攻略キャラの強化などゲームの知識と妖精チート総動員で頑張ります! ※推しは幼少期から青年、そして主人公溺愛へ進化します。

処理中です...