91 / 121
91 夏の神エスターテ神
しおりを挟む
─そなた等の願いを叶えてやろう─
ふぉ!またか!
─道中の安全を祈願した娘よ、そなたには輿図と移動の呪を授けよう─
ヨズ?ヨズって何?意味がわからないのだけど?
─守護の娘を如何なる厄災からも守護する力を望んだ者よ、陣の呪を授けよう─
ジンもよくわからないな。
─主の意を汲むことを望んだ者よ、仁の意を授けよう─
ん?呪じゃなくてイ?はぁ、神のお言葉は難しいな。
─そして、久しく我が神殿を訪れた、そなた達に極の逆転を授けよう─
なんだって!
「マジですか!」
驚きのあまり、思わず下げていた頭を上げて、上を仰ぎ見た。そこには宙に漂っている赤き衣を纏い、海の青を映したような鮮やかな青い髪が印象的な男性が存在していた。そして、そのエスターテ神はニヤリと笑った顔を私に見せ、泡のように姿を消していった。
【極の逆転】
ネット上では噂には上がっていた。そのスキルを使うと一定の時間を巻き戻せるのだ。そう、終末を変えることができるという意味の極の逆転。死んだ者も死んだ事にならず、生きたまま存在できる未来を作れるある意味チートスキル。
え?というかここでそんな物もらえた?夏の神殿って5日後に発生する果実を食すればランダムで基本ステータスのいずれかがアップするだけのものだったはず。
「モナ殿如何したのだ?」
私が上を見たまま固まっているので、ジュウロウザが心配でもしたのだろう。しかし、私は興奮したままジュウロウザに答える。
「いかがしたも何も【極の逆転】のスキルですよ!こんな時間の逆行が行えるスキルなんて普通は貰えないです!」
「時間の逆行?」
「そうです!今の時間軸を起点に一定時間が戻せるのです。····まぁ、使うことが無いことが一番いいことなのですけど」
冷静に考えれば、使わないことの方が一番いい。時間を巻き戻すなんて、どれだけリスクがあるかわからない。
「気にしないでください。思ってもないスキルを戴いたので、驚いてしまっただけです。ここで、あと5日ほど時間を潰さないといけないので、私は白亜の間に行きたいです」
「モナ殿が行きたいところに行けばいい。それで、白亜の間というところはどこに行けばいい?」
「先程の道を戻って一番左の細い道です」
私がそう答えると同時にジュウロウザに抱えられてしまった。だから、私は歩けますよ!
ジュウロウザに言っても抱えられているのは変わりがないので、私はステータスを確認する。先程エスターテ神から言われた【輿図と移動の呪】だ。
ステータスを開くとスキルの欄が増えている。マップスキルと転移のスキルだ。え?転移?個人で転移が行えるの?
取り敢えずマップスキルを使ってみる。
すると突然、目の前に立体的な地球儀が浮かんできた。
「ふぉ!」
驚きのあまり思わず声がもれてしまった。
よく見ると、正確には地球ではない。なぜなら、その地球儀には、ユーラシア大陸もアメリカ大陸も見当たらず。薄っすらと記憶の海に没しているゲームの世界儀に見える。
で、これをどうしろと?拡大してみる?
見慣れた現在地を示すマークのところを親指と人差し指を広げる動作をしてみる。うん、微妙に拡大された。それをそのまま拡大してみる···こ、これは航空写真?すごく鮮明に木々が見られ、神殿を囲っている泉がキラキラしている。キラキラ?これはLIVE映像?ど、何処から撮っているの?
あ、木々の間に黒い馬が自分の倍程の大きさの何かの死骸を食べてい··見なかったことにしよう。ベルーイは元気そうだった。
神殿のところをダブルクリックしてみるとピンが落ちてきた。
〘ここに転移しますか?〙
「へ?」
なんか表示が現れた。もしかして、ピンが落ちた所に転移ができる?な、何ていうことだ!ゲームの時に転移のスキルがあったらもう少しスムーズに進められたんじゃないのか?
「モナ殿どうかしたのか?」
私があまりにも怪しい行動をして、怪しい声を発していたから、頭がおかしくなったと思われたのかもしれない。
「え?あの、戴いたスキルが思ったよりも凄かったので、驚いてしまったのです。この世界地図があるだけでも凄いのに、そこで示した所に転移ができるのです!ん?これって何人まで転移ができるんだろう」
転移装置は5人だ。ということはそれよりも少ない?わからない。私の目でもそこまで詳しくは視えない。
そして、そのままジュウロウザを見てしまった。ジュウロウザの新たに発生したスキルはというと。
【星結界スキル】
おお!結界の中でも上から2番目の強固な結界だ。これは極級の魔術を受けてもびくともしない強度がある結界だ。でも、なぜに結界?まぁ、いいか。
「それで、白亜の間とはここでいいのか?」
細い廊下を通り抜けると、突然青い空が広がった。その先には白い美しい宮殿が水の上に浮かんでいるように見える。
しかし、水は石の通路の上を流れるようにあるだけで深さはない。これは白い宮殿を引き立てる水なのか涼を求める水なのかわからないが、この空間は美しいとしか表現ができない。
「ええ、奥の宮殿に行ってください」
「これはいつの間にか外に出たのであろうか?」
シンセイが青い空を見ながら言った。
「室内ですよ。この神殿はあと3つこのようなところがあります。ここは世界のすべての知識があると言われている書物の数々と世界の始まりを記した【世界の書】があるのです」
そう、ゲームではこの宮殿を訪れても、天井まである本を調べても、〘ただの本〙としか示されず、【世界の書】を調べても〘世界の始まりが書かれている〙としかなかった。
んな訳あるか!本がこれでだけあって、目ぼしい情報が得られないなんておかしすぎる!
と、画面に向かって叫んだことが、思い出されて、気になっていたのだ。何が書かれていたのだろうって
そして、私達は5日間という時間を膨大な書物がある白い宮殿ですごし、後ろ髪を引かれながら、果実を探し、夏の神殿を後にしたのだった。
ふぉ!またか!
─道中の安全を祈願した娘よ、そなたには輿図と移動の呪を授けよう─
ヨズ?ヨズって何?意味がわからないのだけど?
─守護の娘を如何なる厄災からも守護する力を望んだ者よ、陣の呪を授けよう─
ジンもよくわからないな。
─主の意を汲むことを望んだ者よ、仁の意を授けよう─
ん?呪じゃなくてイ?はぁ、神のお言葉は難しいな。
─そして、久しく我が神殿を訪れた、そなた達に極の逆転を授けよう─
なんだって!
「マジですか!」
驚きのあまり、思わず下げていた頭を上げて、上を仰ぎ見た。そこには宙に漂っている赤き衣を纏い、海の青を映したような鮮やかな青い髪が印象的な男性が存在していた。そして、そのエスターテ神はニヤリと笑った顔を私に見せ、泡のように姿を消していった。
【極の逆転】
ネット上では噂には上がっていた。そのスキルを使うと一定の時間を巻き戻せるのだ。そう、終末を変えることができるという意味の極の逆転。死んだ者も死んだ事にならず、生きたまま存在できる未来を作れるある意味チートスキル。
え?というかここでそんな物もらえた?夏の神殿って5日後に発生する果実を食すればランダムで基本ステータスのいずれかがアップするだけのものだったはず。
「モナ殿如何したのだ?」
私が上を見たまま固まっているので、ジュウロウザが心配でもしたのだろう。しかし、私は興奮したままジュウロウザに答える。
「いかがしたも何も【極の逆転】のスキルですよ!こんな時間の逆行が行えるスキルなんて普通は貰えないです!」
「時間の逆行?」
「そうです!今の時間軸を起点に一定時間が戻せるのです。····まぁ、使うことが無いことが一番いいことなのですけど」
冷静に考えれば、使わないことの方が一番いい。時間を巻き戻すなんて、どれだけリスクがあるかわからない。
「気にしないでください。思ってもないスキルを戴いたので、驚いてしまっただけです。ここで、あと5日ほど時間を潰さないといけないので、私は白亜の間に行きたいです」
「モナ殿が行きたいところに行けばいい。それで、白亜の間というところはどこに行けばいい?」
「先程の道を戻って一番左の細い道です」
私がそう答えると同時にジュウロウザに抱えられてしまった。だから、私は歩けますよ!
ジュウロウザに言っても抱えられているのは変わりがないので、私はステータスを確認する。先程エスターテ神から言われた【輿図と移動の呪】だ。
ステータスを開くとスキルの欄が増えている。マップスキルと転移のスキルだ。え?転移?個人で転移が行えるの?
取り敢えずマップスキルを使ってみる。
すると突然、目の前に立体的な地球儀が浮かんできた。
「ふぉ!」
驚きのあまり思わず声がもれてしまった。
よく見ると、正確には地球ではない。なぜなら、その地球儀には、ユーラシア大陸もアメリカ大陸も見当たらず。薄っすらと記憶の海に没しているゲームの世界儀に見える。
で、これをどうしろと?拡大してみる?
見慣れた現在地を示すマークのところを親指と人差し指を広げる動作をしてみる。うん、微妙に拡大された。それをそのまま拡大してみる···こ、これは航空写真?すごく鮮明に木々が見られ、神殿を囲っている泉がキラキラしている。キラキラ?これはLIVE映像?ど、何処から撮っているの?
あ、木々の間に黒い馬が自分の倍程の大きさの何かの死骸を食べてい··見なかったことにしよう。ベルーイは元気そうだった。
神殿のところをダブルクリックしてみるとピンが落ちてきた。
〘ここに転移しますか?〙
「へ?」
なんか表示が現れた。もしかして、ピンが落ちた所に転移ができる?な、何ていうことだ!ゲームの時に転移のスキルがあったらもう少しスムーズに進められたんじゃないのか?
「モナ殿どうかしたのか?」
私があまりにも怪しい行動をして、怪しい声を発していたから、頭がおかしくなったと思われたのかもしれない。
「え?あの、戴いたスキルが思ったよりも凄かったので、驚いてしまったのです。この世界地図があるだけでも凄いのに、そこで示した所に転移ができるのです!ん?これって何人まで転移ができるんだろう」
転移装置は5人だ。ということはそれよりも少ない?わからない。私の目でもそこまで詳しくは視えない。
そして、そのままジュウロウザを見てしまった。ジュウロウザの新たに発生したスキルはというと。
【星結界スキル】
おお!結界の中でも上から2番目の強固な結界だ。これは極級の魔術を受けてもびくともしない強度がある結界だ。でも、なぜに結界?まぁ、いいか。
「それで、白亜の間とはここでいいのか?」
細い廊下を通り抜けると、突然青い空が広がった。その先には白い美しい宮殿が水の上に浮かんでいるように見える。
しかし、水は石の通路の上を流れるようにあるだけで深さはない。これは白い宮殿を引き立てる水なのか涼を求める水なのかわからないが、この空間は美しいとしか表現ができない。
「ええ、奥の宮殿に行ってください」
「これはいつの間にか外に出たのであろうか?」
シンセイが青い空を見ながら言った。
「室内ですよ。この神殿はあと3つこのようなところがあります。ここは世界のすべての知識があると言われている書物の数々と世界の始まりを記した【世界の書】があるのです」
そう、ゲームではこの宮殿を訪れても、天井まである本を調べても、〘ただの本〙としか示されず、【世界の書】を調べても〘世界の始まりが書かれている〙としかなかった。
んな訳あるか!本がこれでだけあって、目ぼしい情報が得られないなんておかしすぎる!
と、画面に向かって叫んだことが、思い出されて、気になっていたのだ。何が書かれていたのだろうって
そして、私達は5日間という時間を膨大な書物がある白い宮殿ですごし、後ろ髪を引かれながら、果実を探し、夏の神殿を後にしたのだった。
5
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる