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88 氷竜の卵
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再び旅に出る用意を始めることになった。今度は往復二ヶ月かかる上に、ダンジョンの攻略だ。生きて帰って来れるだろうか。
そして、私の膝の上にはむっちりした生き物が鎮座している。そう、とうとう氷竜の卵が孵ったのだ。今までおざなりジュウロウザが卵に魔力を与えていたが、リアンが頻繁に訪ねてきてから、一日の終りに魔力を全て卵に与え始め、5日で孵ったのだ。え?この2ヶ月は何だったの?
魔力を本気で与え始めた5日後の夜に卵にヒビが入ったと、ジュウロウザから卵を渡された。
いや、私に渡されてもコレをどうしろと?
親と認識させる?
それ、困るんだけど?
私、この卵でも大概重いのだけど?
それにドラゴンって鳥のような親の認識機能ってあるのだろうか。
卵にヒビが入り、ドキドキしながら待っていると、上の殻が大きく割れ、氷竜の顔が···?氷竜って黒かった?
思わず魔力を与えたジュウロウザをジト目で見てしまう。何故に黒い!生まれたばかりだから黒いのか!いや、ゲームでは真っ白だったよ。
「キトウさん、氷竜は黒いのでしょうか?」
「あ、いや。そんなことはないはずだが」
戸惑うジュウロウザの声が聞こえた。そして、シンセイの笑い声が部屋に響いた。
「ハハハッ。これは良き竜になるのではなかろうか?黒き背に白き花が舞っておるわ」
なんだって!思わず、まだ一部殻がついていた幼竜をくるりと回して、背中を見た。確かに黒い鱗の一部が白くなっており、さくらが舞っているように見えなくもない。そう、見えるだけで殻がこびりついているだけでは?
幼竜の黒く一部白い背中を擦ってみるも、落ちる感じではない。
嫌な予感がしつつ幼竜を視てみると
【マレキの守護者】
マレキって何!意味がわからないのだけど?
ついでに私のステータスも視てみる。
【惑乱のマレキ】
あ、うん。もっとわからなくなってしまった。見なかったことにしよう。
そして、私の膝の上には氷竜という種族のはずだが、黒い鱗を纏った幼竜が雪華藤をむしゃむしゃと食べている。
「モナちゃん!新しい服できたわよ」
そう言って、玄関から入って来たのはルードの母親のトゥーリさんだ。アレーネさんが押し付けるように大量に布地をお礼にと持ってきてから、こうしてトゥーリさんが服を持ってくるようになった。何も言わないけど、リアンがやらかしたお詫びもあるのだろう。
「秋用の服よ。これでリリーちゃんの結婚式に出てね」
そう、あれから2ヶ月も経っているのに、まだ式をしていなかったのだ。
「ノワールにはこの蝶ネクタイね」
そう言って、幼竜に金色の蝶ネクタイをトゥーリさんは合わせている。名前はいつの間にかソフィーが【ノワール】と呼んでいたので、そのまま採用している。
リリーなのだけど、流石にすぐはリリーの体調が戻らないだろうからと、夏に式をという話だったのだ。けれど、夏になるとリリーは体調を崩し、家から出られないようになった。
病気ではなく、つわりだ。かなり酷いらしい。新しい命がこの村に誕生することは喜ばしいことだ。きっと天使の子も天使に違いない。キールの要素は全て排除してもらって構わないから。
そんなことで、つわりが収まるであろう秋に式をあげようと言うことになったらしい。
その頃に私は村に戻って来れるだろうか。
「あと、旅装束よ。寒さにも暑さにも耐性があって、どんな環境でも快適に過ごせるように作ってあるわ」
「ありがとう。トゥーリさん」
トゥーリさん!凄い!
実は夏に村の外に出るのは嫌だったのだ。この村は箱庭だ。だから、ある程度気温の上下はあるけど、結界により年中快適に過ごせるようにされている。
一度、真夏に隣町に行って動けなくなり、荷馬車から一歩も降りなかったこともあるぐらいだ。
この服があればこれから行く南の国も縦断することができるだろう。
「モナちゃん!モナちゃんの鞄を改造してもらったわよー」
今度は母さんが私の拡張機能付きの鞄を持って帰ってきた。村にいる魔具師に頼んでいたものが、出来上がったらしい。そう、拡張機能の上に時間停止機能を追加してもらったのだ。これで、色々持って行けて往復2ヶ月とプラスαを過ごすことができるだろう。
「ありがとう」
「ぷー」
ああ、雪華藤ね。不満げに声を上げた、黒いむっちりした幼竜に雪華藤を与える。それを美味しそうにパクパク食べている姿は可愛い。そのうち巨大化するのだろうけど。
「おねぇちゃん!お薬できたから忘れずに持っていってね」
白い紙、赤い紙、青い紙に分けられた粉の薬が差し出された。この粉にする過程のフリーズドライの魔術はジュウロウザが覚えて粉にしてくれたものだ。あの、私の曖昧な表現でよくここまでしてくれたものだと関心する。
「ソフィー。ばぁちゃんもありがとう」
私が一ヶ月もかけて旅に出ることに誰も反対せずに、逆にその準備をしてくれる。本当に感謝しかない。
いや、一人だけ反対している人物が居るのだけど···。
そして、私の膝の上にはむっちりした生き物が鎮座している。そう、とうとう氷竜の卵が孵ったのだ。今までおざなりジュウロウザが卵に魔力を与えていたが、リアンが頻繁に訪ねてきてから、一日の終りに魔力を全て卵に与え始め、5日で孵ったのだ。え?この2ヶ月は何だったの?
魔力を本気で与え始めた5日後の夜に卵にヒビが入ったと、ジュウロウザから卵を渡された。
いや、私に渡されてもコレをどうしろと?
親と認識させる?
それ、困るんだけど?
私、この卵でも大概重いのだけど?
それにドラゴンって鳥のような親の認識機能ってあるのだろうか。
卵にヒビが入り、ドキドキしながら待っていると、上の殻が大きく割れ、氷竜の顔が···?氷竜って黒かった?
思わず魔力を与えたジュウロウザをジト目で見てしまう。何故に黒い!生まれたばかりだから黒いのか!いや、ゲームでは真っ白だったよ。
「キトウさん、氷竜は黒いのでしょうか?」
「あ、いや。そんなことはないはずだが」
戸惑うジュウロウザの声が聞こえた。そして、シンセイの笑い声が部屋に響いた。
「ハハハッ。これは良き竜になるのではなかろうか?黒き背に白き花が舞っておるわ」
なんだって!思わず、まだ一部殻がついていた幼竜をくるりと回して、背中を見た。確かに黒い鱗の一部が白くなっており、さくらが舞っているように見えなくもない。そう、見えるだけで殻がこびりついているだけでは?
幼竜の黒く一部白い背中を擦ってみるも、落ちる感じではない。
嫌な予感がしつつ幼竜を視てみると
【マレキの守護者】
マレキって何!意味がわからないのだけど?
ついでに私のステータスも視てみる。
【惑乱のマレキ】
あ、うん。もっとわからなくなってしまった。見なかったことにしよう。
そして、私の膝の上には氷竜という種族のはずだが、黒い鱗を纏った幼竜が雪華藤をむしゃむしゃと食べている。
「モナちゃん!新しい服できたわよ」
そう言って、玄関から入って来たのはルードの母親のトゥーリさんだ。アレーネさんが押し付けるように大量に布地をお礼にと持ってきてから、こうしてトゥーリさんが服を持ってくるようになった。何も言わないけど、リアンがやらかしたお詫びもあるのだろう。
「秋用の服よ。これでリリーちゃんの結婚式に出てね」
そう、あれから2ヶ月も経っているのに、まだ式をしていなかったのだ。
「ノワールにはこの蝶ネクタイね」
そう言って、幼竜に金色の蝶ネクタイをトゥーリさんは合わせている。名前はいつの間にかソフィーが【ノワール】と呼んでいたので、そのまま採用している。
リリーなのだけど、流石にすぐはリリーの体調が戻らないだろうからと、夏に式をという話だったのだ。けれど、夏になるとリリーは体調を崩し、家から出られないようになった。
病気ではなく、つわりだ。かなり酷いらしい。新しい命がこの村に誕生することは喜ばしいことだ。きっと天使の子も天使に違いない。キールの要素は全て排除してもらって構わないから。
そんなことで、つわりが収まるであろう秋に式をあげようと言うことになったらしい。
その頃に私は村に戻って来れるだろうか。
「あと、旅装束よ。寒さにも暑さにも耐性があって、どんな環境でも快適に過ごせるように作ってあるわ」
「ありがとう。トゥーリさん」
トゥーリさん!凄い!
実は夏に村の外に出るのは嫌だったのだ。この村は箱庭だ。だから、ある程度気温の上下はあるけど、結界により年中快適に過ごせるようにされている。
一度、真夏に隣町に行って動けなくなり、荷馬車から一歩も降りなかったこともあるぐらいだ。
この服があればこれから行く南の国も縦断することができるだろう。
「モナちゃん!モナちゃんの鞄を改造してもらったわよー」
今度は母さんが私の拡張機能付きの鞄を持って帰ってきた。村にいる魔具師に頼んでいたものが、出来上がったらしい。そう、拡張機能の上に時間停止機能を追加してもらったのだ。これで、色々持って行けて往復2ヶ月とプラスαを過ごすことができるだろう。
「ありがとう」
「ぷー」
ああ、雪華藤ね。不満げに声を上げた、黒いむっちりした幼竜に雪華藤を与える。それを美味しそうにパクパク食べている姿は可愛い。そのうち巨大化するのだろうけど。
「おねぇちゃん!お薬できたから忘れずに持っていってね」
白い紙、赤い紙、青い紙に分けられた粉の薬が差し出された。この粉にする過程のフリーズドライの魔術はジュウロウザが覚えて粉にしてくれたものだ。あの、私の曖昧な表現でよくここまでしてくれたものだと関心する。
「ソフィー。ばぁちゃんもありがとう」
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