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63 山頂まで

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 日が沈んでからメルトの街まで戻って来た。帰りはベルーイに少し速度を上げてもらって、一日で山脈を降りきったのだ。

 レベルが上がって大丈夫だと思っていた私はフラフラしながら、ベルーイから降りることになり、結局、街の中をジュウロウザに抱えられる。なんだか行きしと変わらない姿で街の中に入って行った。

「モナちゃーん!」

 名を呼ばれ顔を上げると、ひっ!青年リアンが!

「モナちゃん!熱で倒れたって聞いて慌てて薬を持ってきたのよ!」

 母シアが手を振りながらこちらにやってきた。

「大丈夫?」
「モナ!熱はどうなんだ?直ぐに村に帰ろう!」

 父さん、暑苦しいから近づかないでほしい。それに街の往来の中で大きな声を出さないでほしい。

「大丈夫だから。今は移動に疲れて歩けないだけだから、大きな声を出さないで!フェリオさん、それ以上近づかないでください!」


 母さん達が泊まっている宿屋に連れてこられた。以前ここで泊まったところより格段にいいところだった。ベルーイを預けってくれるところは一つしかないのではなかったのか!
 ああ、もしかして人を見て判断された?ここの宿の支払いは出来ないだろうと。門番には支払い能力の低いように思われていたにも関わらず、人攫いには貴族に間違われるし、散々だ。

 この部屋は3部屋あって、それぞれ個室に最新式の魔石を熱源として発熱する魔道具が置かれていた。それに、キッチンにトイレ、浴槽のお風呂もある。この街に来た日もこの宿屋がよかった!

「モナちゃん!ご飯食べに行きましょ!」

 部屋の扉を勢いよく開けた母さんが言ってきた。ここの宿の食堂で両親と食事をする約束をしていたのだ。

 そして、私は母さんと向かい合って食べている。ジュウロウザは父さんとフェリオさんと別の席で食べている。フェリオさんを近づかせないでくれているなんてグッジョブ!

「モナちゃん。ごめんなさい」

 ん?なんで母さんが謝ってくるのだろう。

「私達の判断が間違っていたわ。あのときすぐさまリアンくんを連れて王都に戻れば、村があの様にならなかったのに」

「あ!夏燥熱はどうなった?」

「モナちゃんが頑張ってくれたおかげでみんな無事に回復しているわ」

 よかった。アネーレさんが頑張って届けてくれたおかげだ。

「ダンジョンの攻略中にこの話を兄さんから聞いてすっごく怒られたの『なぜ、リアンと共に直ぐに王都に引き返さなかった』って、後で思い返せばそうすべきところだったと思っているわ。あのときはリアンくんを納得させて、連れ帰ることしか思わなかったの」

 まぁ、リアンは一度言い出したら、納得するまでテコでも動かないときがある。多分、あのときも母さんが帰ろうとリアンに言っても恐らく納得はしなかっただろう。

「そ、それで、リアンはここにはいないよね」

 前と同じ様にひょっこり出てこられたら、発狂物だ。

「いないわよ」

 母さんからの言葉にホッとため息がでる。レベルが上がったと言っても幼児ステータスであることに変わりはない。

「リアンくんには勇者として魔物の討伐に行ってもらっているわ。仲間にする人はきちんと自分の目で見て決めなさいと言ってね」

 やはり、あの人選は誰かから勧められたのだろう。今度は自分で決めて欲しい。できれば、なるべくまともな人で。まとも···いるかなぁ。

「リアンが頑張って旅に行ってくれているならそれでいい」

 そして、魔王を倒して、そのまま帰って来なくていい。王女か聖女とでも幸せになってくれ、私はそれを影ながら応援するよ!

「それで、モナちゃん」

 母さんはテーブルの上に乗り出して、内緒話でもするように手を口元に持っていった。

「ん?なに?」

 それを私は普通に聞き返す?

「えっと、彼とはどこまでいったの?」

 カレとは何だ?私が意味がわからないと首を傾げるていると、母さんは『もう!』と言って

「キトーさんとよ」

 ああ、ジュウロウザと何処までって?それは勿論。

「山頂まで」

 私の答えに母さんはため息を吐いた。本当の事だし、嘘なんてついていなし。

「はぁ。そうね。そうなるわね。彼、モナちゃんの守護者になったのでしょ?」

 ん?私、守護者の話はしていないはずだけど?村にとって守護者は特別だと聞いた。だから、村に帰るまで誰にも話さないつもりだった。だけど、なんで母さんが知っている?

「アレーネから聞いたのよ。雪華藤を受け取った時に確認したって」

 確認?何を?意味がわからないのだけど?

「あら?キトーさんは話していないの?」

 ジュウロウザから?

「あ!モナちゃん。これ美味しいわね」

 母さんはいきなり話を変えた。これは後でジュウロウザから聞き出さないといけない。私が寝込んでいる間に何があったのかと。
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