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「どうしたのかな?」
スラリと背が高く、中性的な男性が私を抱えてニコリと微笑む。どこからか黄色い悲鳴が聞こえてきた。そして、なんだかざわざわと周りが騒がしくなってきた。
そうだよね。母が美人だということは、伯父さんも美人と言う事になる。男性なのに美人····表現が可笑しいが、そうとしか言えない。
「あ、外れてしまったね」
そう言って私にフードを被せてくれた。ああ、抱えられたことで、外套のフードが外れてしまったようだ。
「あのね、シオン伯父さんとマリエッタさんにお願いに来たんだ」
「ん?わざわざ王都まで?それならいつもの手紙で良かったんだよ」
いつも用事があるときは手紙をギルド経由で渡していた。しかし、王都まで来ることになったのは、リアンの所為だ。
「それは····「貴女!何年ここで受付をしているの!」」
マリエッタさんの怒った声が突然響き渡った。どうしたのだろうと、視線を向けると、先程の依頼申込みカウンターにいた女性に突っかかっていた。
「この魔石がクズのはずないでしょ!私達が依頼を受けるに価する良質な魔石よ!なのに····ああ、もしかしてコレを処分すると言いながら売るつもりだった?」
あっ。そういう事。どうも田舎から出てきた物知らずなカモが来たから、価値のない魔石と思い込ませて、ネコババしようとしたのか。
都会って怖ろしい!
「悪いけど、今後王都のギルドを私達は使わないわ」
そう言ってマリエッタさんがこちらの方に向かってきた。王都のギルドを使わないって、王都を拠点としないってことだ。それっていいのだろうか。
「モナちゃん。夕食まだって聞いたから、一緒に食べましょ!」
とてもにこやかにマリエッタさんが言ってきた。本当に良いのだろうか。
そして、私はシオン伯父さんに抱えられたまま一軒の店に連れて行かれた。
「ここの食事は美味しいのよ。それから貸し切りにしたからモナちゃんフードを取っていいわよ」
か、貸し切り!店の中を見渡すと30人は客が入りそうな広さはある。それが4人しかいないのに貸し切り!
「マリエッタさん、流石に貸し切るのはやり過ぎでは?」
「あら?当然のことよ」
そうか。AランクやSランクになると貸し切るのが普通なのか。しかし、4人だけなのだ。他のメンバーがここには居ない。
「あの?他のアルトさんやユーリカさんが居ないのだけど?」
気になる。ギルドの中では居たのだ。遠目で他のメンバーから手を振られ、挨拶をされたので手を振り返した。なのに、今は居ない。
「アルト達は受けた依頼を全力でやるように言っているから気にしなくていい」
シオン伯父さんはそう言っているが、今はもう日が暮れてしまっている。それに全力ってなに!
「しかし、あのジューローザがモナの護衛とは、テオも考えたな」
あのジュウロウザ?シオン伯父さんは私の隣に座っているジュウロウザを見る。あ、今はくっついていないよ。少しぐらい離れていても魔王は降って来ないことは立証されているから。
「キトウさんって有名?」
「あらあら?モナちゃん知らずに護衛をしてもらっていたの?」
え?それほど有名なの?まぁ、私の行動範囲は村と隣町しかなかったから、知らなくて当たり前なんだけど。常識がないと言われているみたいで嫌だな。っていうか、あの受付の女性に言われたけどね!
「Sランクのジューローザは有名だ。一月ほど前にワイバーンを五体倒しただとか。オーガの大群を駆逐しただとか。色々噂話が耐えないからな」
それはクラッシャーの所為だ!
私は隣のジュウロウザを伺い見る。いつもどうりの顔に見えるが、目が漂っていた。
どうやら、クラッシャーのお陰で周りからの評価が高いようだ。それが、良いのか悪いのか。
料理が運ばれ、食事を取りながら今回依頼するはずだった事を話す。
うん。確かに美味しい。美味しいが塩味が濃いな。労働者に向けた食事と言うことか。
「それで、リアンが村に行くって言っているから、私が王都まで来ることになったの」
「あらあら。モナちゃんのリアン嫌いに拍車がかかって来ているわね。モナちゃん、リアンはちょっとモナちゃんに対して頑張っちゃうけど、いい子なのよ?」
マリエッタさん。頑張るだけで、私の骨が折れたりヒビがいくのは問題があると思う。それに、リアンに頑張っているという表現はおかしい。
「シアもテオもリアンの指導役とは思っても見なかっただろうな。なんせ、依頼が新たに神託された勇者の指導だったのだからな。しかし、リアンが勇者とはある意味納得はできるが、神と言うものは何を考えているのやら」
─守護者を姫から離すなんて─
うんうん。リアンが勇者って納得はできるよね。色々村では問題を起こしてくれたから。特に農作業の時に!
そして、神様はきっと私に味方をしたのだ。このままでは私の腕一本ぐらい無くなりそうだと。
_____________
閑話
「おい、さっきの『翠玉の剣』のシオンを見たか?」
「ああ、見た見た。あいつ、笑えたんだんだな」
「でも、笑うとシア様にそっくり。はぁ、シアお姐さまもいいけど、笑顔のシオン様素敵すぎる」
「いや、今日の一番の議題は『グランツ』のシア様と『翠玉の剣』のシオン様に似た少女がいたことだ!これは由々しき事態!」
「はぁ。また、こいつおかしな事を言いだしたぞ」
「ファンクラブ会員No.10『ファケッ「おい、誰かこいつを家まで連れ帰ってくれ」·····」
_____________
補足
店を貸し切ったのはもちろんモナのためです。
スラリと背が高く、中性的な男性が私を抱えてニコリと微笑む。どこからか黄色い悲鳴が聞こえてきた。そして、なんだかざわざわと周りが騒がしくなってきた。
そうだよね。母が美人だということは、伯父さんも美人と言う事になる。男性なのに美人····表現が可笑しいが、そうとしか言えない。
「あ、外れてしまったね」
そう言って私にフードを被せてくれた。ああ、抱えられたことで、外套のフードが外れてしまったようだ。
「あのね、シオン伯父さんとマリエッタさんにお願いに来たんだ」
「ん?わざわざ王都まで?それならいつもの手紙で良かったんだよ」
いつも用事があるときは手紙をギルド経由で渡していた。しかし、王都まで来ることになったのは、リアンの所為だ。
「それは····「貴女!何年ここで受付をしているの!」」
マリエッタさんの怒った声が突然響き渡った。どうしたのだろうと、視線を向けると、先程の依頼申込みカウンターにいた女性に突っかかっていた。
「この魔石がクズのはずないでしょ!私達が依頼を受けるに価する良質な魔石よ!なのに····ああ、もしかしてコレを処分すると言いながら売るつもりだった?」
あっ。そういう事。どうも田舎から出てきた物知らずなカモが来たから、価値のない魔石と思い込ませて、ネコババしようとしたのか。
都会って怖ろしい!
「悪いけど、今後王都のギルドを私達は使わないわ」
そう言ってマリエッタさんがこちらの方に向かってきた。王都のギルドを使わないって、王都を拠点としないってことだ。それっていいのだろうか。
「モナちゃん。夕食まだって聞いたから、一緒に食べましょ!」
とてもにこやかにマリエッタさんが言ってきた。本当に良いのだろうか。
そして、私はシオン伯父さんに抱えられたまま一軒の店に連れて行かれた。
「ここの食事は美味しいのよ。それから貸し切りにしたからモナちゃんフードを取っていいわよ」
か、貸し切り!店の中を見渡すと30人は客が入りそうな広さはある。それが4人しかいないのに貸し切り!
「マリエッタさん、流石に貸し切るのはやり過ぎでは?」
「あら?当然のことよ」
そうか。AランクやSランクになると貸し切るのが普通なのか。しかし、4人だけなのだ。他のメンバーがここには居ない。
「あの?他のアルトさんやユーリカさんが居ないのだけど?」
気になる。ギルドの中では居たのだ。遠目で他のメンバーから手を振られ、挨拶をされたので手を振り返した。なのに、今は居ない。
「アルト達は受けた依頼を全力でやるように言っているから気にしなくていい」
シオン伯父さんはそう言っているが、今はもう日が暮れてしまっている。それに全力ってなに!
「しかし、あのジューローザがモナの護衛とは、テオも考えたな」
あのジュウロウザ?シオン伯父さんは私の隣に座っているジュウロウザを見る。あ、今はくっついていないよ。少しぐらい離れていても魔王は降って来ないことは立証されているから。
「キトウさんって有名?」
「あらあら?モナちゃん知らずに護衛をしてもらっていたの?」
え?それほど有名なの?まぁ、私の行動範囲は村と隣町しかなかったから、知らなくて当たり前なんだけど。常識がないと言われているみたいで嫌だな。っていうか、あの受付の女性に言われたけどね!
「Sランクのジューローザは有名だ。一月ほど前にワイバーンを五体倒しただとか。オーガの大群を駆逐しただとか。色々噂話が耐えないからな」
それはクラッシャーの所為だ!
私は隣のジュウロウザを伺い見る。いつもどうりの顔に見えるが、目が漂っていた。
どうやら、クラッシャーのお陰で周りからの評価が高いようだ。それが、良いのか悪いのか。
料理が運ばれ、食事を取りながら今回依頼するはずだった事を話す。
うん。確かに美味しい。美味しいが塩味が濃いな。労働者に向けた食事と言うことか。
「それで、リアンが村に行くって言っているから、私が王都まで来ることになったの」
「あらあら。モナちゃんのリアン嫌いに拍車がかかって来ているわね。モナちゃん、リアンはちょっとモナちゃんに対して頑張っちゃうけど、いい子なのよ?」
マリエッタさん。頑張るだけで、私の骨が折れたりヒビがいくのは問題があると思う。それに、リアンに頑張っているという表現はおかしい。
「シアもテオもリアンの指導役とは思っても見なかっただろうな。なんせ、依頼が新たに神託された勇者の指導だったのだからな。しかし、リアンが勇者とはある意味納得はできるが、神と言うものは何を考えているのやら」
─守護者を姫から離すなんて─
うんうん。リアンが勇者って納得はできるよね。色々村では問題を起こしてくれたから。特に農作業の時に!
そして、神様はきっと私に味方をしたのだ。このままでは私の腕一本ぐらい無くなりそうだと。
_____________
閑話
「おい、さっきの『翠玉の剣』のシオンを見たか?」
「ああ、見た見た。あいつ、笑えたんだんだな」
「でも、笑うとシア様にそっくり。はぁ、シアお姐さまもいいけど、笑顔のシオン様素敵すぎる」
「いや、今日の一番の議題は『グランツ』のシア様と『翠玉の剣』のシオン様に似た少女がいたことだ!これは由々しき事態!」
「はぁ。また、こいつおかしな事を言いだしたぞ」
「ファンクラブ会員No.10『ファケッ「おい、誰かこいつを家まで連れ帰ってくれ」·····」
_____________
補足
店を貸し切ったのはもちろんモナのためです。
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