勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

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20 なんとも侘びしい(十郎左 Side)

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 翌朝、モナ殿にルード殿とソフィー殿に言われた事を言わずに、村にまだ居たいと言えば、不機嫌な返事が返ってきてしまった。

 だから、俺の心の内を話した。この3日間何事もなく過ごせてとても幸せだったことを、するとモナ殿から言われてしまった。

「キトウさん、確か探しものがあったのでは?」

 探しもの確かにあった。しかし、それは俺を国から追い出すための口実だったと、気づいてしまったのだ。今まで何も手がかりがなかったのだ。今更、探そうとも思えない。

「キトウさん。『雪華籐』と『雷鳴鈴』は存在しますよ。どちらも、病を治す薬草です」

 そんな言葉が俺の耳に入って来た。在るのか?今まで誰も知らなかったのに?
 どうやら、他の3つも存在するらしい。

 モナ殿の知識はいったいどれほどあるのだろう。空の上の勇者しか行けないような場所にある薬草のことまで知っているなんて。

 しかし、モナ殿は肺病には『雪華籐』と『雷鳴鈴』だけでいいと言った。俺は妹の病の話はしていなかったはずだが、モナ殿の目はそんなことも見通せてしまうのだろうか。

 諦めていた思いが再び湧いて出てきた。薬草を持って帰れば、妹の病が治れば、皆が俺を受け入れてくれるのではないのだろうかと。

 いや、頭の中では無理だと理解はしている。

 しかし。でも。もしかすれば。
 未練だ。父上に認めてもらおうと努力し、家を継ぐために勉学に励んだ。その結果がこれだ。

 再び故郷の地を踏むことができないというのは、なんとも侘びしいものだ。



 町に入ってから直ぐに冒険者ギルドに入ったが、町に入ってから人々の視線が気になる。どうやら、モナ殿の容姿が人の視線を集めているようだ。
 確かにエルフの血が入っていれば、人離れをしているだろう。

 冒険者ギルドに入ってからも視線を集めたが、一箇所以外からの視線はすぐに外れた。
 未だに視線を向けられている場所に目をやれば、女性が人指を口元に持っていき黙っているように促された。
 どう見ても、あの村の住人だろう。薄い金色の女性はモナ殿とソフィー殿に似ており、金髪の男性はルード殿の面影がある。

 その金髪の男性がゆるりと立ち上がり、こちらに向かってきた。ニコニコとしている笑顔はルード殿を思わせる。
 しかし、ギルドの職員の女性に後ろを示され振り向いたモナ殿の反応は違っていた。

 悲鳴を上げ、俺の後ろに隠れてしまった。なぜ、このような態度なのかわからなかったが、その理由は直ぐにわかった。

 村でよく名を耳にしたリアンという人物が現れたのだ。確かにフェリオ殿はルード殿よりもリアン殿にそっくりだ。
 それも、モナ殿に会いにいくと言いながら、女性を5人も連れているというのはいかがなものかと思ってしまう。

 しかし、俺の印象では普通の若者の印象だ。モナ殿が毛嫌いする程ではないと思う。

 モナ殿がシア殿に呼ばれて行ったあと、フェリオ殿とモナ殿の父上がこちらに来た。

「やぁ、はじめまして。『グランツ』のフェリオだ。Sランクのキトー・ジューローザって有名だよね。一ヶ月ほど前だっけ?ワイバーン5体を単独で倒したんだって?」

「俺はモナの父親のテオだ。なんで、そのSランクのキトー・ジューローザがモナと一緒にここにいるんだ?いや、その前に娘を助けていただいたようで、感謝する」

 フェリオ殿はニコニコしながら、一ヶ月前の事を出してきたが、あれは何故かいきなり5体のワイバーンに囲まれてしまって、逃げ場がなく、相手をしただけだ。

 そして、盾を背負った大柄な人物はテオと名乗り、俺に頭を下げてきた。モナ殿曰く、それも俺の所為だったようだが。

「いえ、こちらこそ、その後怪我の治療をしていただき、助けていただきましたので、お互い様です。それで、モナ殿と共にいるのは、ルード殿とソフィー殿に護衛を頼まれたからです。あ、モナ殿本人はその事を知りません」

 そう説明すると二人は納得したのか、頷き視線を交わしていた。

「それじゃ、僕達からも依頼しようかな?ちょうど受付もそこにあるしね」

「モナはスライムにも勝てないほど弱いのに好奇心旺盛で困ることもあるのだが、そのお陰で村が豊かになっているのも事実だ」

 そう言って、二人は依頼受付の手続きを始めた。依頼料は星貨5枚!!

「これは些か高すぎるのでは?」

 依頼書を二人に差し戻した。1千万Gガルだなんてもらいすぎだ。

「え?Sランクへの指名依頼だからね。それにモナちゃんは何かとお金かかるよ。いきなりとんでもない物が欲しいって言い出すから」

「思い出すな。もっと使い勝手のいいキッチンが欲しいとか、浴槽が欲しいとか言われて、家ごと改装するはめになったからな」

 ああ、これはモナ殿の要望を叶えるための料金が含まれているのか。



 そして、路線馬車に乗ったのだが····。
 モナ殿が幼児並の体力しか無いというのを甘く見ていた。まさか、馬車に乗っているだけで、体力を奪われてしまうとは。

 これは次の街で騎獣を購入した方がいいのかもしれない。

「お嬢さん、大丈夫?」

 横に座っていた老婦人が声を掛けてきた。

「馬車に酔ってしまったの?もし良かったら、これをどうぞ。スッキリする飴よ」

 油紙に包まれた物を差し出してくれた。

「かたじけない」

 馬車酔いではないが、いただいておこう。老婦人の好意だ。
 もう少しすれば、休憩に入るだろう。そのときにはモナ殿も回復しているだろうか。

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