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11 確か探しものがあったのでは?
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翌朝、朝日が目に染みる中、荷馬車に荷物を積み込む。町に行って売る薬草や、前もって町に行ったときに持っていって欲しいと言われた家族への手紙。そして、今回大量に手に入れた良質な魔石。これを元手に水路の依頼をお願いするのだ。
「モナ殿、村長の家に行って借りて来たモノはどうすればいいのだ?」
ジュウロウザが村長の家に行って借りて来たモノを連れてきた。その横ではニコニコと笑っているソフィーとルードがいる。
ジュウロウザが隣町まで付いて行くと今朝言ってきたのだ。そのまま村を出ていってくれるのであれば、私は文句はない。
「荷馬車に繋いで」
村長のところから借りてきたモノは大きなトカゲだ。2メルほどある大きな緑色をしたトカゲ。
シルワリザード。足は早くはないが、力強く舗装されていない山道でも荷を引くことができるこの村ではなくてはならない家畜だ。
ジュウロウザがシルワリザードを繋いであるリードを荷馬車に繋いでくれている。この荷馬車もいつもの荷車と違い、人が引くものではない。一回り大きく、この村の周りの森を走行するために、足回りも丈夫に作ってあるものだ。
「おねぇちゃん。気をつけて行ってきてね」
ソフィーがお昼用のお弁当を差し出しながら言ってきた。もちろん、作ったのは私だ。ばぁちゃんとソフィーの分も作り置きをしてある。
「ふふふ。隣町に行くだけだから大丈夫だよ」
足の遅いシルワリザードで一日で往復できる距離に隣町はあるのだ。今日の夕方には戻ってこれる。
「でも、魔物が多くなってきているって聞くよ」
ルードも心配性だな。隣町との間にいる魔物なんて、スライムか一角兎ぐらいなのに。
「ルードも見送りありがとう。何かお土産買って帰ってくるね」
そう言って、私は外套を羽織り、荷馬車の御者台に座る。その隣にはもちろんジュウロウザがいる。この不幸の塊が居る中で村が何事もなく無事だったということは奇跡に近い。私は内心いつ魔王が空から降ってくるかとビクついていたのだ。それが今日で終わりかと思うと、嬉しい限りだ。
そして、シルワリザードのリードを揺らし進むことを促す。するとノシノシとシルワリザードが動き出した。
はっきり言ってこのシルワリザードの歩く速度は、人の歩く速度とそう変わらない。坂道だろうが、凸凹があろうが速度は変わらないので、人よりは少し速いと言ったほうが正しいだろう。
「モナ殿」
私は御者台でミサンガの続きを編んでいた。
「何?」
編みながら答える。いつもなら、御者はリアンに任せるのだけど、村から隣町には行ったことのないジュウロウザに任せるわけにはいかないので、私は御者台に座りながら編んでいた。
あ、うん。今まで御者台じゃなく、荷物と一緒になって、クッションの上に座っていたので、クッションのない荷馬車がこんなに不安定だと知らなかった。
私は木の根を踏んだ衝撃で、宙に浮いたのだった。
今の私の状態は昨日と同じ状態になっていた。不本意すぎる。また、ジュウロウザを背もたれにして座っているなんて。
しかし、魔王が降ってくる確率と私の精神負荷を考慮した結果と納得することにした。
「モナ殿に聞いてもらいたいのだが」
私の上から、遠慮がちな声が降ってくる。
「なんですか?さっさと言ってくれません?」
私はイラッとして、ジュウロウザにさっさと話すように促す。
「もう少し、プルム村に居たいのだが···」
「ああ゛?!」
あ、思わず心の声が漏れてしまった。村に居たいって?不幸の根源が何を言ってるんだ?
「そこの岩を右回りで。キトウさん。どういうことですか?麦の収穫までという話でしたよね」
村の周りに隠されている印を右回りで通るように指示を出し、ジュウロウザに尋ねた。
「そうなんだが、先程村長殿にも頼まれて、もう少しいてくれないかと」
「今まで、いる人達で賄っていたので、大丈夫です。問題ありません」
村長は昨日言っていた事をジュウロウザにも言ったようだ。
「人にこんなに頼りにされたことがなかったんだ。初めてだったんだ。沢山の人からありがとうと言ってもらったことも、助かったと言われたことも」
昨日は村の皆からお礼を言われていたことは確かだ。それが初めて?
「こんなに穏やかに過ごすことも子供の時以来だった」
え?どこまでクラッシャーが酷いの?いや、ゲームの内容からそれは推察できていた。
「だから、もう少しいてもいいだろうか」
私は大きく息を吐き出す。それ、私が凄く迷惑なんだけど?
「キトウさん、確か探しものがあったのでは?」
そう、ジュウロウザは言っていた『雪華籐』と『雷鳴鈴』を探していると。だから、それをさっさと探しに行けと促す。
「あの村にたどり着ける者は生きる場所がない者だったか」
ああ、私が村の説明をするのに使った言葉か。
「薬草を探しに行けというのは、俺を国から追い出すための餌だったのだろう?」
「モナ殿、村長の家に行って借りて来たモノはどうすればいいのだ?」
ジュウロウザが村長の家に行って借りて来たモノを連れてきた。その横ではニコニコと笑っているソフィーとルードがいる。
ジュウロウザが隣町まで付いて行くと今朝言ってきたのだ。そのまま村を出ていってくれるのであれば、私は文句はない。
「荷馬車に繋いで」
村長のところから借りてきたモノは大きなトカゲだ。2メルほどある大きな緑色をしたトカゲ。
シルワリザード。足は早くはないが、力強く舗装されていない山道でも荷を引くことができるこの村ではなくてはならない家畜だ。
ジュウロウザがシルワリザードを繋いであるリードを荷馬車に繋いでくれている。この荷馬車もいつもの荷車と違い、人が引くものではない。一回り大きく、この村の周りの森を走行するために、足回りも丈夫に作ってあるものだ。
「おねぇちゃん。気をつけて行ってきてね」
ソフィーがお昼用のお弁当を差し出しながら言ってきた。もちろん、作ったのは私だ。ばぁちゃんとソフィーの分も作り置きをしてある。
「ふふふ。隣町に行くだけだから大丈夫だよ」
足の遅いシルワリザードで一日で往復できる距離に隣町はあるのだ。今日の夕方には戻ってこれる。
「でも、魔物が多くなってきているって聞くよ」
ルードも心配性だな。隣町との間にいる魔物なんて、スライムか一角兎ぐらいなのに。
「ルードも見送りありがとう。何かお土産買って帰ってくるね」
そう言って、私は外套を羽織り、荷馬車の御者台に座る。その隣にはもちろんジュウロウザがいる。この不幸の塊が居る中で村が何事もなく無事だったということは奇跡に近い。私は内心いつ魔王が空から降ってくるかとビクついていたのだ。それが今日で終わりかと思うと、嬉しい限りだ。
そして、シルワリザードのリードを揺らし進むことを促す。するとノシノシとシルワリザードが動き出した。
はっきり言ってこのシルワリザードの歩く速度は、人の歩く速度とそう変わらない。坂道だろうが、凸凹があろうが速度は変わらないので、人よりは少し速いと言ったほうが正しいだろう。
「モナ殿」
私は御者台でミサンガの続きを編んでいた。
「何?」
編みながら答える。いつもなら、御者はリアンに任せるのだけど、村から隣町には行ったことのないジュウロウザに任せるわけにはいかないので、私は御者台に座りながら編んでいた。
あ、うん。今まで御者台じゃなく、荷物と一緒になって、クッションの上に座っていたので、クッションのない荷馬車がこんなに不安定だと知らなかった。
私は木の根を踏んだ衝撃で、宙に浮いたのだった。
今の私の状態は昨日と同じ状態になっていた。不本意すぎる。また、ジュウロウザを背もたれにして座っているなんて。
しかし、魔王が降ってくる確率と私の精神負荷を考慮した結果と納得することにした。
「モナ殿に聞いてもらいたいのだが」
私の上から、遠慮がちな声が降ってくる。
「なんですか?さっさと言ってくれません?」
私はイラッとして、ジュウロウザにさっさと話すように促す。
「もう少し、プルム村に居たいのだが···」
「ああ゛?!」
あ、思わず心の声が漏れてしまった。村に居たいって?不幸の根源が何を言ってるんだ?
「そこの岩を右回りで。キトウさん。どういうことですか?麦の収穫までという話でしたよね」
村の周りに隠されている印を右回りで通るように指示を出し、ジュウロウザに尋ねた。
「そうなんだが、先程村長殿にも頼まれて、もう少しいてくれないかと」
「今まで、いる人達で賄っていたので、大丈夫です。問題ありません」
村長は昨日言っていた事をジュウロウザにも言ったようだ。
「人にこんなに頼りにされたことがなかったんだ。初めてだったんだ。沢山の人からありがとうと言ってもらったことも、助かったと言われたことも」
昨日は村の皆からお礼を言われていたことは確かだ。それが初めて?
「こんなに穏やかに過ごすことも子供の時以来だった」
え?どこまでクラッシャーが酷いの?いや、ゲームの内容からそれは推察できていた。
「だから、もう少しいてもいいだろうか」
私は大きく息を吐き出す。それ、私が凄く迷惑なんだけど?
「キトウさん、確か探しものがあったのでは?」
そう、ジュウロウザは言っていた『雪華籐』と『雷鳴鈴』を探していると。だから、それをさっさと探しに行けと促す。
「あの村にたどり着ける者は生きる場所がない者だったか」
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