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115 ぐっ。意識が・・・

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「これオハギね。」

 ナーガの女性が黒い塊を置いて、新たなティーカップに入った抹茶も一緒に置いて去っていった。

 おはぎ?あずきがある?もち米がある?
 おはぎと言われた物を手に取り、口にする。マジで、あんこともち米だ。

 ここはダンジョンなのにどういう事だ?

「なぁ。これはなんだ?」

 おはぎと抹茶を指してユールクスに聞いてみた。しかし

『我の質問の方が先だ。エルトのダンジョンマスターの話だ。』

 アホー鳥の話が先なのか。はっきり言って俺もよくわからないぞ。

「詳しくはわからないが、外の人と意思の疎通を取る為に魔物に意識を憑依していたみたいだ。鳥型の魔物に憑依していた時は自由に飛んでいたし、俺と会話を普通に出来ていたな。」

『ふむ。』

 ユールクスは何かを考え込んでしまった。抹茶のお茶請けにおはぎを食べ、しばし待つ。
 外に興味を持っているユールクスだからな。エルトのダンジョンマスターのアホー鳥に憑依して外を堪能していた話は羨ましかったのだろうな。
 羨ましいのだろうか・・・段々ユールクスの眉間のシワが深くなってきたぞ。

『黒龍。そんなことできんぞ。そのダンジョンマスターを我のもとに連れてくるか、どうすればできるのか聞いて来い。』

 凄くイライラした感じでユールクスから言われた。憑依ということが出来ないのだろうか。しかし、ダンジョンマスターを連れ出すことは無理だろうから、聞いてくることぐらいしか出来なさそうだな。

「わかった。今度、西に行くから聞いてくる。それで、俺も聞いていいか?このおはぎの材料はどこから調達したんだ?」

 俺はおはぎが置いてあった皿を指して言った。俺はこの国でお米と言うものを見たことがない。それにお米はこの国じゃ寒すぎて育たないはずだ。

『それはダンジョンで採れた物だ。』

「は?ダンジョンで?」

 ダンジョンでお米が採れる?いや理には適っている。ダンジョン内の気候はダンジョンマスター次第だ。確かに記憶にある限りダンジョン内は寒いと言うより暑いという感覚の方がまさっていたような気がする。

『そもそも、その植物自体は天津が創ったものだ。天津が食べたいからと言ってダンジョン内で育てていたに過ぎん。』

「は?」

 天津が作った!いや、創ったのか。本当に天津は何でもありだったんだな。そう言えば、ルギアもソルも普通に弁当を食っていたな。お米を知っていたってことか。
 でも、あずきはこの国の気候でも育ちそうなんだが、ダンジョンで育てる理由があったのか?ただ単に、まとめて一緒に育ててもらおうとしたのだろうか。

「あと、エルフの件だが。東側の山脈の偵察をお願いしたい。エルフは索敵魔術を使うそうだから、それを考慮した人選で頼む。」

『山脈?』

 ああ、ユールクスは外に出られないから山脈がどういうものかわからないのか。あまり東側には行かなかったから、遠目でしか俺も見たことがないがいけるか。

 俺の魔力でユールクスの幻影に干渉し、頭の中で描いた映像を魔術で描き出す。

「『空中楼閣の夢幻』」

 そして、俺は昨年エルフから献上という名の強奪にあった街の入り口にユールクスと共にいた。

「エルフの事には関わるなと言われているから、一番近くてこの街からしか見たことがないが、あれがオーロ山脈だ。」

 そう言って遠目に見える連なる高い山々を指差す。かなりの距離があるが、東の方角に北から南に掛けて壁のように聳え立つ山脈が見える。

『ほぅ。ここは確かルアンと言う街だったか。この街も我のダンジョンだから、ここには行くことは出来るが、その先となると、さて、どうしたものか。』

 やはり、フィーディス商会があるこの街もダンジョンの一部だったのか。ユールクスは思案しているようだが、ダンジョンの外に魔物を出せないということなのだろうか。

「何が問題なんだ?確か天津の為に魔物を国の四方から攻めるようにしたんだよな。そんな感じで、それなりの能力のある魔物に頼めないのか?」

『そもそもだ。ダンジョンの外に出たモノと、どう意思の疎通をとるのだ?』

 意思の疎通ができない?あれ?エルトのダンジョンマスターはあのリヴァイアサンで生贄をダンジョンの中に誘導してたって事だよな。ダンジョンの外ではステータスが半減すると言っていたから、あの湾がダンジョンの外であった事は確かなはずだ。

 何が問題なんだ?エルトのダンジョンマスターが出来て、ユールクスが出来ない。ダンジョンマスターにも差がある?

「もしかして、エルトのダンジョンマスターに頼んだ方がいいのか?」

『それは我に出来ないといっているのか!』

 ユールクスから強烈な殺気を叩きつけられた。
 ぐっ。意識が・・・。

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