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114 ヤバくないですかぁー?

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 再度世界の頂点に君臨する?ああ、天津が懸念していたことが、起ころうとしているのか。

「正確には何が起こったんだ?」

「ああ、冒険者たちが依頼を受けにオーロ山脈に行った者たちが帰って来ないという事が頻発して、調査した結果。山脈の中でエルフ共が何かをしているらしいという事だけがわかった。」

 オーロ山脈。ギラン共和国の東側に連なる山脈のことだ。その更に東側の山々に囲まれた高地がシャーレン精霊王国だ。

「何かしているらしい?」

「ああ、エルフ共の索敵魔術を掻い潜るだけで一苦労なんだ。詳しくはわからんかった。」

 ん?その言い方だと

「ルギアが行ったのか?」

「ああ、他の者だと、いざと言うときにエルフに対抗出来ないからな。」

 おお、流石英雄様だな。しかし、ルギア一人で行くんじゃ危険なんじゃないのだろうか。明日にでも相談してみるか。

「そういう事だから、次は西側を回る予定だからな。」

 ソルがそう教えてくれた。しかし、直ぐには行かないはずだが、今度は西側か。エルトの漁村がどうなったか気になるな。まぁ、一ヶ月でそこまで変わらないか。


 翌朝、俺はジェームズに頼んで、地下に行く扉を開けてもらった。心配そうにジェームズが付いていこうかと言ってきたが、断って、地下への階段を降りていく。

 カツカツと靴の音が響く空間を抜け、ダンジョンへ続く扉を開けるとそこは・・・蒼い蒼い空間が広がっていた。ただ何もない空の上だった。
 危っな!このまま足を踏み出すと落ちるじゃないか!

『くくく。別に落ちることはないぞ。』

 目の前には空中に浮いたナーガのダンジョンマスターが存在していた。
 浮くのか!ここは普通に浮くことができるのか!

『ただの幻影だ。』

 ああ、そうか。そうだった。最初はただの岩をくり抜いたような洞窟に神殿のような建物の入口があるところだった。

「驚かすな。ユールクス。いきなり空なんてビビるだろ!」

『おや?君に我の名を名乗ったか?』

 あ!そう言えば、アリスの魔導書で知ったんだった。

「悪い。アリスが書き残した書物に記してあったんだ。」

『ああ、アリスか。我も我の思惑があるゆえ、黒のエルフの思惑に乗ってやっているが、あれも困ったものだな。』

 アリスの思惑?最凶のダンジョンマスターってやつか?いや、あれは天津の意志が含まれている事柄だ。
 アリスにはアリスの思惑があったということか。死した後のその先の未来に何を見たのだろう。

『改めて、我の名はユールクスだ。それで、何用かな。』

 おお、そうだった。

「ユールクス。天津との約束を守るときが近づいて来たみたいだからな。力を貸してくれないか?」

『ほぅ。どういうことだ?』

 ユールクスが目を細め、右手を振ると風景が普通の庭園に変わった。俺はこれで一歩を踏み出せる。いや、幻影とわかっていたも空の上に踏み出すことは気分的に足がすくむからな。
 整えられた庭園を進み、ユールクスが用意したテーブルの席に着く。

 本当にユールクスって性が悪いよな。空の幻影にしたり、ティーカップで出されたお茶が怪しい緑色をした液体だった。

「その前にコレハなんだ?」

『ああ、水龍はマッチャと言っていたぞ。』

 抹茶!確かに抹茶の色だが、お茶の木があるのか?そう言えば紅茶も緑茶も同じ木だった。
 はっ!という事は緑茶が作れるってことじゃないか!フェーラプティスに頼めば飲めるってことじゃないか。

 しかし、ティーカップに抹茶を入れられると、怪しい液体にしか見えないな。

「抹茶か。」

 そう言って一口飲む。苦い。だが、懐かしい抹茶の味だ。そして、ユールクスに本題を口にする。

「頼みたいことは、エルフの動向の偵察だ。」

『偵察?』

「ああ、エルトのダンジョンマスターがダンジョンの外に魔物を出して、使役をしていたのもそうだが、魔物に意識を憑依してダンジョンの外に『どういう事だ!』ぃ?」

 ユールクスがテーブルを叩き立ち上がった。その振動で、ティーカップが傾き抹茶が零れてしまった。もったいない。

「え、あの」

 ユールクスの勢いに言いどもってしまう。いや、顔が怖いし睨まないでいただきたい。俺が悪いみたいな勢いで言い寄られても・・・背中から怪しいオーラを出さないでもらいたい。
 アリス!このダンジョンマスターは何なんだ!凄い圧迫感を感じるぞ!

『その話詳しく話せ。』

 おっふ。更に圧迫感が増した。息が出来ないほどだ。俺がこの状態って相当ヤバくないか?空気を肺に!

「マスター。その子、口パクパクしてるけどぉー。ヤバくないですかぁー?」

 聞いたことのない女性の声と共に圧迫感が無くなった。声がした方を見るとユールクスと同じ緑の髪に金の目をしたナーガの女性がいた。

『ああ、すまない。』

 ユールクスが謝ってくれたが、いや、マジで死ぬかと思った。
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