108 / 122
108 『あの子怖いわ』
しおりを挟む
「凄い。凄い。アハハハ。一度魔人に遭遇したことがあったけど、君、彼女より魔力が渦巻いているね。私なんて遭った瞬間からガタガタと震えるしかなかったけど、君なら彼女に勝てるのかな?あ、でも彼がいるから無理か。」
何かよくわからないことを言って、自分で何かを納得したらしいが、魔人って本当に存在しているのか。そんなもの、昔話で聞くぐらいで、子供に言うことをきかすための作り話ぐらいにしか思っていなかった。そんな存在がいるのなら、この世界が滅んでいてもおかしくないような話の内容だからだ。
しかし、余計に興味を持たれてしまったようだ。おかしいな。いや、目の前のマイアという少女に問題があるのか。
「で、教会に行くのか?」
「行くよ。行く。」
マイアはそう言って立ち上がった。そして、何故か両隣のヴィーネとフェーラプティスも立ち上がった。お前たちも付いて来るつもりか!
お布施という名の強奪にいくら払えばいいのだろうか。
そして、中央地区の教会まで来た。ヴィーネもフェーラプティスも付いてきた。付いてくるなと言ってみたが、キアナとアルティーナから見張れと言われたらしい。一体誰を見張っているんだ?俺か?
「尊い神への祈りのための、お布施をお願いします。」
教会の入り口で、来るたびに言われているお願いと言いながら、見下さいたような視線を向けているエルフの前に札束を積んでやると、表情がにこやかになり
「あなた方に神の加護がありますように」
と言われた。本当にエルフは強欲だな。相変わらず祭壇がある前の方には祈りを捧げている人々がいるので、後ろの方に座る。
「マイア、好きなだけ神に祈れ、だが声には出すなよ。」
そう言って俺は天井を見る。これで3度目だが、天井に絵が描かれていることに初めて気がついた。
動植物が端に円状に描かれ、その内側に多種多様な種族、更に内側にエルフと思われる種族。そして中央に白い人物が描かれていた。これが白き神なのだろうか。しかし、白い人形としかわからない絵だった。
ああ、神というモノを描くというのは不敬だという考え方だろうか。
―あ、それは違うよ。―
俺が一人でどうでもいい事を考えていたら、あの神という声が降ってきた。思わずビクリと体が動いてしまった。
俺のどうでもいい独り言に答えなくていい。
―僕の姿をきちんと見ることができる子は殆どいないんだよ―
おい、気にせず話を続けるな。
―隣の子に言っておいて、君には無理だからって―
隣?マイアのことか?何が無理なんだ?神のアイの事か?それとも魔女の事か?
―両方、ナディアが『あの子怖いわ』って言っていたの聞いちゃったから、ナディアに嫌われちゃったら難しいね。じゃ、よろしく―
ナディアって誰だ!おい!
返事がない・・・。
相変わらず言いたいことだけ言って去っていくんだな。で、ナディアって誰だよ。
横をちらっと見ると、両手を組んで祈っている形はとっているが、人殺しでもそうな形相で前の祭壇を睨み付けているマイアがいた。
怖ぇーよ。それはナディアってヤツも怖いって言うよな。
「おい、もう外に出よう。」
「まだ、神様のお声を聞いていない。」
その表情のままこっちを向くな!
「諦めろ。祈って神が答えてくれないのなら、マイアに問題があるってことだ。」
「わ、私は愛されなければならない。」
とても悔しそうな表情をしているが、神もドン引きだろ。あんな表情で祈られても。
はぁ。それにしても、愛されなければならないか、まるで、神と言うものに魔女と言うものに囚われているようだな。
「また、増えてる。」
後ろからライラの声が聞こえてきた。何が増えているんだ?
「ライラ。久しぶりだな。」
振り返ってライラを見るが・・・半年ほど見ない間にまた背が伸びたようだ。俺は全く背が伸びなかったというのに。
俺の膝の上に何かが乗ってきた。見てみると黒い猫だった。ああ、魔石から作った猫・・・なんか表現がおかしいな。
撫でてみると本当に生きているように温かい。不思議なモノだな。
「エン。その子誰?」
ライラがマイアを見て言ってきた。そのマイアは黒い猫をガン見している。
「マイアだ。神の声を聞きたいからと言うから連れてきたんだが、無理だった。」
ん?そう言えば、光の神はどうなんだろうな。確か、ルーチェっていう名だったよな。
「ライラ。お願いなんだが、マイアにライラのおまじないをしてくれないか?嫌なら別にいいんだが」
「エンのお願いなら、いいけど。何で、ルノーが睨まれているの?」
ルノー?ああ、黒猫の名前か。確かに睨んでいるように見えるな。俺はルノーと呼ばれた黒猫を掴んでライラに渡す。
多分、おかしな生き物だとか思われているんだろう。作った俺にもわからんから、質問は受け付けん。
何かよくわからないことを言って、自分で何かを納得したらしいが、魔人って本当に存在しているのか。そんなもの、昔話で聞くぐらいで、子供に言うことをきかすための作り話ぐらいにしか思っていなかった。そんな存在がいるのなら、この世界が滅んでいてもおかしくないような話の内容だからだ。
しかし、余計に興味を持たれてしまったようだ。おかしいな。いや、目の前のマイアという少女に問題があるのか。
「で、教会に行くのか?」
「行くよ。行く。」
マイアはそう言って立ち上がった。そして、何故か両隣のヴィーネとフェーラプティスも立ち上がった。お前たちも付いて来るつもりか!
お布施という名の強奪にいくら払えばいいのだろうか。
そして、中央地区の教会まで来た。ヴィーネもフェーラプティスも付いてきた。付いてくるなと言ってみたが、キアナとアルティーナから見張れと言われたらしい。一体誰を見張っているんだ?俺か?
「尊い神への祈りのための、お布施をお願いします。」
教会の入り口で、来るたびに言われているお願いと言いながら、見下さいたような視線を向けているエルフの前に札束を積んでやると、表情がにこやかになり
「あなた方に神の加護がありますように」
と言われた。本当にエルフは強欲だな。相変わらず祭壇がある前の方には祈りを捧げている人々がいるので、後ろの方に座る。
「マイア、好きなだけ神に祈れ、だが声には出すなよ。」
そう言って俺は天井を見る。これで3度目だが、天井に絵が描かれていることに初めて気がついた。
動植物が端に円状に描かれ、その内側に多種多様な種族、更に内側にエルフと思われる種族。そして中央に白い人物が描かれていた。これが白き神なのだろうか。しかし、白い人形としかわからない絵だった。
ああ、神というモノを描くというのは不敬だという考え方だろうか。
―あ、それは違うよ。―
俺が一人でどうでもいい事を考えていたら、あの神という声が降ってきた。思わずビクリと体が動いてしまった。
俺のどうでもいい独り言に答えなくていい。
―僕の姿をきちんと見ることができる子は殆どいないんだよ―
おい、気にせず話を続けるな。
―隣の子に言っておいて、君には無理だからって―
隣?マイアのことか?何が無理なんだ?神のアイの事か?それとも魔女の事か?
―両方、ナディアが『あの子怖いわ』って言っていたの聞いちゃったから、ナディアに嫌われちゃったら難しいね。じゃ、よろしく―
ナディアって誰だ!おい!
返事がない・・・。
相変わらず言いたいことだけ言って去っていくんだな。で、ナディアって誰だよ。
横をちらっと見ると、両手を組んで祈っている形はとっているが、人殺しでもそうな形相で前の祭壇を睨み付けているマイアがいた。
怖ぇーよ。それはナディアってヤツも怖いって言うよな。
「おい、もう外に出よう。」
「まだ、神様のお声を聞いていない。」
その表情のままこっちを向くな!
「諦めろ。祈って神が答えてくれないのなら、マイアに問題があるってことだ。」
「わ、私は愛されなければならない。」
とても悔しそうな表情をしているが、神もドン引きだろ。あんな表情で祈られても。
はぁ。それにしても、愛されなければならないか、まるで、神と言うものに魔女と言うものに囚われているようだな。
「また、増えてる。」
後ろからライラの声が聞こえてきた。何が増えているんだ?
「ライラ。久しぶりだな。」
振り返ってライラを見るが・・・半年ほど見ない間にまた背が伸びたようだ。俺は全く背が伸びなかったというのに。
俺の膝の上に何かが乗ってきた。見てみると黒い猫だった。ああ、魔石から作った猫・・・なんか表現がおかしいな。
撫でてみると本当に生きているように温かい。不思議なモノだな。
「エン。その子誰?」
ライラがマイアを見て言ってきた。そのマイアは黒い猫をガン見している。
「マイアだ。神の声を聞きたいからと言うから連れてきたんだが、無理だった。」
ん?そう言えば、光の神はどうなんだろうな。確か、ルーチェっていう名だったよな。
「ライラ。お願いなんだが、マイアにライラのおまじないをしてくれないか?嫌なら別にいいんだが」
「エンのお願いなら、いいけど。何で、ルノーが睨まれているの?」
ルノー?ああ、黒猫の名前か。確かに睨んでいるように見えるな。俺はルノーと呼ばれた黒猫を掴んでライラに渡す。
多分、おかしな生き物だとか思われているんだろう。作った俺にもわからんから、質問は受け付けん。
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
アンチエイジャー「この世界、人材不足にて!元勇者様、禁忌を破って若返るご様子」
荒雲ニンザ
ファンタジー
ガチなハイファンタジーだよ!
トロピカルでのんびりとした時間が過ぎてゆく南の最果て、余生を過ごすのにピッタリなド田舎島。
丘の上の教会にある孤児院に、アメリアという女の子がおりました。
彼女は、100年前にこの世界を救った勇者4人のおとぎ話が大好き!
彼女には、育ててくれた優しい老神父様と、同じく身寄りのないきょうだいたちがおりました。
それと、教会に手伝いにくる、オシャレでキュートなおばあちゃん。
あと、やたらと自分に護身術を教えたがる、町に住む偏屈なおじいちゃん。
ある日、そののんびりとした島に、勇者4人に倒されたはずの魔王が復活してしまったかもしれない……なんて話が舞い込んで、お年寄り連中が大騒ぎ。
アメリア「どうしてみんなで大騒ぎしているの?」
100年前に魔物討伐が終わってしまった世界は平和な世界。
100年後の今、この平和な世界には、魔王と戦えるだけの人材がいなかったのです。
そんな話を長編でやってます。
陽気で楽しい話にしてあるので、明るいケルト音楽でも聞きながら読んでね!
食いつなぎ探索者〜隠れてた【捕食】スキルが悪さして気付いたらエロスキルを獲得していたけど、純愛主義主の俺は抗います。
四季 訪
ファンタジー
【第一章完結】十年前に突如として現れたダンジョン。
そしてそれを生業とする探索者。
しかしダンジョンの魔物も探索者もギルドも全てがろくでもない!
失職を機に探索者へと転職した主人公、本堂幸隆がそんな気に食わない奴らをぶん殴って分からせる!
こいつ新人の癖にやたらと強いぞ!?
美人な相棒、男装麗人、オタクに優しいギャルにロリっ娘に○○っ娘!?
色々とでたらめな幸隆が、勇名も悪名も掻き立てて、悪意蔓延るダンジョンへと殴り込む!
え?食ったものが悪すぎて生えてきたのがエロスキル!?
純愛主義を掲げる幸隆は自分のエロスキルに抗いながら仲間と共にダンジョン深層を目指していく!
本堂 幸隆26歳。
純愛主義を引っ提げて渡る世間を鬼と行く。
エロスキルは1章後半になります。
日間ランキング掲載
週刊ランキング掲載
なろう、カクヨムにも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる