上 下
106 / 122

106 俺の目がおかしい?

しおりを挟む
 戻って来たことを報告するために、ジェームズの執務室に向かう。何故かソルも一緒に付いてきた。いつもならフィーディス商会に着いたら役目は終わったとばかりに去っていくのに今回はどうしたんだろうな。

 執務室の扉をノックすると直ぐに返事があり、入るように言われた。そして、ジェームズが俺の顔を見た瞬間

「今度は何があったんだ?」

 と聞いてきた。何故、毎回毎回、何かあると思っているんだ!いや、あるんだけどな。

「ジェームズ。流石エンだ。転移門を起動できたぞ。」

 ソルが俺の頭をゴリゴリ撫でながら言ってきた。ソル、もう少し優しくできないか?首がもげそうだ。

「転移門を?使うほどの事があったのか?」

「大魔女の弟子の弟子って言うやつに目を付けられたらしい。俺はその場にいなかったから詳しくはわからないがな。」

「はぁ。ソル、一体何の為に付いて行っているんだ。エンの御守おもりをするためじゃないのか?」

 おい、ジェームズ。俺の御守おもりって何だ!そこまで、俺は子供じゃないぞ。

「しかし、大魔女の系統か。エン、詳しく何があったか話してみろ。」

 ジェームズに聞かれたから、あの頭のおかしい少女の事を話た。すると、ジェームズは眉間を押え、ため息を吐き出していた。

「あ、まぁ。思っていた事を違うが、ある意味、危険だな。転移門を使えば足取りもつかめないだろうから、間違いではないが、エンだからな。何があるかわからんな。」

 ジェームズ、俺だからって酷くないか?あの少女も流石にミュルムからミレーテまで来ることは出来ないだろう。

 できないはずだ。それなのに俺の目の前に金髪のツインテールの少女がいる。
 おかしい。俺の目がおかしいのか?

 俺はジェームズから5日間の休みをもらったので、休みの初日からやることもなくフィーディス商会の中庭でくつろいでいた。アイリスとフェーラプティスが仲良くハーブを摘んでいるのを遠目で眺めていたら、ヴィーネの突撃を受け、アイスを脅迫の様にねだられ、ガリガリな棒アイスをヴィーネの口に突っ込んでいるときに上から影が降ってきた。
 顔を上げれば不機嫌そうに頬を膨らませ、赤い目は俺を逃さないとばかりに睨みつけ、金髪のツインテールを風になびかせながら、空から降りてくる見覚えのある少女がいた。

「いつの間にか居なくなってるし、なんでこんな所にいるの!」

 少女はそんな事を言ってきたが、普通、怪しい人物から逃げるだろ。それに俺は戻って来ただけだし。

「エンに何の用なの!いきなり空から来るなんて失礼なの!」

 ヴィーネがガリガリなアイスを手に持ちながらまともな事を言っているが、お前も空から突撃することあるよな。

「精霊がいる。凄いね。流石、私が目を付けた事だけはあるね。やっぱり、君に付きまとう事にするよ。」

「するな。」

 即座に否定しておく。しかし、なんでここに俺がいることがわかったんだ?

「なぜ、俺がここにいることがわかった。ミュルムとミレーテは大分距離が離れているし、ミレーテもかなり大きな街だ。たどり着けるはずがない。」

「ああ、ここは首都なの?私からしたらそんなの簡単。君に魔力で印を付けておいたから、転移で一直線!」

 あ?そんな印をいつ付けられた?もしかして手を握られたときか。それを目印にして転移をする?そんなこと初めて聞いたぞ。
 いや、理に適っていると言えばそうだな。人に自分の魔力を目印としてつけていれば、行ったところの無いところにも転移ができるということか。
 ただ、その人物がどういう状況かわからないのが難点だが、目の前の少女のように自分勝手に行動をするなら、便利かもしれない。

「はぁ。ここに来れた理由はわかったが、俺はお前の要望を叶えることはない。」

「いいよ。私は、君に付き纏うと決めたから」

 それは、本当にやめてくれ。

「エンに付き纏っていいのは、愛人のヴィーネだけなの!」

 おい、ヴィーネ!意味がわからないことを堂々と言うな。

「へー。精霊が愛人なのね。やっぱ君、面白いね。」

「なぜ、そこを本気で捉えるんだ。そんなわけないだろう!」

 ここはきちんと否定しておかなければならな・・・後ろから誰かに捕獲されてしまった。誰だ!上を見上げると白い髪と白い三角の耳が見えた。アルティーナか。いつの間に俺の後ろにいたんだ。

「私の彼氏に付き纏うって、どういうこと?エン、また女の子を拾ってきたの?」

「アルティーナの彼氏でもないし、アレは拾っていない。勝手にここに来たんだ。」

「キアナさんの恋人に手を出そうってことね!」

「キアナ!違うと何度も言っているだろ!」

 キアナ、お前もいつの間にいたんだ。

「お前ら、仕事はどうした。」

「アイリスが『エンがまた女の子を拾ってきたみたいです』と教えてくれたのよ。」
「フェーラプティスが『エンさんの新しい恋人が来たみたいですよ』と教えてきたけど?」

 アイリスとフェーラプティスが!周りを見渡すと物陰に隠れた人、人、人。この暇人どもが!仕事をしろ!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。 それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

アンチエイジャー「この世界、人材不足にて!元勇者様、禁忌を破って若返るご様子」

荒雲ニンザ
ファンタジー
ガチなハイファンタジーだよ! トロピカルでのんびりとした時間が過ぎてゆく南の最果て、余生を過ごすのにピッタリなド田舎島。 丘の上の教会にある孤児院に、アメリアという女の子がおりました。 彼女は、100年前にこの世界を救った勇者4人のおとぎ話が大好き! 彼女には、育ててくれた優しい老神父様と、同じく身寄りのないきょうだいたちがおりました。 それと、教会に手伝いにくる、オシャレでキュートなおばあちゃん。 あと、やたらと自分に護身術を教えたがる、町に住む偏屈なおじいちゃん。 ある日、そののんびりとした島に、勇者4人に倒されたはずの魔王が復活してしまったかもしれない……なんて話が舞い込んで、お年寄り連中が大騒ぎ。 アメリア「どうしてみんなで大騒ぎしているの?」 100年前に魔物討伐が終わってしまった世界は平和な世界。 100年後の今、この平和な世界には、魔王と戦えるだけの人材がいなかったのです。 そんな話を長編でやってます。 陽気で楽しい話にしてあるので、明るいケルト音楽でも聞きながら読んでね!

食いつなぎ探索者〜隠れてた【捕食】スキルが悪さして気付いたらエロスキルを獲得していたけど、純愛主義主の俺は抗います。

四季 訪
ファンタジー
【第一章完結】十年前に突如として現れたダンジョン。 そしてそれを生業とする探索者。 しかしダンジョンの魔物も探索者もギルドも全てがろくでもない! 失職を機に探索者へと転職した主人公、本堂幸隆がそんな気に食わない奴らをぶん殴って分からせる! こいつ新人の癖にやたらと強いぞ!? 美人な相棒、男装麗人、オタクに優しいギャルにロリっ娘に○○っ娘!? 色々とでたらめな幸隆が、勇名も悪名も掻き立てて、悪意蔓延るダンジョンへと殴り込む! え?食ったものが悪すぎて生えてきたのがエロスキル!? 純愛主義を掲げる幸隆は自分のエロスキルに抗いながら仲間と共にダンジョン深層を目指していく! 本堂 幸隆26歳。 純愛主義を引っ提げて渡る世間を鬼と行く。 エロスキルは1章後半になります。 日間ランキング掲載 週刊ランキング掲載 なろう、カクヨムにも掲載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら前世チートで無双する

ゆる弥
ファンタジー
殺し屋をしていた男が人を殺すのに躊躇いを覚えるようになった。 だが、組織はその男のことを手放さなかった。 ある日その男は死ぬ事を選んだのだった。 ビルから飛び降りた。 そこからこの話は始まる。 気付けばテンプレの白い空間。 「お前に罪を償う機会を与えよう」 「何をすればいい?」 「私の指定する世界に転生してくれるだけでいい。それで償いになる。好きに生きよ」 「それで償いになるのならば」 異世界で二十歳の体で生まれ変わった。 突如悲鳴が聞こえた。 好きに生きれるのか? この世界?

処理中です...