上 下
98 / 122

98 俺は分かっていなかった

しおりを挟む
 3日間でやれる事はやった。いや、俺は料理人じゃないし、出来ることは限られている。

 基本的なことはツァレに頼んだ。子供達に食べれるようにと気を使った食事を作っているツァレは基本的なことは問題なかった。
 後は、サッテリーナさんに頑張ってもらった。スープの出汁というべきものをいくつか種類を作ることで、スープの種類を増やすことにした。それに中に入れるものを工夫すればなんとかなるだろうと思っていたが、ここで活躍したのが、あのキアナだ。

 俺の出したご飯をハイエナのように付きまとい、食事にありついたキアナは一度食べたものの味を覚えて、それを再現したのだ。
 流石に香辛料がないのでカレーまでは無理だったが、シチューもボルシチもポタージュスープも作り上げたのだ。料理スキルってスゲーよな。


 そんなこんなで、俺は再びゼルトとソルと共に行商人として旅立つのだが、ジェームズ、なんだ直ぐに戻って来るのだろうって毎回毎回そんなに問題は起こらねーって。なぜ目を反らす。

 キアナ、料理は任せろ?お前だけが作れても仕方がないから、きちんとレシピ化しとけよ。

 アルティーナなんだ?モジモジして・・・いってらっしゃいのちゅー?意味がわからん。

 ソル。どこに笑う要素があるんだ?さっさと行くぞ。

 そして、騎獣に乗り首都ミレーテを後にした。

「なぁ、ゼルト。俺は普通に商売というものをしてみたい。」

 騎獣に乗って北に向かいながら、ゼルトに俺の要望を言った。

「エン。言っておくが、俺は普通に行商人が巡る町に行こうとしただけだぞ。」

「それなんだが、中核都市で露店は出せないのか?」

「それは出店することはできるが、商業ギルドがある街じゃ、ギルドの許可書と場所代が必要になってくる。ぽっと出の商人が場所代と許可書代を稼げるかと言えば稼げないぞ。」

「ゼルト、今の俺は稼ぐ必要はなかったよな。どういう商品が需要があるか調べればいいんだよな。」

 俺は今回の行商で儲けることばかり考えていた。この時期に売れそうな商品を選び、フィーディス商会がない町にいって2回とも失敗した。いや、失敗でもないが、本来の目的を何も遂げることができなかった。

 小さな町にはその町の事情がある。魔物に襲われやすかったり、安全に漁をするために生贄を出していた。
 小さな町だとそういう事が顕著に現れるのだろう。この世界には多種多様な種族が存在する。その種族によって必要なものが違ってくる。

 しかし、中核都市となれば、多種多様な種族が集まって暮らしている。そこで、種族的に何が必要なのか統計がとれるのではないのだろうか。
 今回使用した魔魚が一部の種族しか食べられていないように、種族によって求めるものが違うはずだ。

 問題なのが、行商人として求められるということだ。日用品などは街にある各店で揃えればいいだけなんだから

「エンがそれで良いっていうならそうしてみるか。だが、大きな街と小さな町とでは需要が違うぞ。」

「それは分かっている。ものは試しだ。」




 俺は分かっていなかった。全くわかっていなかった。
 北のトロスという中核都市にたどり着き、ゼルトに商業ギルドに行ってもらい、場所代と許可書代を払ってもらって、露天を出すことになった。
 ゼルトに商業ギルドに行ってもらったのは、俺じゃ絶対に許可をもらえないからな。

 しかし、なんか見覚えのある街だなと思っていた。まぁ。中核都市となると大きな外壁が魔物よけとして存在しているから、同じ様な街がいくつもあるのだろうと思っていたのだ。

「ねぇ。あの子、ルギア様の子供かしら?」
「可愛いわね。」
「何を売っているのかしら?」
「たくさん買ってあげようかしら?」

 俺の出した露天は多くの女性に囲まれていた。俺は甘く見ていた英雄と言われたルギアの知名度と黒豹獣人としての俺の姿。これ、統計を取るというよりも、ルギアのおかげで売れているよな。
 今思い出したが、ここルギアがギルドマスターをしていた中核都市じゃないのか?
 ゼルト!なぜここを選択した!

 俺が春用にと用意した布地が飛ぶように売れた。後は、香り付けされた紅茶だ。
 これはあちらの商品ではなく。アイリスとサッテリーナの共同作業で出来上がったものだ。元々のこちらの紅茶に香り高い春の花をアイリスに育ててもらい、サッテリーナの時間経過で乾燥させた物を混ぜただけの紅茶だ。だからとても安上がりに出来上がった。

 サッテリーナに感謝していると、『腐敗するだけのスキルをこのように使っていただけて、私こそ感謝します』と泣きながら言われてしまった。腐敗って一体今まで何に使っていたんだ?

そして、トロスでの行商は問題なく終わったの・・・か?

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したらドラゴンに拾われた

hiro
ファンタジー
トラックに轢かれ、気がついたら白い空間にいた優斗。そこで美しい声を聞いたと思ったら再び意識を失う。次に目が覚めると、目の前に恐ろしいほどに顔の整った男がいた。そして自分は赤ん坊になっているようだ! これは前世の記憶を持ったまま異世界に転生した男の子が、前世では得られなかった愛情を浴びるほど注がれながら成長していく物語。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128
ファンタジー
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王国でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を叶えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、学生時代に築いた唯一のつながり、王国第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、内容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の励みにしたいのでお気に入り登録や感想もお願いします! 話ごとのちょっとしたものでも構いませんので!

処理中です...