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80 失敗してしまった
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3日掛けて商品の準備をした。フィーディス商会からの商品は食料品と衣服を中心にし、祝い事が多くなる春によく売れる商品に決めた。
俺が個人的に用意した品物もそれに合わせた物とし、衣服の装飾に使う刺繍糸に春らしい明るい色の布に酒と紅茶にしてみた。
そして、出発当日。俺は今、黒猫のリュックサックをゼルトから差し出されている。
「おっさん、俺は普通の拡張収納のリュックいれたはずなのに、なぜ毛皮の黒猫のリュックに変わっているんだ!」
「フェーラプティスは黒豹だと言っていたぞ。」
「黒猫だろうが黒豹だろうが一緒だ!俺のリュックは何処に消えた!」
「ジェームズに回収されたぞ。」
「ジェームズ!」
俺を送りに店の外に出ていたジェームズに向かって言う。
「なんだ?」
ニヤニヤしながら、俺を見ているジェームズに手を差し出す。
「俺のリュックを返せ。」
「フェーラプティスが丹精込めて作ったものだぞ。」
「いや、丹精込めようが黒猫である必要がないだろ。」
「わかってないなぁ。エン。ただのガキが商売して上手くいくはず無いだろう?可愛らしい黒豹獣人で行ってこい。」
グフッ。膝から崩れ落ちる。14歳になったのに!なったのに!全然背が伸びない俺が悪いっていうのか!
「エン。このリュックにも付けておくね。」
アルティーナ、また白猫のぬいぐるみを付けないでくれ。どちらもぬいぐるみに見えるだろ。
「エン。私も!」
キアナ、お前も付けなくていい。
「ほら、エン行くぞ。」
後ろ向きに体が持ち上げられたが、ソルの声がした気がした。持ち上げた人物を仰ぎ見れば、金色の髪に金色の尻尾、金色の耳が見えた。
なぜ、ソルがいるんだ?
そのまま騎獣に乗せられ飛び立ってしまった。まて、俺のリュックはどこにいった!
「で、まず何処に行くのかと、ソルが居る理由が聞きたい。」
「西のキノールという小さな町だ。」
ゼルトがそう教えてくれた。
「キノール?聞いたことないな。支店が無い町か。」
「そうだ。物を売るならそういうところがいい。麻とか綿が特産の町だ。」
麻と綿か。
「採取だけか?加工はしていないのか?」
「綿または布にして染め物もしている。それとソルは護衛だ。」
「ゼルトがいればソルは必要ないだろ?護衛はいるのか?」
「「いる。」」
二人が声を揃えて答えた。
「なぜだ。ゼルトが俺の付き添いをしてくれれば、俺がガキでも問題ないはずだ。」
「違うぞ。エン。俺一人じゃエンに対処できない。」
ゼルトがジェームズと同じ言葉を言った。俺に対処できないってなんだ!
「ジェームズにも言われたが意味がわからない。」
「普通はサーベルマンモスに遭遇しないし、ホワイトウルフの大群とホワイトフェニックスにも遭遇しない。俺は商売のことは教えられるが、大物の魔物は無理だ。」
あれか、俺の運の振り切れ状態に付き合ってられないと、それでソルが付いてきたと。はぁ、運なんて普通でいいんだよ。
4半刻後、キノールという町に着いた。町の周りは何も作付けされていない畑が広がっていた。まだ、雪が解けたばかりだからなのだろう。
しかし、血なまぐさい。その割には町は静かだ。
「ソル。」
俺はソルを見る。俺よりも狼獣人の方が鼻がきくはずだ。
「ああ、腹を空かせた魔物に襲われたのだろう。」
やはり、襲われた。今は襲われていないということだ。
「エン。傷薬は持ってきているか?大量に必要になってくると思うのだが。」
「薬は一通り持ってきたが。大量にはないぞ。」
「そうだよな。」
そう言って、ソルは町の入り口に向かっていった。こういうことは想定していなかった。しかし、考えればわかることだった。こんな小さな町には魔物から人々を守る強固な石の外壁があるわけじゃない。簡易的な木の柵であったり木の板を立て掛けているだけだったりするだけだ。
失敗した。ゼルトに相談しながら商品を選んだが、売れる物を振り分けることしか頭に無かった。
俺の横にいるゼルトに向かって
「はぁ。おっさん、しょっぱなから失敗してしまった。一番近いのは本店か?人手も薬も足りない。応援を呼んでくる。」
「エン。コレは誰にも予想出来ない事だ。まず、町の状況を確認してから、俺が本店に行ってくる。」
そう言ってゼルトも町の入り口に向かって行った。ゼルトに付いて俺が見た町は何か大きなモノに襲われたのだろうしか分からない状況だった。
石で作られた建物が壊されていたり、木で作られた倉庫らしき残骸が散らばっていたり、道や建物の外壁に血が飛び散っていたりしているのが見られた。
「酷いな。冬眠から目覚めたスノーベアーか。」
ゼルトが町を見渡しながらポソリとつぶやいた。
俺が個人的に用意した品物もそれに合わせた物とし、衣服の装飾に使う刺繍糸に春らしい明るい色の布に酒と紅茶にしてみた。
そして、出発当日。俺は今、黒猫のリュックサックをゼルトから差し出されている。
「おっさん、俺は普通の拡張収納のリュックいれたはずなのに、なぜ毛皮の黒猫のリュックに変わっているんだ!」
「フェーラプティスは黒豹だと言っていたぞ。」
「黒猫だろうが黒豹だろうが一緒だ!俺のリュックは何処に消えた!」
「ジェームズに回収されたぞ。」
「ジェームズ!」
俺を送りに店の外に出ていたジェームズに向かって言う。
「なんだ?」
ニヤニヤしながら、俺を見ているジェームズに手を差し出す。
「俺のリュックを返せ。」
「フェーラプティスが丹精込めて作ったものだぞ。」
「いや、丹精込めようが黒猫である必要がないだろ。」
「わかってないなぁ。エン。ただのガキが商売して上手くいくはず無いだろう?可愛らしい黒豹獣人で行ってこい。」
グフッ。膝から崩れ落ちる。14歳になったのに!なったのに!全然背が伸びない俺が悪いっていうのか!
「エン。このリュックにも付けておくね。」
アルティーナ、また白猫のぬいぐるみを付けないでくれ。どちらもぬいぐるみに見えるだろ。
「エン。私も!」
キアナ、お前も付けなくていい。
「ほら、エン行くぞ。」
後ろ向きに体が持ち上げられたが、ソルの声がした気がした。持ち上げた人物を仰ぎ見れば、金色の髪に金色の尻尾、金色の耳が見えた。
なぜ、ソルがいるんだ?
そのまま騎獣に乗せられ飛び立ってしまった。まて、俺のリュックはどこにいった!
「で、まず何処に行くのかと、ソルが居る理由が聞きたい。」
「西のキノールという小さな町だ。」
ゼルトがそう教えてくれた。
「キノール?聞いたことないな。支店が無い町か。」
「そうだ。物を売るならそういうところがいい。麻とか綿が特産の町だ。」
麻と綿か。
「採取だけか?加工はしていないのか?」
「綿または布にして染め物もしている。それとソルは護衛だ。」
「ゼルトがいればソルは必要ないだろ?護衛はいるのか?」
「「いる。」」
二人が声を揃えて答えた。
「なぜだ。ゼルトが俺の付き添いをしてくれれば、俺がガキでも問題ないはずだ。」
「違うぞ。エン。俺一人じゃエンに対処できない。」
ゼルトがジェームズと同じ言葉を言った。俺に対処できないってなんだ!
「ジェームズにも言われたが意味がわからない。」
「普通はサーベルマンモスに遭遇しないし、ホワイトウルフの大群とホワイトフェニックスにも遭遇しない。俺は商売のことは教えられるが、大物の魔物は無理だ。」
あれか、俺の運の振り切れ状態に付き合ってられないと、それでソルが付いてきたと。はぁ、運なんて普通でいいんだよ。
4半刻後、キノールという町に着いた。町の周りは何も作付けされていない畑が広がっていた。まだ、雪が解けたばかりだからなのだろう。
しかし、血なまぐさい。その割には町は静かだ。
「ソル。」
俺はソルを見る。俺よりも狼獣人の方が鼻がきくはずだ。
「ああ、腹を空かせた魔物に襲われたのだろう。」
やはり、襲われた。今は襲われていないということだ。
「エン。傷薬は持ってきているか?大量に必要になってくると思うのだが。」
「薬は一通り持ってきたが。大量にはないぞ。」
「そうだよな。」
そう言って、ソルは町の入り口に向かっていった。こういうことは想定していなかった。しかし、考えればわかることだった。こんな小さな町には魔物から人々を守る強固な石の外壁があるわけじゃない。簡易的な木の柵であったり木の板を立て掛けているだけだったりするだけだ。
失敗した。ゼルトに相談しながら商品を選んだが、売れる物を振り分けることしか頭に無かった。
俺の横にいるゼルトに向かって
「はぁ。おっさん、しょっぱなから失敗してしまった。一番近いのは本店か?人手も薬も足りない。応援を呼んでくる。」
「エン。コレは誰にも予想出来ない事だ。まず、町の状況を確認してから、俺が本店に行ってくる。」
そう言ってゼルトも町の入り口に向かって行った。ゼルトに付いて俺が見た町は何か大きなモノに襲われたのだろうしか分からない状況だった。
石で作られた建物が壊されていたり、木で作られた倉庫らしき残骸が散らばっていたり、道や建物の外壁に血が飛び散っていたりしているのが見られた。
「酷いな。冬眠から目覚めたスノーベアーか。」
ゼルトが町を見渡しながらポソリとつぶやいた。
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