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57 絶対に認めたくない
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翌日の朝、日帰りの予定でゼルトとソルと共に首都を立った。
あれからどうしたって?土産をくれるまで付き纏うと言われたため、キアナにはチョコレートをアルティーナには猫用のチキンジャーキーを渡しておいた。
残り2店舗の内、1店舗は通常通りに事が進んだが、最後の1店舗がエルフ共の恐喝にあった後だった。前回同様、食べ物だけがごっそりと奪われていた。
ゼルトはコレを見越していたのか、余分目に商品を用意していてくれていたので、事なきを得た。
しかし、エルフからの恐喝が2店舗だけとは限らないな。
「オッサン。東側だけでも、もう一度廻った方がいいかもしれない。」
「ああ、それは俺も思っていたが、そうなればエンは本店に留守番だ。」
「は?なんでだ?」
「規則だ。6日働いたら1日休み。」
「そんなのオッサンも同じだろ?」
「もともとは20日の業務だったからな。楽勝だ。あと、東側の担当者と相談だ。」
そうして、俺の南側の運搬業務は終えた。その4日後、俺はゼルトに感謝された。東側の運搬業務担当者と手分けして東側の支店を回っていたところ、あちこちで荷馬車が襲撃された残骸が残っていたそうだ。それも御者を殺して商品を奪って行ったらしい。まるで、盗賊じゃないか。
エンが騎獣と荷袋を活用しようと言ってなかったら、あれは自分だったかもしれないと言われた。
エルフ族とは一体なんだ?
「エン。エンのおかげでフィーディス商会の名誉が守られたと言っていい。」
ジェームズそれは大袈裟過ぎないだろうか。俺はゼルトのオッサンから感謝された次の日にジェームズの執務室に呼ばれた。
「今回、東側に店舗がある各商会が全滅といっていい程、エルフ族から王への献上として食料を要求された。荷馬車を襲撃されたところも少なくない。これでは東側に住む住人達の食料の確保が出来なくなってしまうところだったが、フィーディス商会だけが食料を確保する事が出来た。これはフィーディス商会にとって大事な事だった。ありがとう。」
「俺は便利な物があるのに使わないのは勿体ないと思っただけだ。ただの口の悪い餓鬼の意見を採用したジェームズの方が凄いんだよ。」
「くくく。そうやって自分では無くその周りの功績だと言うところも・・・なぁ。エン。行商人になるって言っていたが、ここでずっと働かないか?」
「なんだ?いきなり。」
「前から思っていた。」
ジェームズは俺を真っ直ぐ見つめる。しかし、それは俺ではない誰かを見ているようだ。
「ジェームズ。俺は天津ではない。エンだ。ただの孤児のエンだ。グラシアールじゃない。」
「エン、グラシアールはルギアの氏だ。」
「おっふ。」
え?エン・グラシアールってなっていたけど?そこも認めたくないけど?
「ちょっと待て、天津とルギアは・・・。」
「恋人だったが籍は入れていないだけで実質夫婦だったな。今までの話の内容から分かっていたと思っていたが?」
俺は床に項垂れた。ステータスなんて見なければよかった。ルギアと血縁関係があるなんて、絶対に認めたくない!あんな毎回
「エン。美味いもの食わせろ。」
しか言わない食い意地の張った黒豹獣人なんて!
「エンはどうしたんだ?床に四つん這いになって。」
くっ。そんな話をしているからルギアの幻聴まで聞こえるじゃないか。
「この前、初めて自分のステータスを見てな。どうやら種族が龍人族で名前がエン・グラシアールだったらしい。」
「お、マジか。」
俺の体が浮き上がり、ルギアに脇下で抱えられ、足がぷらぷらしている状態にされた。
「いつ籍を入れたんだ?」
「なぜ、俺に聞く。ステータスを見るまで知らなかった俺が知っていると思うのか?てっきりグラシアールは天津の名だと思っていたのに、食い意地の張った黒豹獣人と血縁関係があるとは認めたくない。」
「ん?じゃあ、アマツが何かしたのか?良し、戸籍確認しに行くか。」
「行く意味が分からん。」
「親がいる子供は学舎に通えるぞ。アマツが勉強は大事と言って作ったところだ。」
あれか?鶴の一声でまた出来たものか?
「ジェームズ。俺が学舎に通う意味あるか?」
俺ははっきり言って今更勉強する意味はないと思っている。
「エンだとあまり意味が無いかもしれんが、友達を作るにはいいかもしれんぞ。」
「できると思うか?」
「「・・・。」」
二人して無言だった。ジェームズ、目まで反らさなくていいと思うぞ。
「ああ、あと俺の血縁者だと転移門が使えるぞ。」
「なんだ?転移門って。」
「エルフ供が世界中のあちこちに作った転移ができる門だ。このギラン共和国内の転移門だったら証を見せれば使えるぞ。」
「証?何の証だ?」
「豹族の長の一族の証だ。」
「豹族の長?誰が?」
「俺が。」
「・・・。」
ない。それだけは絶対にない。一族の長がこんな食い意地があり、書類整理がまともに出来ない男が一族の長を名乗っていいはずがない!
あれからどうしたって?土産をくれるまで付き纏うと言われたため、キアナにはチョコレートをアルティーナには猫用のチキンジャーキーを渡しておいた。
残り2店舗の内、1店舗は通常通りに事が進んだが、最後の1店舗がエルフ共の恐喝にあった後だった。前回同様、食べ物だけがごっそりと奪われていた。
ゼルトはコレを見越していたのか、余分目に商品を用意していてくれていたので、事なきを得た。
しかし、エルフからの恐喝が2店舗だけとは限らないな。
「オッサン。東側だけでも、もう一度廻った方がいいかもしれない。」
「ああ、それは俺も思っていたが、そうなればエンは本店に留守番だ。」
「は?なんでだ?」
「規則だ。6日働いたら1日休み。」
「そんなのオッサンも同じだろ?」
「もともとは20日の業務だったからな。楽勝だ。あと、東側の担当者と相談だ。」
そうして、俺の南側の運搬業務は終えた。その4日後、俺はゼルトに感謝された。東側の運搬業務担当者と手分けして東側の支店を回っていたところ、あちこちで荷馬車が襲撃された残骸が残っていたそうだ。それも御者を殺して商品を奪って行ったらしい。まるで、盗賊じゃないか。
エンが騎獣と荷袋を活用しようと言ってなかったら、あれは自分だったかもしれないと言われた。
エルフ族とは一体なんだ?
「エン。エンのおかげでフィーディス商会の名誉が守られたと言っていい。」
ジェームズそれは大袈裟過ぎないだろうか。俺はゼルトのオッサンから感謝された次の日にジェームズの執務室に呼ばれた。
「今回、東側に店舗がある各商会が全滅といっていい程、エルフ族から王への献上として食料を要求された。荷馬車を襲撃されたところも少なくない。これでは東側に住む住人達の食料の確保が出来なくなってしまうところだったが、フィーディス商会だけが食料を確保する事が出来た。これはフィーディス商会にとって大事な事だった。ありがとう。」
「俺は便利な物があるのに使わないのは勿体ないと思っただけだ。ただの口の悪い餓鬼の意見を採用したジェームズの方が凄いんだよ。」
「くくく。そうやって自分では無くその周りの功績だと言うところも・・・なぁ。エン。行商人になるって言っていたが、ここでずっと働かないか?」
「なんだ?いきなり。」
「前から思っていた。」
ジェームズは俺を真っ直ぐ見つめる。しかし、それは俺ではない誰かを見ているようだ。
「ジェームズ。俺は天津ではない。エンだ。ただの孤児のエンだ。グラシアールじゃない。」
「エン、グラシアールはルギアの氏だ。」
「おっふ。」
え?エン・グラシアールってなっていたけど?そこも認めたくないけど?
「ちょっと待て、天津とルギアは・・・。」
「恋人だったが籍は入れていないだけで実質夫婦だったな。今までの話の内容から分かっていたと思っていたが?」
俺は床に項垂れた。ステータスなんて見なければよかった。ルギアと血縁関係があるなんて、絶対に認めたくない!あんな毎回
「エン。美味いもの食わせろ。」
しか言わない食い意地の張った黒豹獣人なんて!
「エンはどうしたんだ?床に四つん這いになって。」
くっ。そんな話をしているからルギアの幻聴まで聞こえるじゃないか。
「この前、初めて自分のステータスを見てな。どうやら種族が龍人族で名前がエン・グラシアールだったらしい。」
「お、マジか。」
俺の体が浮き上がり、ルギアに脇下で抱えられ、足がぷらぷらしている状態にされた。
「いつ籍を入れたんだ?」
「なぜ、俺に聞く。ステータスを見るまで知らなかった俺が知っていると思うのか?てっきりグラシアールは天津の名だと思っていたのに、食い意地の張った黒豹獣人と血縁関係があるとは認めたくない。」
「ん?じゃあ、アマツが何かしたのか?良し、戸籍確認しに行くか。」
「行く意味が分からん。」
「親がいる子供は学舎に通えるぞ。アマツが勉強は大事と言って作ったところだ。」
あれか?鶴の一声でまた出来たものか?
「ジェームズ。俺が学舎に通う意味あるか?」
俺ははっきり言って今更勉強する意味はないと思っている。
「エンだとあまり意味が無いかもしれんが、友達を作るにはいいかもしれんぞ。」
「できると思うか?」
「「・・・。」」
二人して無言だった。ジェームズ、目まで反らさなくていいと思うぞ。
「ああ、あと俺の血縁者だと転移門が使えるぞ。」
「なんだ?転移門って。」
「エルフ供が世界中のあちこちに作った転移ができる門だ。このギラン共和国内の転移門だったら証を見せれば使えるぞ。」
「証?何の証だ?」
「豹族の長の一族の証だ。」
「豹族の長?誰が?」
「俺が。」
「・・・。」
ない。それだけは絶対にない。一族の長がこんな食い意地があり、書類整理がまともに出来ない男が一族の長を名乗っていいはずがない!
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