43 / 122
43 俺は至善者ではない
しおりを挟む
「報酬が出るのか?」
「ええ、あなたも冒険者だとゼルトから聞きましたので、今回はサーベルマンモスを一頭倒すごとに100万Gが支払われます。そして、今回全てのサーベルマンモスを引かせたことも考慮しまして800万Gを支払います。そして、これがサーベルマンモスの魔石です。」
そう言いながらノリスは2つの人の頭程の魔石を出してきた。流石にあのサーベルマンモスの大きさだとこれほどの大きさになるのか。
それを受け取り、ウサギのリュックに入れるフリをしながらイベントリーに入れておく。
「う、うさぎ?」
ノリスに疑問系で問われたが俺は無視だ。俺は無視をしたのに
「おう、これはな。荷馬車の代わりの拡張収納付きのリュックだ。今、試験運用中だ。」
ゼルト、説明はしなくていい。
「うさぎのリュックで?」
ノリスしつこいぞ。
「うさぎはなオプションだ。」
「違う!オッサン適当なことをいうな!荷物を取られないようなリュックの形がこれしかなかったからだ!俺は断じて了承はしていない。ジェームズの業務命令で仕方がなく背負っているだけだ!」
「その白い猫もジェームズの旦那がつけたのですか?」
そう、アルティーナが付けた白い猫のぬいぐるみがウサギのリュックについているのだ。
「これはアルティーナが無理やり付けたヤツだ。嫌がらせか何かだろ。」
ノリスとゼルトは顔を見合わせ、ゼルトは肩をすくめている。なんだ?その反応は。
「取り敢えず金はオッサンに預けておいてくれ、俺は少し外に出てくる。」
「おい、エン。待て。」
ゼルトの声を背中で聞き流しながら、ギルドの外にでた。すっかり暗くなってしまった。あまりも書類に埋め尽くされた部屋に苛立ってしまって、やってしまった。何をしているんだか。
夜の街をふらふらと歩いて行く。なぜか段々と肌寒くなってきた流石に最北端の街だなって寒すぎないか?
目の前に凍った池が現れた。どこかで見た景色に思えたが暗くてよくわからん。嫌な予感がするので見なかったことにしよう。
街の端まで来てしまった。この時間になると外壁の門は閉まっており出入りが出来ないようになっている。仕方がない戻るかと思い踵を返そうとした瞬間、後ろに体が引っ張られた。何者かがウサギのリュックを掴んでいるようだ。身体強化を使い、体を捩じり相手を引き剥がす。相手は俺が抵抗するとは思っていなかったのか、逆に引っ張られ倒れたようだ。倒れた相手を見てみると、俺と同じぐらいの・・・すまん、嘘をついた。実年齢が俺と同じぐらいの少年が倒れていた。
「おい、人の荷物を取ろうってどういうことだ。」
「男?」
そうか、フードをかぶっていてわからなかったのかって、女の子の荷物を奪い取ろうしていたのか!
「もしかして、自分より弱いヤツから荷物を奪い取ろうとしていたのか!お前、最悪だな。」
「荷物の中身じゃなくて、そのウサギだ。」
少年は否定してくるが、どちらにしても物を取ろうとしたことには変わらない。
「どちらにしろ、物を盗もうとしたことには違いない。」
少年は唇を噛みしめる。なんでお前がそんなに悔しそうな顔をするんだ。悪いのはお前だろ。
「言っておくがこれは特殊なリュックだ。取られても持ち主の元に戻るようになっている。お前が盗もうが、それは無駄な行為だ。物が欲しいのなら働いて買えばいい。」
「まだ、11歳だから働けない。」
お、俺より年下だった。年下の方が断然大きいだなんて・・・べ、別に悔しくなんかない。
「働けないからと言って俺は物やるような至善者ではない。他を当たれ。じゃあな。」
俺は少年に背を向けもと来た道を戻っていく。
なぜ、このリュックが欲しかったのかは知らないが、見た感じそれなりの衣服を身に着けていた事から孤児ではないように思える。首都の孤児院にいた俺達の衣服は古着の古着で着れなくなる一歩手前の物がまわされるから直ぐに孤児だとわかってしまう。
しかし、先程の少年の衣服は草臥れてはいたが、俺からみたら綺麗なものだった。と言うことは、親がいるが必要最低限のことにしかお金が使えない環境なのかもしれない。
そう言えば昔、同僚が子供の扶養手当がどうこう言っていたな。天津はその制度は作ったのかな。気になるな。ソルは知っているだろうか。
「子供に支払う金?」
冒険者ギルドまで戻って、なぜか椅子に縄で縛られた状態で書類にサインをしているソルに聞いてみた。
「ああ、ソルは天津様と一緒にいたんだろ?子供を扶養する手当は出されているのか?ん?その前に戸籍は存在するのか?」
「あー?この国に住むためには戸籍が必要だ。子供が産まれたら届けを役所に出すようになっているが。子供に支払う金かー。必要か?」
「皆、同じ賃金が発生するのであれば問題ないが、そうではないだろ?そうするとだな生活に行き詰る家族も出てくるはずだ・・・やばい。聞かなかったことにしてくれ。」
これはダメだ。生活保護の問題になってきた。それはそれで付随する事柄が大きすぎる。
「いやいや。面白い考え方だ。」
ソルはぐるぐる巻になった縄を引きちぎり立ち上がった。縄の意味がない。
「やっぱり、今直ぐに首都に・・・ぐっ。」
「この書類の山を片付けてから行ってください。」
ソルはノリスに床に沈められていた。あれ?ノリスってこの部屋の中にいたか?
「ええ、あなたも冒険者だとゼルトから聞きましたので、今回はサーベルマンモスを一頭倒すごとに100万Gが支払われます。そして、今回全てのサーベルマンモスを引かせたことも考慮しまして800万Gを支払います。そして、これがサーベルマンモスの魔石です。」
そう言いながらノリスは2つの人の頭程の魔石を出してきた。流石にあのサーベルマンモスの大きさだとこれほどの大きさになるのか。
それを受け取り、ウサギのリュックに入れるフリをしながらイベントリーに入れておく。
「う、うさぎ?」
ノリスに疑問系で問われたが俺は無視だ。俺は無視をしたのに
「おう、これはな。荷馬車の代わりの拡張収納付きのリュックだ。今、試験運用中だ。」
ゼルト、説明はしなくていい。
「うさぎのリュックで?」
ノリスしつこいぞ。
「うさぎはなオプションだ。」
「違う!オッサン適当なことをいうな!荷物を取られないようなリュックの形がこれしかなかったからだ!俺は断じて了承はしていない。ジェームズの業務命令で仕方がなく背負っているだけだ!」
「その白い猫もジェームズの旦那がつけたのですか?」
そう、アルティーナが付けた白い猫のぬいぐるみがウサギのリュックについているのだ。
「これはアルティーナが無理やり付けたヤツだ。嫌がらせか何かだろ。」
ノリスとゼルトは顔を見合わせ、ゼルトは肩をすくめている。なんだ?その反応は。
「取り敢えず金はオッサンに預けておいてくれ、俺は少し外に出てくる。」
「おい、エン。待て。」
ゼルトの声を背中で聞き流しながら、ギルドの外にでた。すっかり暗くなってしまった。あまりも書類に埋め尽くされた部屋に苛立ってしまって、やってしまった。何をしているんだか。
夜の街をふらふらと歩いて行く。なぜか段々と肌寒くなってきた流石に最北端の街だなって寒すぎないか?
目の前に凍った池が現れた。どこかで見た景色に思えたが暗くてよくわからん。嫌な予感がするので見なかったことにしよう。
街の端まで来てしまった。この時間になると外壁の門は閉まっており出入りが出来ないようになっている。仕方がない戻るかと思い踵を返そうとした瞬間、後ろに体が引っ張られた。何者かがウサギのリュックを掴んでいるようだ。身体強化を使い、体を捩じり相手を引き剥がす。相手は俺が抵抗するとは思っていなかったのか、逆に引っ張られ倒れたようだ。倒れた相手を見てみると、俺と同じぐらいの・・・すまん、嘘をついた。実年齢が俺と同じぐらいの少年が倒れていた。
「おい、人の荷物を取ろうってどういうことだ。」
「男?」
そうか、フードをかぶっていてわからなかったのかって、女の子の荷物を奪い取ろうしていたのか!
「もしかして、自分より弱いヤツから荷物を奪い取ろうとしていたのか!お前、最悪だな。」
「荷物の中身じゃなくて、そのウサギだ。」
少年は否定してくるが、どちらにしても物を取ろうとしたことには変わらない。
「どちらにしろ、物を盗もうとしたことには違いない。」
少年は唇を噛みしめる。なんでお前がそんなに悔しそうな顔をするんだ。悪いのはお前だろ。
「言っておくがこれは特殊なリュックだ。取られても持ち主の元に戻るようになっている。お前が盗もうが、それは無駄な行為だ。物が欲しいのなら働いて買えばいい。」
「まだ、11歳だから働けない。」
お、俺より年下だった。年下の方が断然大きいだなんて・・・べ、別に悔しくなんかない。
「働けないからと言って俺は物やるような至善者ではない。他を当たれ。じゃあな。」
俺は少年に背を向けもと来た道を戻っていく。
なぜ、このリュックが欲しかったのかは知らないが、見た感じそれなりの衣服を身に着けていた事から孤児ではないように思える。首都の孤児院にいた俺達の衣服は古着の古着で着れなくなる一歩手前の物がまわされるから直ぐに孤児だとわかってしまう。
しかし、先程の少年の衣服は草臥れてはいたが、俺からみたら綺麗なものだった。と言うことは、親がいるが必要最低限のことにしかお金が使えない環境なのかもしれない。
そう言えば昔、同僚が子供の扶養手当がどうこう言っていたな。天津はその制度は作ったのかな。気になるな。ソルは知っているだろうか。
「子供に支払う金?」
冒険者ギルドまで戻って、なぜか椅子に縄で縛られた状態で書類にサインをしているソルに聞いてみた。
「ああ、ソルは天津様と一緒にいたんだろ?子供を扶養する手当は出されているのか?ん?その前に戸籍は存在するのか?」
「あー?この国に住むためには戸籍が必要だ。子供が産まれたら届けを役所に出すようになっているが。子供に支払う金かー。必要か?」
「皆、同じ賃金が発生するのであれば問題ないが、そうではないだろ?そうするとだな生活に行き詰る家族も出てくるはずだ・・・やばい。聞かなかったことにしてくれ。」
これはダメだ。生活保護の問題になってきた。それはそれで付随する事柄が大きすぎる。
「いやいや。面白い考え方だ。」
ソルはぐるぐる巻になった縄を引きちぎり立ち上がった。縄の意味がない。
「やっぱり、今直ぐに首都に・・・ぐっ。」
「この書類の山を片付けてから行ってください。」
ソルはノリスに床に沈められていた。あれ?ノリスってこの部屋の中にいたか?
1
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる