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28 誤爆をしてしまった

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 翌日、食品部門に行けば、今日から衣類部門だと言われた。聞いてないぞ。三ヶ月毎に変わると言われた。俺の食品部門は倉庫の整理で終わってしまった。

 そして、衣類部門の建物の裏手にやってきた。俺の教育係はどう見てもジェームズの血筋の女性だった。白いショートボブに白い猫耳が生えた20歳ぐらいに見える、アルティーナ・フィーディスと名のキツそうな感じの女性だ。

「初日から遅刻とはどういうことです。気が抜けているのではないのですか。」

「3ヶ月毎で職場が変わるとは聞いていなかったが?」

「契約時に説明があったはずです。」

 そんな説明あったか?キアナに読んでもらった契約書にはそんなこと書いていなかったし、契約後の説明もすき焼き一色だったし、説明を受けた記憶がないなぁ。

「そんな説明はなかった。」

「あなたの記憶が無いだけで説明はしてあります。」

 え?その場にいなかったのに、なぜに決めつけるんだ?

「わかった。ジェームズに聞きにいこう。」

「会長をジェームズと呼び捨てにするとはなりません。ジェームズ様か大旦那様と呼びなさい。」

 この人面倒くさい。

「ジェームズには許可を取っている。執務室に行くぞ。」


 そして、ジェームズの執務室に入り

「ジェームズ、俺は三ヶ月毎に職場が変更になるとは聞いていなかったのだが、この女性が契約時に説明をしているというのだ。説明をしてくれたか?」

「・・・・あー。説明していなかったな。職場は三ヶ月で変更になるからな。」

「今言っても遅い。このジェームズの血筋らしき女性にもう少し人の話を柔軟に聞くように指導してくれ。」

「アルティーナか仕事熱心でいいのだが、融通が効かないところが少しある。その辺は大目に見てくれ。」

 女性は顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。我慢してるのか?

「アルティーナ少し残りなさい。エンは衣服部門に行って仕事の見学をしておくといい。」

 ジェームズに言われたので、衣服部門の建物に戻って行った。


 衣服部門に戻って行けば、何やら騒がしい。こんな朝早くから客が来ているようだ。

「ここに来ればあると聞いてワザワザきてやったのです。それなのに無いとはどういうことですか!」

 金髪碧眼の20歳ぐらいの人族の女性がかな切り声を上げて叫んでいる。
 遠巻きで見ている従業員に聞いてみると、どうやらパールが散りばめられたドレスがあったらしい。あの女性は何処からかそのドレスがあると聞いて、ここを訪ねてきたが、その商品は昨日別の人が買ってしまったということだった。しかし、女性は納得が出来ずに、そのパールのドレスがいいと言い張っているようだ。

「なんで、そこまでこだわるんだ?」

 話をしてくれた従業員に尋ねる。

「ああ、雪に閉ざされる前に毎年、ギラン祝賀パーティーがあるんだよ。」

「なんだ?ギラン祝賀パーティーって。」

「なんだったかな。アマツ様が年を越す前に神の誕生を祝う祭りがあるとか言い出したのだが、その辺を言い出すとエルフの連中がうるさいから、ギラン祝賀パーティーという名で始めたらしい。」

 クリスマスか!

「ちなみに、プレゼント交換とかあるのか?」

「それがメインイベントだ。誰のどんな物が当たるかは開けるまで分からないから、とてもドキドキするイベントだ。」

「ふーん。それで、あの女性は着ていくドレスが欲しいと言っているのか。」

「いや。プレゼントにするドレスが欲しいそうだ。」

「・・・・誰に渡るか分からないのにドレスをプレゼントするのか?オッサンがドレスを貰ってもしかたがないぞ。」

「「「ぶっぐ。」」」

 ここにいる従業員が全員吹き出した。え。表の従業員にまで聞こえてしまったのか?隣の話をしてくれたオッサンはヒーヒーいいながら、流石にドレスを貰っても困るっと壁に埋もれてしまった。

「なんですか。ここの店はまともに客の対応もできないのですか。」

 どうやら、女性を対応している従業員まで俺は誤爆をしてしまったらしい。仕方がない。黒豹獣人に扮した俺が、女性の前に立つ。

「お姉さんはパーティーで着るドレスが欲しいの?」

 子供らしく尋ねると女性は笑顔を俺に向け。

「珍しいわね。黒豹獣人の子供がいるなんて。着ていくドレスはもう決まっているのよ。プレゼント用なの。」

「送りたい人がいるんだね。」

「いいえ。パーティーの最後にあるプレゼント交換のためのドレスよ。」

「誰が当たるか分からないのに?」

「あら、私がこれ程の物を用意できると言うことに意味があるのよ。」

「じゃ、真珠のドレスじゃなくてもいいんだ。」

「南の海でしかとれない真珠を用意できることに意味があるのよ!」

「じゃ、これはどう?」

 俺はイベントリーから真珠の首飾りを取り出した。先程、ネットでポチしたのだ。
 真珠の首飾りを見た女性は目を見開き

「これをいただくわ。」

 と言った。女性を対応していた従業員に後は頼んだと言い残して、俺は店の裏側に戻った。そこにはジェームズとアルティーナが立っていた。どうやら、二人を呼びに行った者がいたらしい。

「流石、エンだな。このギラン共和国ではとれない南の海の真珠まで、持っているとはな。あの、女性が欲しがったドレスの真珠も取引には相当苦労したのに、エンはなんの躊躇もなく出すんだな。」

 ジェームズすまん。俺はネットでポチしただけだ。
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