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129話 敵襲?

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「ねぇ、ねぇ、ティア先生?」

孤児院の男の子が、ティアに話しかけた。

「なぁに?」

ティアは優しく聞き返す。

「先生は今日18歳になったんだよね?」

小首を傾げながら聞いてくる4歳くらいの幼い男の子は、本当に愛くるしい。

「ええ、そうね。今日はお祝いしてくれてありがとう。本当に嬉しかったわ、先生」

ティアは男の子の頭を撫でながらお礼を伝えた。

「うん、いいよ。あのさ、18歳って結婚できる歳になったってことって聞いたんだけど、本当?」

質問の度に小首を傾げる姿が愛らしくて、ティアは微笑みながら答える。

「そうね、この国では男の子も女の子も、みんな18歳から結婚してもいいと国が定めているわ」

「じゃあさ、誰かと結婚しちゃうの?」

不安そうな顔をして男の子はティアを見上げた。

「しないわよ?先生はここで、結婚せずに、ずぅっとみんなと一緒にいるのよ?それはもう決まってるの。」

それを聞いた男の子は急に明るい顔をする。

「そうなんだ⁈アーよかった!…あれ?でもさ、ずっと結婚しないの?

ぼく、18歳になったら先生をお嫁さんにしたいと思ってるんだけど、だめ?

先生、結婚して!」

男の子はティアに抱きついて、ティアはその子の頭をニコニコして撫でた。

それを見ていたロズウェルとラムは、子どもだろうと関係なくギラッと鋭い目で見る。

今は子どもでも、成長するのはあっという間だ。

危険を感じて、2人はその男の子を今後の観察対象に加えた!

…どこまでも困った2人なのだ。

と、そんな他愛もない雑談をしていた時、

ガチャガチャッ

ドカドカドカッ

と、すごい勢いで何かが孤児院に入ってきた。

突然のことに恐怖するが、とにかく子どもたちを守らなければと、ティアは子どもたちを後ろに集め、

ロズウェルは剣を、ラムは戦闘用ナイフを出して構えた!

もう、すぐそこまで足音が来ている!

恐怖に慄きながらも、扉の両横にロズウェルとラムは潜み、敵の侵入に備えた。

ガチャガチャッ

扉を開ける音…

キィ…

「何者だ⁈」

ロズウェルは剣を勢いよく相手に向けて振り、
ラムは戦闘用ナイフを投げようとした、その時

キィィイイン

と剣がぶつかり合う音がした。

どうやら咄嗟に敵がロズウェルの剣を受け止めたらしい。

ラムは投げる寸前で相手の顔を見て、ナイフを投げるのを止めていた。

ロズウェルが相手の顔を見ると…

⁈⁈⁈

「リ、リンドール様⁈」

ロズウェルはすぐに剣を納め、片膝をつき、胸に手を当てて謝罪する。

「これは、リンドール様、大変申し訳ないことを致しました。どうか、寛大なご容赦を賜りますよう…」

「ロズウェル殿‼︎ロズウェル殿‼︎」

そう叫ぶと、リンドは人間界に戻ってこれた感動でロズウェルに思い切り抱きついていた。

⁈⁈⁈は?

ロズウェルはあまりにも驚いた!

ここは公爵家が経営する孤児院であるため、たまにリンドも視察に来ていたが、

ロズウェルと出会っても挨拶くらいしか交わさない、そっけないやりとりだった。

リンドがあまりにクールだったので、雑談をするのも憚られたためだ。

それはティアに対しても同じことで、

しかし、そんな冷遇を受けても、ずっとリンドのことを想い続けるティアが不憫だった。

婚約破棄はロズウェルにとって願ってもないことだったから、それはいいが、

しかし、婚約者でなくなると、こんなによそよそしくされてしまうものなのかと、リンドの豹変ぶりに悪感情は少なからず抱いていた。

だからこそ、突然感情丸出しのリンドの様子に驚かずにはいられなかった。

固まるロズウェルに、リンドは言う。

「ロズウェル殿!話はまたあとで!急ぎますので、失礼!」

そういうと、部屋の隅で、子どもたちを庇うように前に立っていたティアのもとへ駆け寄った。

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