【完結】転生令嬢はハッピーエンドを目指します！

103話 待ってるから

リンドは泣きじゃくるティアをそっと抱き寄せ、強く抱きしめる。

ティアは、ごめんなさい、ごめんなさいと、リンドの胸の中で謝り続けた。

「いいんだ、ティア。

全部俺が勝手にしたことなんだから、ティアが気にする必要なんてないんだよ。

それに、俺はティアに愛してもらうことができて、俺もティアに愛を伝えることができて、

こんなに幸せなことはなかったよ。

ありがとう、ティア。

俺がいなくなっても、必ず幸せになって、天寿をまっとうして、精霊界へ戻っておいで。

そしたら必ず会いに行くから。

ループをやめて、ティアになるのはこれで最後にして、俺と一緒に次の幸せを見つけよう。」

リンドはティアの顔を覗こうと少し引き離そうとするが、

ティアは強く抱きついて離れなかった。

リンドもそれに負けて、もう一度強く抱きしめ返す。

しかし、ふと自分の腕を見て気づいた…

「…そろそろみたいだな…

俺が話終わるの、待っててくれたのかもな…」

リンドの身体の周りが白金の光に薄く包まれ始めた。

ティアはその言葉で何が起きているのか悟る。

「イヤ…いやよ！…待って！待って！私なんでもするから！お願い、行かないで！置いて行かないで‼︎」

ティアはリンドを逃がさないとばかりに、さらに強く強く抱きしめた。

「ティア、ごめんよ。こんなことになって。

俺もティアと結婚して、最後まで一緒にいたかったなぁ…

まぁ、仕方ないけど。

とにかくティアが無事でよかった。本当によかった。

…あっちで待ってるから。…きっと待ってる。

もう何千年も待ったんだから、あと数十年くらいどうってことないさ。

ティア、だから君は慌てず、この世界で幸せをしっかり掴んでから、ゆっくり戻っておいで」

リンドは諭すようにティアの頭を撫でながら微笑んで言った。

その間にもリンドの身体の周りの光は強くなっていく。

時間はもうあと数分も残されていないように、リンドは感じた。

「ねぇ、…最後に一つだけ、お願いしていい？」

ティアは、はっとして、自分に何かできることが残されているのかと、リンドの顔を見た。

「もう一度、君の唇にキスがしたい…」

そう言いながら、ティアの答えを待たずに、リンドはティアの唇にくちづけた。　　

ティアは驚いて目を瞠ったが、すぐに目を閉じて、リンドの温もりを感じた。

お互いいつまでも唇を離せなかった。

離れたくない気持ちが、2人をそうさせた。

長いような、あっという間のような時が過ぎ…

リンドの身体を覆う光は、眩しく目を開けられないほどに発光すると

瞬間、身体の光が玉となって身体から抜け、リンドの頭上に浮かんだと思うと、すうっと光が消えていった。

同時に、ティアとリンドは意識を失った…