【完結】転生令嬢はハッピーエンドを目指します！

80話 父の事情 2

「というわけで、すでにご結婚されていたマリア様に女帝になって頂くには、

ロイーズ殿と離縁して頂く必要がありました。」

フェリスはまだまだ説明を続けた。

ティアはこれまでどの人生でも、父が不倫しているとばかり思っていて、いつも情けなく感じていた為、

どんな話かはわからないが、不倫以外の何か事情を教えて貰えるということが嬉しかったので、

じっと話を聞いていた。

フェリスは続ける。

「それで私の父は、ロイーズ殿に離縁して頂くよう、打診に行ったようなのです。

ところが、ロイーズ殿はあまりにもマリア様やご家族を大切に思っておられ、

どうしても返さないとおっしゃって聞かなかったようです。

そして、貿易関係の領地のお仕事で、隣国の内政にも詳しかったロイーズ殿は、

マリア様をセルデュークに返すにはまだ父の勢力が足りず、

マリア様を危険に晒すだけだと指摘され、

父は図星をつかれたそうです。」

父ってすごいんだ…
と、ティアは少し嬉しくなる。

「本当にひっくり返せるほどの勢力を集めるには、

実はまだまだ時間がかかりそうだったのを、

ロイーズ殿に見破られてしまいましたが、

ここで父を追い返せても、どのみち力をつけて、

いずれマリア様をもう一度取り戻しにくるのは間違いないと、

ロイーズ殿はそれも考えていたようです。

そこで、ロイーズ殿は父に取り引きを持ちかけました。

《大きな勢力をつけるにはまだ十数年かかるはず。

その頃にはリズティアが成人し、結婚できる年齢になるだろう。

どのみち国内であっても結婚して嫁ぐなら、

隣国で女帝という素晴らしい身分を得て過ごすのは

リズティアにとっても悪くないことだと思う。

だから、リズティアを女帝にする方向で検討してほしい。

しかし、家族が隣国まで離されるなんて、

リズティアにそんな寂しい思いはさせられないから、

隣国へ渡る際には家族全員で渡航し、

永住させることが条件だ。

それが叶うなら、私にできる何かそちらの望むリスクを背負おう。》

とおっしゃったそうです。

それによって、

こちらの取り引き条件としてロイーズ殿は我が国の諜報員となり、

新たな人生を生き始めたのです。

諜報活動はなかなか家には帰れないため、

ご家族にはつらい思いをさせていたと思います。

大変申し訳ない。

さらにいえば、

ロイーズ殿が我が国の諜報員となり、

ガルティア国の情報を流していたことが知られると、

本人だけでなく、その一族郎党までが極刑を免れないでしょうから、

ロイーズ殿はどなたにも話すことができず、

苦しい思いをなさっていたのだとお察しします。

まぁ、もちろん何かあれば、

我が国へお逃しするつもりではありましたが…

そして、万事諸々準備を完遂させ、

リズティア様が成人を迎える15歳のお誕生日の日に、

ご家族全員をお迎えにあがるはずが、

その前日に父が他界してしまい、お迎えに上がることができず、

色々処理をしてからでないと動けなくなって、足止めされているうちに、

あなた様がご婚約されてしまったのです。

リズティア様が婚約相手のことを好きになってしまったり、

まさかご結婚前にお手がついてしまったり、

とにかくトラブルの元ですし、ロイーズ殿とマリア様のようになってしまっては、

ここまで待った甲斐もございませんから、

手荒で申し訳なかったのですが、こうして急ぎお連れしたのです」

フェリスはようやく説明し終えて、少しホッとした顔をみせた。