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57話 新しい生活のはじまり

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ティアが公爵家に来てから1週間が経った。

行儀見習いは、基本的にお義母様について色々習わせて頂いている。

通常公爵家の政務は夫が、内務は妻に任されるため、内務について、あれこれと事細かに教えて頂く。

貴族としてのマナーなどは家庭教師をつけて頂いて、少しずつ特訓を始めていた。

何もかもいっぺんにやりすぎると、住み慣れてもいないのに負担だろうからと、お義母様がご配慮くださって、スローペースで始めてくださったのだ。

今までもそれなりに学んではきていたが、公爵家ともなれば、王家に次ぐ家柄ということもあり、王家主催のパーティーへの出席なども多く、最上位の気品を学ぶ必要があった。

礼儀作法に始まり、ダンスレッスン、ドレスや宝石の選び方など、身につけなければならないことは山ほどあった。

ティアはこれまで実家の方で、母の冷遇により、あまり指導力のない教師をつけられたり、それでもまだ良い方で、家庭教師をつけてもらえない科目も多く、自主勉強や孤児院で兄から指導を受けたりしながら補ってきていたため、

公爵家での上質なレッスンは、大変ながらも新鮮で楽しく、どんどん吸収していった。

しかも、行儀見習いは通常半年ほどであるにも関わらず、リンドが急いだことで、ティアには3年もの猶予があるため、

ゆっくりと多くのことを余裕を持って学ぶことができ、早く来たことを嬉しく思った。

また、それだけでなく、リンドはもちろん、義両親も侍女や執事、使用人たち、衛兵、とにかく公爵家の誰も彼もがティアを歓迎して、優しく接してくれたことがとても嬉しく、温かな環境に身を置けることの有難さをひしひしと感じていた。

でも、実はティアが大変な毎日を楽しく穏やかに過ごせる1番の理由が他にあった。

それは、初めて公爵家に来た日のあの夜以来、リンドと一緒に寝る温かい幸福が忘れられず、毎夜ティアは禁断の扉の鍵を開けて、リンドのベッドに潜り込んでいた。

夜這い、というよりは、子どもが甘えるようだった。

リンドは実は内心苦悶しているのだが、その様子を見せて怖がらせてはいけないので、なんとか紳士の顔を保って添い寝を許していた。

ラムは最初怒って鍵を隠していたが、他の侍女に頼むと、いくらでも喜んで合鍵を準備してくれるので、ラムは呆れ顔をしながらもあきらめてくれた。

それにラムも実はそろそろリンドを信用し始めていたので、なるようになれと放っておいた。

ロズウェルほど過保護でなかったのは、ティアとリンドにとっては幸いだったろう。
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