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15話 僕のかわいい妹 —秘密の作戦 2 ロズウェル視点—

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はぁ…疲れた。

ぽすっ…と、柔らかいソファの背もたれにもたれかかり、身を任せると、力なく溜息を吐いた。

美しく整った丹精な顔立ちの目の下には、

まだ9歳だというのに真っ黒な隈ができていた。

ロズウェルはあまりに疲れていた。

この国には学園というシステムがない。

以前そういう案も貴族院の間で上がったそうだが、

年齢が同じというだけでひとつのところに集めて同じことを教えても、

個々人で能力が違うのに意味がない。

それは無駄に優劣をつけるだけで、

伸びる能力も伸ばせなくなるし、

伸びない能力に無駄に時間をかけて苦しませるだけだ、

という国王の考えに賛同する者が多く、学園設立には至らなかった。

まぁ、実際のところそれに賛同した貴族たちは、

国王の、純粋に子どもの教育を考えた意見に共鳴したのではなく、

自分の子が他の貴族の子どもに負けたり、

能力が低いことを知られて婚約を結ぶ際の価値が下がることを恐れて、

学園などない方が都合がよかっただけ、というのがみえみえだ。

馬鹿馬鹿しい。

学園というものがあればどうだったんだろうと思う。

家や親から離れられる時間が毎日できるなんて…

あーあ、作って欲しかったな…

国が学問の標準的な指針は決めてはいるが、

個々人で家庭教師を雇い入れ、

伸ばしやすい能力を最大に伸ばす努力し、

もともと持ち合わせていない能力分野はほどほどでよく、

家人に足りない能力はその分野に長けた従者を雇って補うのが、

今の貴族たちのやり方だ。

貴族の子ども同士が集まり交流して集団生活を育むカリキュラムとしては、

国から割り振られた慈善活動に週に1度ほど参加するシステムがあった。

しかしロズウェルの場合、

母が全ての分野をくまなく最大限まで能力が上がる指導をするように家庭教師に命令していたため、

非常に過酷なカリキュラムが組まれ、寝る時間さえ削られるほどだった。

はぁ…ティアに会えればちょっとくらい気がまぎれるんだけどなぁ

ロズウェルはティアが大好きだった。

2歳くらいのティアがロズウェルのあとを追ってよちよちついてきたり、

待っててあげると可愛く抱きついてきたり。

本当に可愛いかったなぁ…

目を閉じて小さい頃の思い出を頭に思い浮かべ、

癒されようとがんばった。

母があの頃から、ティアに急激に冷たくあたるようになった。

母はいつも僕にまとわりつくから、

僕がティアに会いに行くと、ティアの天敵をわざわざ僕が連れて行ってしまうようで、

ティアが日に日に暗くなっていくから、我慢して離れるしかなかった。

僕が近づかなければ、母もティアに会うことはない。

そしたらティアが傷つけられずに済むんだから、

会いたいけど、一緒に遊びたいけど、

僕の身勝手でティアの表情を曇らせたくない。

だから、仕方なく離れることに決めた。

僕は時折庭園をかけまわるティアを

自室の窓から見て、成長を見守った。

幸いにもティアの乳母はティアに優しかったから、

安心して任せることができた。

頭の中にティアのかわいい微笑みを思い浮かべて疲れに抗おうとしていた、

その時だった。

小さなノックの音がした。

「はい」

…え?先生はさっき出ていったばかりだよね?

あれ?妄想してる間にもう休憩終わっちゃった⁇

と、軽くショックをうける。

しかし先生なら一分一秒も時間が惜しそうで、

返事のあとすぐに扉を開けるのに、扉は開けられない。

誰だろう。

立ち上がってのろのろと扉を開けにいく。

「お兄様、ティアです。入ってもいい?」

「ティア⁈」

驚きと嬉しさでシャキッとなってすぐに扉を開けた。

「来てくれたの⁈ 嬉しいなぁ!…でもどうしたんだい?」

扉の前のかわいいティアをみて、

とにかくハグしたい気持ちをぐっと抑える。

彼女ももう7歳なんだ。

そんなこと、普段から交流もないこんな兄にされたら嫌だろう。

かわいいクリクリの紫の瞳がこちらを見つめている。

だめだ、かわいすぎる‼︎

妖精さんなの?ねぇ、ティア。いや、天使かな?

「お兄様、少しお話ししたいことがあるんですけれど、

中へ一緒に入れて頂いてもかまいせんか?

ご休憩のお邪魔でしょうか?」

「ティア!

そんな他人行儀に話さなくていいんだよ。

というより、いつからそんな大人っぽくお話しできるようになったんだい?

毎日見ていられたらその変化もわかったんだろうに、

悔しいなぁ…」

こんなに丁寧に話せる7歳いる⁇
ティアはやっぱり天才だ!
天才の天使!
あっ、天使だから天才は当然か?

ロズウェルは久しぶりの妹とのご対面でパニックに陥っていた。

そんな姿を見てか、ティアが小さく笑う。

うわっ!天使降臨!

「ふふっ、大袈裟よ、お兄様。お兄様の方こそ、また一段とかっこよさが増しておられますわよ。」

ティアに褒められ有頂天のロズウェルは

「そうかなぁ」

と照れた顔を隠しもせず、

頭を掻きながら、さぁ入って、とティアの手を引いて中へ入れた。

手が小さくてかわいすぎる!

あっ、そうだ!
とっておきの甘い香りがする紅茶があったはず!

ウキウキと疲れもどこ吹く風で紅茶を注いでテーブルへ置き、並んでソファへ座った。

きっと内緒話ならこの方がいいだろうからね。

と思っていたら、さらにティアが近寄ってきて、

ぴったりくっついて座った。

ひゃぁっ

と一瞬ドキドキするが、ティアのまだ幼い香りが鼻をくすぐり安心する。

しっかりしていてもまだまだ子どもなんだよね
とにかく天使だ…

あー、一緒に遊びたいなぁ…

かくれんぼはティアを見られる時間が減るしなぁ

ティアは今どんなことをして遊ぶのが好きなんだろう…

そんなことを考えながらティアを見ると、自然に笑みがこぼれた。
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