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4話 最愛との死別

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慌ててノックも忘れ扉を勢いよく開けると、

そこには扉近くの壁に掲げられた、大きなひびがいくつも入り、

ところどころ割れて剥がれ落ちた姿見と、

その破片が散らばる真ん中に最愛の…僕の最愛の妹の無惨な姿が‼︎

しばらく息が詰まって、

誰かを呼びたいのに声が出せず、

助けたいのに動けないことが悲しくて、

体は微動だにできないのに、涙が溢れ出した。

その涙の勢いで、震えながらも息を吹き返し、

大声で人を呼ぶ。

あとはもうどうしたのか、どうできたのか、何も憶えていない。

ただ、ティアのための、

ティアに似合う色の

美しい花びらの散らばる横に…

ぐったりと横たわるティアは、もうその時すでに冷たくなっていて、

この世の人ではなくなっていたという事実だけは、脳に強く刻みつけられた。

遅かった。

助けるには遅すぎた。

妹はつらすぎたのだ。

母の冷遇がつらすぎたのだ。

愛が欲しかったのだ。

それはわかっている。
わかりすぎるくらいわかっていた。

でも、

僕は愛していた。

愛していた僕なら、どうにか救ってやれたはずだ。

離れることが最善なんて、馬鹿だった。

そんなことで守れるはずがなかったんだ。

自分がつらかったから、逃げるための言い訳に過ぎなかったんだ。

ごめんよ、ティア、ごめんよ、ティア


ティアは愛されていたんだよ

僕に、こんなに、愛されていたんだよ

帰ってきてよ、戻ってきてよ、ティア

そしたら今度こそ、母から逃げ出して、こんな馬鹿げた家は捨てて、

ティアを幸せにする道を選ぶから…

僕を…助けて…ティア…許して……


それからは抜け殻のように、

毎日の鍛錬や父親の代わりに政務に終われる地獄の日々でさえも何も感じず、

ただ、ただ、生きながらえていた。

———あの壮絶な1日から一年。

僕は18歳になり、

母の決めた婚約者が僕の周りをウロチョロし始めても、僕には何も見えていなかった。

そのことを申し訳なく思う感情が湧かないことが申し訳なかった。

…もう1人にしてほしかった…
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