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86話 寿命を縮めるようなことはしないでね?
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「どうだった?会えた?見てくるって言って急に消えたんだけど…」
フェリスが部屋に入るなり、カトリーナは心配そうに聞いてきた。
フェリスは怒りや悲しみ、絶望、色々混ざった感情を、いったん全部胸の中に押し込んで、カトリーナに笑みを向ける。
まだ終わってない…
そう自分に言い聞かせて、フェリスは最後の仕上げにかかった。
「ああ、会えたよ。本当に居たんだね!魔女って。びっくりしたよ。カトリーナ、本当にありがとう」
「それなら良かったわ」
と、カトリーナも微笑んだ。
自分が抱えていた秘密を共有してもらえた安堵感を少し感じていた。
「それで、君はどうだった?毒は貰えた?」
フェリスは心配そうな顔をして聞き返した。
「ええ、大丈夫よ。…ほら、ここに」
と、小さな小瓶をフェリスの目の前に出して見せた。
透明の瓶の中には、透き通った水のような液体が入っていて、それをカトリーナが揺らすと、ちゃぷんと音を立てた。
「これ、無味無臭で無色透明だから、何か食べ物か飲み物に入れておけば絶対気づかれないそうよ?
一滴だけで、必ず命を奪えるって言ってたわ」
と、得意気に話した。
「なるほど…それはすごい!カトリーナ!やっぱり君はすごいよ!」
と、フェリスは精一杯喜んだフリをしたが、今までの毒殺を思い起こし、腹の内では憎悪が煮えたぎった。
「カトリーナ?じゃあ二人には僕が一番近づきやすいし、君に手を下させることなんてできないから、その毒、僕に預けてもらっていいかい?」
「ええ、もちろんよ」
この王子、ほんとに使えるし、私にやらせようとしない辺りが男らしくていいわね
あの第一王子もカッコいいし殺すには惜しい気もしたけど、この王子の妃になった方が幸せかもね
ま、王妃になれたらそれでいいんだけど
そんなことを考えながら、カトリーナは微笑んでフェリスにその毒を瓶ごと渡した。
「ありがとう。じゃあ決行する日は、みんなが集まる婚約発表の日がいいかな?
盛大なパーティーだから…きっと楽しくなるよ?」
フェリスはニヤリと笑った。
「ふふっ、悪い人ね?」
と、カトリーナは満更でも無さそうに微笑んだ。
フェリスはカトリーナをそっと抱きしめると、
「ねぇ、カトリーナ?1つ聞いていい?」
と耳元で囁くように聞いた。
「…ええ?なぁに?」
もうフェリスと結婚して王妃になる気になっていたから、どっちつかずの態度を取らなくてよくなったカトリーナは甘く返す。
「…この毒を魔女から貰ったのは、これが初めて?」
「ええ、そうよ?ずっと前にそんなのがあるって聞いてたけど、別に今まで必要なかったから。
だから、魔女を私から呼び出したのはこれが初めてだし、最初に会った時も毒は貰ってないわ。
どうしてそんなこと聞くの?」
「ああ、だってその毒、君の寿命と引き換えだって言ってたから。
何度も引き換えてたら君が長生きできなくなってしまうと思って、心配になったんだ」
「まぁ!そうなの?ふふっ。大丈夫よ?
今回だけだから、1年しか減ってないし、心配いらないわ」
心配してもらったと思ったカトリーナは嬉しそうに微笑んだ。
「なら、よかった。もう呼ばないでね?お願いだよ?」
と、不安気な顔で懇願する。
「ふふっ、そんなに長生きしてほしいの?
大丈夫よ、もう呼ばないわ。約束してあげる」
カトリーナはニコッと笑むと、小首を傾げてフェリスを見た。
「ありがとう、それを聞いて安心した。
カトリーナ、絶対にこれ以上寿命を縮めたりせずに、僕より長生きしてね?」
とフェリスは念を押す。
「ふふっ、はいはいわかりました」
とカトリーナは笑った。
「よかった…」
とフェリスは心底ほっとしたように、安心した顔をした。
フェリスは実際安心していた。
魔女を呼び出すためには、あの日記を開く必要があると思っていたのに、
ペンダントを使っていつでも呼び出せたということがわかったことで、
以前に魔女から毒を貰い、隠し持っている可能性が浮上し、
もしそうなら今この毒を預かっただけでは不十分だったからだ。
今回が初めてと聞いたフェリスは心底安堵した。
「それじゃあ、僕はこれで帰るよ。
あっ!そうだ、言い忘れてた。
一応2人をヤるまでは、君は兄上の婚約者になる人だし、僕はあんまり近づけないかもしれないけど、1ヵ月後にはずっと一緒にいられるようになるから、我慢してね?
じゃあおやすみ、カトリーナ。また明日ね?」
「ええ、わかったわ。おやすみなさい」
カトリーナが納得するのを確認すると、フェリスは窓から音もなく身軽に出て、そのまま夜の闇へと消えた。
カトリーナは、ベッドに寝転がると、いつの間にか眠りに落ちて、自分が王妃になった夢を見ていた…
フェリスが部屋に入るなり、カトリーナは心配そうに聞いてきた。
フェリスは怒りや悲しみ、絶望、色々混ざった感情を、いったん全部胸の中に押し込んで、カトリーナに笑みを向ける。
まだ終わってない…
そう自分に言い聞かせて、フェリスは最後の仕上げにかかった。
「ああ、会えたよ。本当に居たんだね!魔女って。びっくりしたよ。カトリーナ、本当にありがとう」
「それなら良かったわ」
と、カトリーナも微笑んだ。
自分が抱えていた秘密を共有してもらえた安堵感を少し感じていた。
「それで、君はどうだった?毒は貰えた?」
フェリスは心配そうな顔をして聞き返した。
「ええ、大丈夫よ。…ほら、ここに」
と、小さな小瓶をフェリスの目の前に出して見せた。
透明の瓶の中には、透き通った水のような液体が入っていて、それをカトリーナが揺らすと、ちゃぷんと音を立てた。
「これ、無味無臭で無色透明だから、何か食べ物か飲み物に入れておけば絶対気づかれないそうよ?
一滴だけで、必ず命を奪えるって言ってたわ」
と、得意気に話した。
「なるほど…それはすごい!カトリーナ!やっぱり君はすごいよ!」
と、フェリスは精一杯喜んだフリをしたが、今までの毒殺を思い起こし、腹の内では憎悪が煮えたぎった。
「カトリーナ?じゃあ二人には僕が一番近づきやすいし、君に手を下させることなんてできないから、その毒、僕に預けてもらっていいかい?」
「ええ、もちろんよ」
この王子、ほんとに使えるし、私にやらせようとしない辺りが男らしくていいわね
あの第一王子もカッコいいし殺すには惜しい気もしたけど、この王子の妃になった方が幸せかもね
ま、王妃になれたらそれでいいんだけど
そんなことを考えながら、カトリーナは微笑んでフェリスにその毒を瓶ごと渡した。
「ありがとう。じゃあ決行する日は、みんなが集まる婚約発表の日がいいかな?
盛大なパーティーだから…きっと楽しくなるよ?」
フェリスはニヤリと笑った。
「ふふっ、悪い人ね?」
と、カトリーナは満更でも無さそうに微笑んだ。
フェリスはカトリーナをそっと抱きしめると、
「ねぇ、カトリーナ?1つ聞いていい?」
と耳元で囁くように聞いた。
「…ええ?なぁに?」
もうフェリスと結婚して王妃になる気になっていたから、どっちつかずの態度を取らなくてよくなったカトリーナは甘く返す。
「…この毒を魔女から貰ったのは、これが初めて?」
「ええ、そうよ?ずっと前にそんなのがあるって聞いてたけど、別に今まで必要なかったから。
だから、魔女を私から呼び出したのはこれが初めてだし、最初に会った時も毒は貰ってないわ。
どうしてそんなこと聞くの?」
「ああ、だってその毒、君の寿命と引き換えだって言ってたから。
何度も引き換えてたら君が長生きできなくなってしまうと思って、心配になったんだ」
「まぁ!そうなの?ふふっ。大丈夫よ?
今回だけだから、1年しか減ってないし、心配いらないわ」
心配してもらったと思ったカトリーナは嬉しそうに微笑んだ。
「なら、よかった。もう呼ばないでね?お願いだよ?」
と、不安気な顔で懇願する。
「ふふっ、そんなに長生きしてほしいの?
大丈夫よ、もう呼ばないわ。約束してあげる」
カトリーナはニコッと笑むと、小首を傾げてフェリスを見た。
「ありがとう、それを聞いて安心した。
カトリーナ、絶対にこれ以上寿命を縮めたりせずに、僕より長生きしてね?」
とフェリスは念を押す。
「ふふっ、はいはいわかりました」
とカトリーナは笑った。
「よかった…」
とフェリスは心底ほっとしたように、安心した顔をした。
フェリスは実際安心していた。
魔女を呼び出すためには、あの日記を開く必要があると思っていたのに、
ペンダントを使っていつでも呼び出せたということがわかったことで、
以前に魔女から毒を貰い、隠し持っている可能性が浮上し、
もしそうなら今この毒を預かっただけでは不十分だったからだ。
今回が初めてと聞いたフェリスは心底安堵した。
「それじゃあ、僕はこれで帰るよ。
あっ!そうだ、言い忘れてた。
一応2人をヤるまでは、君は兄上の婚約者になる人だし、僕はあんまり近づけないかもしれないけど、1ヵ月後にはずっと一緒にいられるようになるから、我慢してね?
じゃあおやすみ、カトリーナ。また明日ね?」
「ええ、わかったわ。おやすみなさい」
カトリーナが納得するのを確認すると、フェリスは窓から音もなく身軽に出て、そのまま夜の闇へと消えた。
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