【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

76話 フェリスの思惑

「待ってください、兄上！今カトリーナを拘束すれば、洗脳された民衆が暴動を起こし兼ねません。これは調略が必要かもしれませんね」

「…たしかにそうだな」

アークは納得してソファにまた腰掛けた。

「僕には幸いあの目の力が効きませんから、仕掛けるなら僕が仕掛けましょう。うまくいくかはわかりませんが、やってみます」　

魔法を取り消すために寿命全部と交換するという制約はどの魔女も変わらないと言っていた。

この前あんなに嫌がっていた大魔女に聞きに行ったところで、「メイサ」という魔女のことは教えて貰えないかもしれない。

それならアークの考えに一度乗ってみようと思ったフェリスは、そう言った。

「フェリス…本当に大丈夫？無理してない？」

エレナは心配そうにフェリスに聞いた。

「大丈夫だよ、エレナ。

それに、婚約解消してもカトリーナは君を殺したんだ。今回も婚約を解消して研究所へ行っている間に狙われないとも限らない。

早急に魔女との接触を図れるよう、なんとかしてみるよ」

フェリスはエレナを安心させるように、自信たっぷりに微笑んだ。

「フェリス…
ごめんなさい。本当にありがとう。

でも、フェリスも私が処刑された時は先に毒殺されたはず。

例えそれが私に罪を被せるためだったのだとしても、フェリスも狙われる可能性があると思うと…」

「大丈夫だよ、エレナ。やられると分かっているなら、充分な警戒もできる。

だから遠慮なんてしなくていい、早くこんなこと終わらせよう」

「フェリス、ありがとう。俺もフェリスの周りには充分目を光らせておこう。

申し訳ないが今頼れるのはお前だけだ。
どうか、よろしく頼む」

「ええ、兄上。お任せください」

フェリスは笑顔でそう言ったが、エレナはまだ心配そうな顔をしていた。