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71話 号外!

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あのマーガレットの魔力暴走から2週間が過ぎ、カトリーナもあれ以来鳴りを潜めて、特に大きな事件もなく、エレナたちは穏やかな日々を送っていた。

穏やかとはいえ、その間にも王宮の書庫を調べたり、所長に話を聞いたりと、魔女の探索活動には余念がなかった。

エレナとアークは学園から王宮へ一緒に帰るようになると、

仲睦まじさがさらに増したと、生徒たちからの、王子と未来の王太子妃への期待も高まっていた———



「アーク様、こちらは見終わりました。でもやはり魔女に関する文献はないようですね」

エレナは自分が担当する本棚の前で、隣の本棚担当のアークに言った。

「そうだな。何か手がかりだけでもあればいいんだが…フェリスの方はどうだ?」

「えっ、あっ、ああ、見つからないね。本当にこんなにたくさん本があるのに一冊もないなんて、不思議なくらいだよ」

「違いない」

3人は王宮内の途方もなく多い本棚をこの2週間隈なく探していた。


———バタバタバタバタ

「殿下!姉上!」

「ルーカス⁈どうしたの⁈何か分かった⁇」

王宮の書庫へ突如押しかけてきたルーカスにエレナは驚いた。

「やぁ、ルーカス」

フェリスが優しく微笑みかける。

「ルーカス、びっくりするだろ?もうちょっと静かにできないのか?」

しかめっ面でアークは注意してきたが、ルーカスは、それどころじゃないんです!と、すごい形相で手に持っていた新聞記事を広げて見せた。

「この記事見てください!今日街で配られてて!大変ですよ!」

3人はルーカスの慌てぶりが尋常ではないことに気づき、急いでその記事を見るとこう書いてあった。

『号外!教会に聖女現わる!

 魔法学園近くの教会に、ここ2週間ほど毎日聖女カトリーナ様が通われ、光魔法を使って傷病者の治療に当たられている。

 この治療は無料で、貴賤問わず受けることができるため、王都民の健康状態は右肩上がりに良くなっていると国の健康担当官も話す。

 素晴らしい能力を持つこの聖女カトリーナ様は、現在魔法学園に通われるまだ御歳16歳の少女で、この高尚な聖女様を王妃にと推す声も王都民の間には飛び交い始めている。

 一方、現在第一王子の婚約者であるエレナ様は、最近新しい魔法能力を身につけられたと聖女様は語られた。

 聖女様は同じ学園でエレナ様と出会い、新魔法を目にする機会があったという事だが、それは非常に稀有な魔法で、まだ世界的に知られてはいない。

 その名も、『無効化の魔法』
 
 これは、魔法を無効にする魔法で、見識者の中には危険視する者も。

 賛否分かれる魔法を持つエレナ様と、人々を癒す力を持つ聖女様との王妃争いに発展しないか、王都では今波紋を呼んでいる。』


「なんだこれは‼︎」

アークは吐き捨てるように叫んだ。
エレナは青ざめてまだ新聞記事を凝視している。

「やられましたね、まさか学園の外でやるとは考えていませんでした…

僕らの目を欺くために、学園では大人しくしていたということなのでしょう。

とんでもない女だ…

…あっ、ルーカス、ごめんっ」

「フェリス殿下、お気になさらないでください。本当の事ですし。それより、どう対処すればいいでしょうか」

「うん…今回はかなり難しいね…

前回は学園の生徒だったから、エレナの無効の魔法で学園を包み込めば無力化できたけど、王都民となれば話は別だ。

そんな広範囲を魔法で覆うのは、いくら魔力量が増えたと言っても無理がある。

それに、そもそもその魔法自体偶発的に起こるもので、コントロールできるわけじゃないんだから、何か別の方法を考えた方が賢明だろうね」

フェリスは美しい顔を歪ませると、思案しながら言った。

「……他の方法…

しかし、もしこの件に何か手立てを講じて今回を切り抜けたとしても、カトリーナがあの闇魔法を持っている限り、また同じようなことをするはず。あの日記を見てもそれは明らかだ…

やはり、魔女を探すしか方法はないのか…」     

アークは苦虫を噛み潰したような顔で唸っている。

「…あの、私の無効化の魔法って、発動された魔法だけに有効なんでしょうか…

その人が持っている魔法そのものを無効にすることは出来ないのかしら…」

エレナはふと思いついて言ってみた。

「…それは未知数だね。

だけど、仮にそれができるにしても、訓練して扱い方やコントロール法を身につけないことには、カトリーナを相手にすることは難しいと思う。

けど今はそれを待つ時間もない。

それに、訓練するにしても、人が持つ魔法が無効化されたかどうか、その成功を確かめるには相手が必要だ。

しかし、魔法はこの国にとって貴重なもの。

その実験に付き合ってくれる人はいないだろうから、その案は少し厳しいかもしれないね」

フェリスは思案しながら答えた。

「たしかにその通りね…
やっぱり魔女を探さないことにはどうしようもないのかしら…」

エレナは項垂れた。

「そうだな…」

4人とも、それきり黙って、書庫の文献に魔女の手がかりがないかもう一度探したが、結局何も見つからないままだった。


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