65 / 92
65話 フェリスの2度目の質問
しおりを挟む
食堂へ3人が戻ると、授業が始まるため、今はひっそりと静まり返り、誰も居なくなっていた。
「…遅かったか」
フェリスは焦った。
「一度教室に戻ろう」
そう言ったフェリスと共に3人はひとまず教室へ戻った。
次の休憩時間、3人はアークの座っている席へ行った。
案の定、フェリス以外には冷たい視線を向けてくる。
エレナは覚悟していたとはいえ、今回こそ何とかなるかもしれないと淡い期待をしていただけに、余計に胸が締め付けられた。
「兄上、少し試させて頂きたいことがありまして。今お時間を頂いても構いませんか?」
フェリスは出来るだけ刺激しないように言った。
「なんだ?」
「はい、実は先程聖女さまが教えてくださったことを実践させて頂きたいのです」
「おお、聖女カトリーナが、何を教えてくれたのだ?」
アークはフェリスの作戦に上手く食いついた。
「それは、…やってみてのお楽しみです。
あっ、これは僕ではなく、女性でないとできないそうなので、
兄上に触ってもいい女性は婚約者のエレナだけですから、エレナに試して貰いますね?」
「なんだ?まぁ…いいが」
あからさまに嫌そうな顔をされてエレナは悲しくなったが、マーガレットとフェリスが頑張るように目配せしてきたので、アークの方へ一歩前に出た。
「殿下、すみません、では失礼します」
そう言って、あの時マーガレットにしたのと同じように腕を握り、目を閉じると、心を込めて
助けて!
と祈った。
念押しに何度も助けて!と心の中で繰り返し、そっと目を開くと、フェリスに目くばせする。
それを合図にフェリスがアークに質問した。
「兄上?ではお聞きします。
聖女カトリーナさまは素晴らしい方で、みんなが大好きな方ですよね?」
「…何言ってるんだ?」
3人はその言葉に目を輝かせた。
「当たり前だろ?何したのか知らないが、それだけなら忙しいから、またにしてくれ。
俺はちょっと今日の生徒会のことで、カトリーナに会いに行って来る」
そう言ってさっさと席を立って、アークは教室を出て行ってしまった。
「…やっぱりダメだった…」
そう言ったエレナの目には涙が溜まっていた。
「大丈夫だよ、エレナ。僕が何とかするから。そのために僕はここにいるんだから」
「…えっ?」
「あっ、いや、何でもない。さぁ、エレナ、涙を拭いておいで?」
「…そうね、エレナ。一緒にお手洗いにでも行って、顔洗ってすっきりして、また作戦を練り直そう!負けてちゃだめよ!」
マーガレットは自分の恋を応援してくれたエレナの恋も成就してもらいたかった。
「さ、行きましょ!じゃあフェリス、ちょっと行って来るわね」
「ああ、頼んだよ」
そうしてエレナはマーガレットに手を引かれてお手洗いへ向かった。
「…遅かったか」
フェリスは焦った。
「一度教室に戻ろう」
そう言ったフェリスと共に3人はひとまず教室へ戻った。
次の休憩時間、3人はアークの座っている席へ行った。
案の定、フェリス以外には冷たい視線を向けてくる。
エレナは覚悟していたとはいえ、今回こそ何とかなるかもしれないと淡い期待をしていただけに、余計に胸が締め付けられた。
「兄上、少し試させて頂きたいことがありまして。今お時間を頂いても構いませんか?」
フェリスは出来るだけ刺激しないように言った。
「なんだ?」
「はい、実は先程聖女さまが教えてくださったことを実践させて頂きたいのです」
「おお、聖女カトリーナが、何を教えてくれたのだ?」
アークはフェリスの作戦に上手く食いついた。
「それは、…やってみてのお楽しみです。
あっ、これは僕ではなく、女性でないとできないそうなので、
兄上に触ってもいい女性は婚約者のエレナだけですから、エレナに試して貰いますね?」
「なんだ?まぁ…いいが」
あからさまに嫌そうな顔をされてエレナは悲しくなったが、マーガレットとフェリスが頑張るように目配せしてきたので、アークの方へ一歩前に出た。
「殿下、すみません、では失礼します」
そう言って、あの時マーガレットにしたのと同じように腕を握り、目を閉じると、心を込めて
助けて!
と祈った。
念押しに何度も助けて!と心の中で繰り返し、そっと目を開くと、フェリスに目くばせする。
それを合図にフェリスがアークに質問した。
「兄上?ではお聞きします。
聖女カトリーナさまは素晴らしい方で、みんなが大好きな方ですよね?」
「…何言ってるんだ?」
3人はその言葉に目を輝かせた。
「当たり前だろ?何したのか知らないが、それだけなら忙しいから、またにしてくれ。
俺はちょっと今日の生徒会のことで、カトリーナに会いに行って来る」
そう言ってさっさと席を立って、アークは教室を出て行ってしまった。
「…やっぱりダメだった…」
そう言ったエレナの目には涙が溜まっていた。
「大丈夫だよ、エレナ。僕が何とかするから。そのために僕はここにいるんだから」
「…えっ?」
「あっ、いや、何でもない。さぁ、エレナ、涙を拭いておいで?」
「…そうね、エレナ。一緒にお手洗いにでも行って、顔洗ってすっきりして、また作戦を練り直そう!負けてちゃだめよ!」
マーガレットは自分の恋を応援してくれたエレナの恋も成就してもらいたかった。
「さ、行きましょ!じゃあフェリス、ちょっと行って来るわね」
「ああ、頼んだよ」
そうしてエレナはマーガレットに手を引かれてお手洗いへ向かった。
0
お気に入りに追加
1,090
あなたにおすすめの小説
デブでブスの令嬢は英雄に求愛される
陸路りん
恋愛
元のタイトル『ジュリア様っ!』から変更して副題のみにしました。
デブでブスな令嬢ジュリア。「私に足りないのは美貌と愛嬌だけよ」と豪語し結婚などとは無縁で優秀な領主としての道をばく進する彼女に突如求婚してきたのは魔王殺しの英雄ルディ。はたしてこの求婚は本気のものなのか、なにか裏があるのか。ジュリアとルディの人生を賭けた攻防が始まる。
この作品はカクヨム、小説家になろうでも投稿させていただいています。
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
クリスティーヌの本当の幸せ
蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙桜可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
浮気されたので婚約破棄して、義弟と気ままに暮らしています。元婚約者が女性関係で困っているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、アルメネア・ラガンデ。とある王国に暮らす侯爵令嬢である。
ある時、私は婚約者の公爵令息が、伯爵家の令嬢と浮気しているのを目撃した。元々悪い噂が絶えない婚約者だったが、決定的な現場を見たため、私は我慢の限界を迎えた。婚約破棄することを決めたのである。
浮気について認めた婚約者だったが、婚約破棄は待って欲しいと懇願してきた。そこで、私は義弟であるイルディンとともに話し合うことになる。
色々と言い訳をしてくる婚約者だったが、イルディンの活躍により、その場は無事に収めることができた。
こうして、私の婚約破棄が成立したのである。
婚約破棄してから、私はイルディンとともに気ままな生活を送っていた。
そんな平和な日々の中、ある事件の知らせが入る。元婚約者が、毒を盛られたらしいのだ。
なんでも、様々な女性に手を出していたため、その中の一人が凶行に走ったらしい。
しかし、そんなことは私達には関係がなかった。彼の問題は、彼が片付ければいいだけである。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
【完結】愛されることを諦めた私に愛を教えてくれたのは、愛を知らない冷酷公爵様でした
るあか
恋愛
「出来損ないのあの子をあなたの代わりとして嫁がせましょ。あんなところに嫁いだら何をされるか分からないもの」
小国アーレンス王国は突如隣国シュナイダー帝国の侵略を受け、城を呆気なく制圧された。
アーレンス城を制圧したのは冷酷無慈悲な帝国の魔道将軍オスカー・シュナイダー公爵。
アーレンス王国は無条件降伏を受け入れ、帝国の支配下へと下る。
皇帝が戦利品として要求してきたのは、アーレンス王国第一王女エリーゼの身柄。皇帝の甥っ子であるオスカーのもとへ嫁がせるためであった。
だが、可愛い我が子をそんな非情な男のもとへなど嫁がせたくない第一王妃アーレンスは、第二王妃の子であるフローラをエリーゼの身代わりとして帝国に差し出すのであった。
⸺⸺
毎日虐められているにも関わらず、心優しく育ったフローラには、不思議な力があった。だがそれは誰にも気付かれることなく、彼女自身も無自覚であった。
そんなフローラがオスカーのもとへ嫁いだことで、アーレンス城には悲劇が起こることとなる。
一方で拷問覚悟で嫁いだフローラに待っていたのは……?
※エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる