【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

54話 大魔女

「ねぇ、もう一度頼みたいんだ」

死神フェリスは、また大魔女にエレナの死に戻りを頼みに来た。

「またかい？あんたいい加減やめないと、人間みたいな短い寿命になって本当に消えてなくなっちまうよ？」

「あとどれくらい残ってる？」

「ふーん、そうさなぁ…ちょいと触るよ？」

と言いながら、大魔女はフェリスの額に手をかざした。

「次やったら、ほんとにそろそろ人間と同じになっちまうな。

あたしの契約は、その時持ってる寿命の半分だからねえ。繰り返せばどんな長い寿命だろうといっぺんに大きな寿命が減っちまう。

どうする？それでもやりたいのかい？」

「ああ、もちろんだ。僕が心配してるのは、僕の寿命が無くなる前に、彼女を幸せにできるかどうかってことだけさ。

寿命が残り１日になるまで、ずっと半分でやってくれるなら、まだもう少し大丈夫ってことだろ？

安心した。じゃあ、頼む」

フェリスは美しく微笑んで大魔女を見た。

「馬鹿な奴だね、本当に。どうせならその女だけじゃなくて、あんたも幸せになりなよ？」

「ははっ、魔女の癖に優しいなぁ。ありがとう」

「やかましい。一言多いんだよ。じゃあやっとくから、寿命は遠慮なく頂くよ」

そう言って、またフェリスの額に手をかざした。

「ああ…あんたの寿命は本当に活きが良くて若返るようだ。じゃあ気をつけて行ってきな。そろそろ戻ってる頃だよ」

「ありがとう、じゃ、行ってくる」

そう言うと、フェリスの姿は跡形もなく消えた。

「不憫な子だね…。死神が人間に恋するなんざ、あってはならんことだわ、ほんとに」

大魔女はフェリスの居なくなった空間を見つめて、呆れたように首を横に振りながら、一人そう呟いた。