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51話 聖女の本音

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王の間でも会場の方でも、無事に婚約発表が終わり、エレナとフェリスは連れ立って会場の中を挨拶してまわっていた。

アークとカトリーナも同じように挨拶まわりをしているのが見える。


「エレナ?そろそろ休もう。疲れたろう?こっちへおいで」

と、フェリスは例の2人が見えない壁際にエレナを連れて行くと、飲み物を取ってくると言って、少し離れた。

「…エレナ様」

「カトリーナさん…」

壁にもたれて一息吐いていたエレナに、突然カトリーナが近寄ってきた。

「ねぇ、エレナ様?こんな風になったこと、恨まないでくださいね?別に私からお願いしたわけじゃないんですから」

カトリーナはまたニヤニヤしていた。

「ええ、恨んだりしないわ。お互い国を盛り立てられるように頑張りましょうね!」

エレナはもう吹っ切ろうとしていたし、言ったことは本当にそう思っていた。

しかし、カトリーナからは衝撃の答えが返ってきた。

「はぁ…ちょっといい子ぶり過ぎですよ?エレナ様?そういうの聞いてるとほんと鳥肌が立っちゃう。

あー、やだやだ。

本当に国のことなんて考えているんですか?建前なんていいんですよ?馬鹿らしい。

こんな王子との面倒な婚約なんて、

いい暮らしが一生できて、みんなに一番上からものが言えて、命令ができるってことだけがいいところでしょう?

ああ!でも王子たち、どっちもかっこいいし、それは本当に助かりますよね?」

そう言ってニコッと笑ったカトリーナに、エレナはわなわなと震えが止まらなくなった。

「カトリーナさん、…あなた、それ…まさか本気じゃないわよね?」

「え?もちろん本気ですよ?私は貧乏な男爵家の生活が嫌で嫌で、やっとここまで這い上がってきたんですから、これ以上の本気なんてないでしょ?」

と、ニヤリと笑った。

こんな人が王妃になってしまう…
そんな…
この国はどうなるの…

長年受けてきた王妃教育により、国を守ることを一番に教えられてきたエレナは、愕然として力が抜け、その場に座り込んでしまった。

「エレナ⁈」

飲み物を持って帰ってきたフェリスは、カトリーナの前で座り込むエレナを見つけると、青ざめて駆け寄った。

「…貴様、…エレナに何をした?」

カトリーナに何かされたと思ったフェリスは、鋭い目でカトリーナを睨み据えると、

周りに聞こえないよう、静かに、しかし凄みのある声で言った。

「フェリス殿下こわいですう。私何にもしてませんよ?お互い婚約できてよかったですねって話してただけですから!ね?エレナ様?」

と、座り込んでいるエレナに可愛いく言った。

「…消えろ。二度とエレナに近づくな!」

「はいはい、優しいアーク様のところに帰ろうっと」

悪びれもせずそういうと、カトリーナは軽い足取りでアークのそばへ戻って行った。
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