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38話 光魔法の女の子
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2年生になると、クラスは魔力量に応じてさらに細分化されたが、魔力量の増えたエレナは、アークが手を回さなくても同じクラスになれた。もちろんマーガレットもフェリスも一緒だ。
「みんな一緒で良かったな」
「ええ、本当に」
進級初日の朝、学園に着いたエレナとアークはそう言いながら教室に向かって廊下を歩いていると、
前から走ってくる女生徒が見えた。
さらにその後ろから走ってくる生徒たちが複数見えたので、何故かはわからないが、どうやら追いかけられていることだけはわかった。
「あっ、あのっ、すみませんっ、助けてください」
と、困った顔をしてその女生徒はアークの背中に素早く隠れる。
「エッ?何だ?」
とアークとエレナが驚いている間に、追いかけてきた生徒たちが近くまで来て話しかけてきた。
「あっ、殿下、おはようございます!殿下も聖女さまとお知り合いなんですか?さすがですね!
私たちも一度光魔法を見せて頂きたいと思い、声を掛けたら走って行かれてしまって」
それを聞いた女生徒はアークの背中からひょこっと顔を出すと、
「いくら珍しくても、私も人間なんです!追いかけられたら恐いんだから、やめてください!」
と、聖女と呼ばれたその女生徒は怒りながら言った。
アークはそのやり取りを聞いて、なるほど、と思い出す。
そうか…この子が以前魔法研究所の所長が言っていた光魔法を使える少女か
確かあの時、1年後からこの学園に入って来ると言っていたからな
事情を理解したアークは、追いかけてきた生徒たちに向かって真剣な顔をし、口を開いた。
「みんな、怯えている子を追いかけるのはどうかと思う。
光魔法が珍しい気持ちはわかるが、慌てずとも、これからの学園生活の中で見せて貰えることもあるだろう。
まずは生徒として仲良くなってからだ。
この子の気持ちを考えて行動することだな」
アークは追いかけて来た生徒たちを諭すように、王子らしく声を掛けると、みんな素直に、その通りですね、と納得して去って行った。
誰もいなくなったのを確認すると、その女生徒はアークとエレナの前に出てきて、
「あ、あの、ありがとうございます!
私、その、田舎貴族で殿下だと知らなくて、その、すみませんっ、失礼しましたっ」
と、逃げるように1年の教室棟に向かって走り去った。
「なんだ、あれは?」
「ふふっ、嵐のようでしたわね?
でも可愛らしい方で、光魔法を使うというのも頷けますわ」
去っていた女生徒は、
目がくりっと大きい、美人と言うよりは童顔のとても可愛らしい女の子だった。
肩の下まで伸ばした髪はふわふわの金色で、エレナは思わずルーカスを思い出し、触りたくなるくらい愛らしく思えた。
「そうか?エレナの方が何百倍も可愛いし、綺麗だぞ?」
本当のこと過ぎて、照れもせず当たり前のように言い放つアークに、エレナの方が照れて俯いた。
「それにしても光魔法の子か…
俺たちと同じ時代に生まれたなんて、有難いことだ。こっちも負けないように頑張って、共に国を盛り上げないとな」
「本当にそうですわね」
アークが目を輝かせて言ったのを見て、エレナも微笑み返す。
確かにいずれ王妃になる身としてこの国のことを思うと、光魔法の存在は嬉しく、本当に自分も共に頑張らないと、とエレナも意気込んだ。
「みんな一緒で良かったな」
「ええ、本当に」
進級初日の朝、学園に着いたエレナとアークはそう言いながら教室に向かって廊下を歩いていると、
前から走ってくる女生徒が見えた。
さらにその後ろから走ってくる生徒たちが複数見えたので、何故かはわからないが、どうやら追いかけられていることだけはわかった。
「あっ、あのっ、すみませんっ、助けてください」
と、困った顔をしてその女生徒はアークの背中に素早く隠れる。
「エッ?何だ?」
とアークとエレナが驚いている間に、追いかけてきた生徒たちが近くまで来て話しかけてきた。
「あっ、殿下、おはようございます!殿下も聖女さまとお知り合いなんですか?さすがですね!
私たちも一度光魔法を見せて頂きたいと思い、声を掛けたら走って行かれてしまって」
それを聞いた女生徒はアークの背中からひょこっと顔を出すと、
「いくら珍しくても、私も人間なんです!追いかけられたら恐いんだから、やめてください!」
と、聖女と呼ばれたその女生徒は怒りながら言った。
アークはそのやり取りを聞いて、なるほど、と思い出す。
そうか…この子が以前魔法研究所の所長が言っていた光魔法を使える少女か
確かあの時、1年後からこの学園に入って来ると言っていたからな
事情を理解したアークは、追いかけてきた生徒たちに向かって真剣な顔をし、口を開いた。
「みんな、怯えている子を追いかけるのはどうかと思う。
光魔法が珍しい気持ちはわかるが、慌てずとも、これからの学園生活の中で見せて貰えることもあるだろう。
まずは生徒として仲良くなってからだ。
この子の気持ちを考えて行動することだな」
アークは追いかけて来た生徒たちを諭すように、王子らしく声を掛けると、みんな素直に、その通りですね、と納得して去って行った。
誰もいなくなったのを確認すると、その女生徒はアークとエレナの前に出てきて、
「あ、あの、ありがとうございます!
私、その、田舎貴族で殿下だと知らなくて、その、すみませんっ、失礼しましたっ」
と、逃げるように1年の教室棟に向かって走り去った。
「なんだ、あれは?」
「ふふっ、嵐のようでしたわね?
でも可愛らしい方で、光魔法を使うというのも頷けますわ」
去っていた女生徒は、
目がくりっと大きい、美人と言うよりは童顔のとても可愛らしい女の子だった。
肩の下まで伸ばした髪はふわふわの金色で、エレナは思わずルーカスを思い出し、触りたくなるくらい愛らしく思えた。
「そうか?エレナの方が何百倍も可愛いし、綺麗だぞ?」
本当のこと過ぎて、照れもせず当たり前のように言い放つアークに、エレナの方が照れて俯いた。
「それにしても光魔法の子か…
俺たちと同じ時代に生まれたなんて、有難いことだ。こっちも負けないように頑張って、共に国を盛り上げないとな」
「本当にそうですわね」
アークが目を輝かせて言ったのを見て、エレナも微笑み返す。
確かにいずれ王妃になる身としてこの国のことを思うと、光魔法の存在は嬉しく、本当に自分も共に頑張らないと、とエレナも意気込んだ。
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