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20話 まさかのもう一体

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しかし、次の瞬間!

「ア、アーク様!う、上!上‼︎」

エレナがマーガレットと抱き合いながら青ざめて上を指差している。

アークは嫌な予感を覚えながら、上を見ると…

それより早く生徒の叫び声が聞こえた!

「もう一体いる⁉︎しかも、さっきのより大きくないか⁉︎」

アークは愕然とした。さっきの討伐でかなり魔力量を消費していたからだ。

魔法の中でも空全体を動かす雷魔法は特別に魔力量を大量消費してしまう。

全回復するには3日ほどかかるため、普通は最終手段にしか使わない。

しかし、多くの生徒を守るためと、力の測れない飛獣を前にして、やるしかなかった。

「まさか…もう一体…しかもあれよりでかいなんて…」

アークは青ざめた。

その絶望した様子が見えたフェリスは、強く鼓舞する。

「兄上!何とかするしかありません!

僕は兄上ほど消費していないので、まだやれます!

マーガレット!君、動けるかい?」

フェリスは飛獣を視界から逃さないように、横目でマーガレットを見ながら言った。

「はっ、はいぃ!」

エレナと一緒に抱き合っていたマーガレットは、急に呼ばれて慌てて気をつけの姿勢になる。

フェリスはそんなマーガレットを落ち着かせるために、優しく話した。

「怖いのにごめんね。
でも、今は君の魔力量が必要なんだ。

君は狙いを定めるのはまだ難しいかもしれない。だから、僕の風で運ぶから、

大きな火の塊を出してくれないか?

兄上の火と合わせて巨大な火の玉で飛獣を燃やし尽くす!」

「わっ、わかりました‼︎お任せください‼︎」

マーガレットはフェリスに頼りにされて、自分を奮い立たせた。

「いっ、いきますよ?本当に…全力でいきますからね⁈」

あの試験でのことが頭をよぎり、不安な顔をする。

「大丈夫、僕に任せて?」

と、フェリスは安心させるために優しく微笑んで言った。

その顔を見たマーガレットは、もうどうにでもなれと、力一杯全ての魔力を両手に込めて、

巨大な火柱を大放出させた!

その炎はこの丘全てを飲み込むほどの大きさで、生徒たちを恐怖させた。

フェリスは慌てて風で包むと、その巨大な炎を空へ移動させ、一塊りの火の玉に変える。

空が真っ赤に燃え、恐ろしいほどの熱を放った。

「兄上!」

「わかった!」

アークも両手を空に掲げて、その火の玉に自分の火を重ね、さらに大きくする。

「フェリス!これで最大だ!」

「わかりました!では!ぶつけます‼︎」

フェリスはそう叫ぶと、両手を飛獣に向かって動かす。それに伴って火の玉が飛獣へと進み、

巨大な火の玉は飛獣を丸呑みにした。

ギャオオオオオ…

と、飛獣は飛びながら燃え、

絶命すると大きな火の塊となって、燃え盛りながらすごいスピードで落下していく。

「エレナ!君の水も貸して‼︎」

「はっ、はい!」

エレナは慌ててフェリスが出す水に自分の水を重ねた。

フェリスはその膨大な量の水を飛獣に向かって放出し、飛獣から上がる火柱を包み込んだ。

眼下の地面に落ちる頃には、下の魔道士たちも水魔法で消火に加わり、

火が完全に鎮火すると、水浸しになった飛獣が黒焦げになって地面に横たわった。

それを見た、高台の生徒たちも下の魔道士たちも、

わあああ!やったー!

と、抱き合いながら大歓声を上げた。


アークとフェリスは辺りをきょろきょろとし、他にも魔物が来ないか確認して、

もう大丈夫だとわかると、生徒たちと一緒に喜んだ。


魔力を使い果たしたマーガレットとエレナは歩けなくなり、

アークはエレナを、フェリスはマーガレットをおぶって、

逃げた生徒たちも無事戻ると、全員下山し、残りの行程を取り止めて、一度合宿所に戻った。

その後、生徒たちの精神的にこれ以上の合宿は続行不可能ということになり、

このクラスの合宿はここで打ち切りになって、各自帰る事となった。

この大事件は瞬く間に国中に知れ渡り、

飛獣についての研究を進めると同時に、討伐方法を他国に視察に行くなど、警戒体勢を敷いたが、

それから飛獣が来ることは二度となかった。

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