【完結】魔女のおしごと

64話 両方とも

その夜、昨日の事を何と言おうかと、ドキドキしながら、ミラはカーティスに連絡を取った。

赤いブローチをギュッと握りしめると、ミラはカーティスを頭の中で呼ぶ。

ミラ:  ……カーティス様？…聞こえますか？

カーティ:  ああ、ミラ、大丈夫か？昨日はどうした？どこか具合でも悪いのか？

ミラ:  いえ、大丈夫です。ご心配くださってありがとうございます。それが、隣国へ渡る船で、疲れて…その寝てしまいました。


ミラは初めてカーティスに嘘を吐いた。


カーティ:  そうか。無理しなくていい。今はもう大丈夫なのか？

ミラ:  はい。それに、収穫もありました。あの信仰の権化の司教に会って話す機会があり、考えを聞くことができました。

カーティ:  おお！そうか。よくやった、ミラ！どうだ？聖女側とぶつけられそうか？

ミラ:  それは…その、…良い案を今考え中でして。
…その、今回の旅で火をつけられるかはわかりませんが、…努力はしてみます。

カーティ:  ああ、そうしてくれ。
あっ、…ああ、それと！…そっちの旅はいつ終わる？…こっちにはいつ来れそうだ？

ミラ:  あと数日行程が残っていますね。
それからまた帰りの船がありますから、あと10日ほどでしょうか？

カーティ:  10日も⁈

ミラ:  すみません…

カーティ:  …いや、いい。

ミラ:  カーティス様。つかぬ事をお聞きしますが…カーティス様は恋や愛をご存知ですか？

カーティ:  はっ⁈なっ、何だ、突然⁈しっ、知らん、そんなものは！俺は魔王だぞ？愛も恋も知らない魔界人のさらにその頂点の魔王だぞ？…知るはず、ないだろう。

ミラ:  …そうですよね

カーティ:  なんだ？急に。お前は知ってるとでも言うのか⁇

ミラ:  …わかりません。

カーティ:  (なんだ？今の間は？)お前、俺に会いたいか？

ミラ:  はい、もちろんです。

カーティ:  そういうことだろ？

ミラ:  …え？…あの、カーティス様、私今ちょっと混乱しているのですが…

例えば、守られるのと守りたいのとでは、どちらが愛だと思われますか？

カーティ:  …どちらも愛なんじゃないのか？
しかし、愛は愛でも、愛されると愛するということの違いなのではないか？
まぁ、よくわからんがな？
両方揃うのが一番いいんじゃないか？

ミラ:  カーティス様はやっぱりすごいですね…よく…分かりました…ありがとうございました…

カーティ:  ミラ？

ミラ: …

カーティ:  はぁ…何なんだ、勝手に喋って勝手に切って…



ミラは連絡を切って、少し整理したかった。

守られるは愛されている
守りたいは愛している

つまり、…私はカーティス様に…愛されていたの？

魔界を守るための力として欲されていたのではなく？

カーティス様は……私を愛しているの？

でも、…私は？

私が守りたいのは…アレス。
つまり、愛しているのは…アレス？

アレスも私を守ってくれる。
好きだとも言ってくれて、愛されているのだとよく分かる。

カーティス様はおっしゃった。

『両方揃うのが一番いい』と。

…私とアレスは…両方揃っている。