【完結】魔女のおしごと

かまり

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60話 侍女のサプライズ

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アレスは部屋に入ったのに、扉の辺りで立ち止まったまま近づいて来ない。

入り口で立ったままで、どうしたんだろうとミラから近づいて行くと、アレスは後退りした。

「?どうされましたか?逃げたくなるほど…変でしたか?あまり着たことのない形だと言ったんですが…やはりダメでしたよね…」

ミラは初めて自分の着ているものが気になった。

初めて、好きな人に気に入って貰いたいと思った。

だからアレスの反応がショックで、軽く項垂れる。

「あっ、ごっ、ごめんっ、違う…逆なんだ…

あの、あんまり綺麗で、その、あの、あー!そのドレスまずいよ!」

アレスが扉に張り付いて動揺している。

それもそのはず、ミラはその体のラインが全てわかるマーメイドドレスを着せられていた。

少し落ち着いた海の青で。そこにはアレスの瞳の色に包まれた艶めかしいミラの体があった。

女性から見れば、本当に美しい女神のような存在を思い浮かべるのだろうが、

男性はその体のラインから、ついその裸体を想像してしまう、とても危険なドレスだった。

なんだ、ミリア…そのドレスは⁈
僕を試してるのか⁇
そんなに…胸があったなんて…
細い腰とのギャップがすごくて…
だめだ!まずい!見ちゃダメだ!
違うことを考えよう…
えーと、なんだ?何か何か…

うわっ、こっちに近づいて来る!

しかし、その動揺の意味は汲み取られることなく、ミラが悲しそうな顔をしたので、慌ててアレスはそっと抱きしめた。

「ねぇ、…このドレスで本当にみんなの前に出るの?」

アレスは抱きしめることで、自分の視界からミラの姿を外しながら聞いた。

「…ええ、用意されたものですから、お断りするのも失礼かと…」

「そうだよね…仕方ない…よね」

「そんなに変でしたか?…すみません、一緒に歩きたくないですよね…」

「…違うんだよ。綺麗過ぎて困ってるんだよ。僕が独り占めできるなら、いつまででも見ていたいよ。困ったなぁ…」

「アレスはこの姿好きですか?」

「……うん、すごく…。綺麗過ぎてびっくりした…」

「ふふっ、よかった。アレスが気に入ってくれたのなら、それでいいです。では、参りましょうか。晩餐会、遅れてはいけませんものね?」

アレスに褒められて、ミラの表情は明るくなった。

反対にアレスは会場に入るなり、護衛騎士のように険しく目を光らせて、ミラへの目線を追い払った。
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