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57話 それは愛?
しおりを挟む「大丈夫かい?ミリア…?」
背中をさすりながら、アレスは心配そうにミラの顔を覗き込んだ。
「…はい、すみません。ご迷惑をおかけしてしまって…」
止まらなくなってしまった涙にミラも困っていた。
アレスはふわりとそんなミラを抱きしめた。
「大丈夫、迷惑なんかじゃないよ。僕にそんな感情を見せてくれて、嬉しいくらいなんだよ?…泣きたい時は泣いてもいいんだから、気にしないでいっぱい泣けばいい」
そう言って抱きしめながら、ミラの頭をそっと撫でる。
「ほら、こうしてれば、泣き顔も見えないし、遠慮はいらないよ?僕も君を抱きしめられて嬉しいしね」
そうアレスは明るく言うと、ミラは泣きながら、ふふっと笑った。
「アレス、私あなたが好きなのかもしれません。わからないけど、これが好きということなのかもしれません…」
自然と口に出している自分に驚きながらも続けた。
「わからないんです…本当に。だから自分の気持ちに困っていて。
そしたら涙が勝手に出てきて…
ごめんなさい…」
「いいんだよ。教えてくれてありがとう。
ミリア?
君はもしかして今まで恋をしたことはない?
…僕も実は君が初恋相手だから偉そうなことは言えないけど…
自分で自分の気持ちがわからなくて、どうしたらいいか困ってしまうよね。
でもきっと、今のミリアのようにどうしようもなく泣いてしまうような、そんな気持ちがそうなのかもしれない。
でも、心配してここまで来てくれたってことは、君は僕を愛しく思って、大事にしようとしてくれたんじゃないかな。
それはね、ミリア?僕がミリアに思う気持ちと同じだ。
同じだと…思う」
アレスの頬に涙が一筋伝った。
何とも思われていないところから始まった。
いつか振り向かせたいと頑張っても頑張っても空振りで…
自分を見る目はいつも無表情。
もうダメなのかと思い始めていた。
自分を好きになってくれなくても、それでもそばにいて欲しくて、婚約解消なんてしたくなかった。
でも、自分を好きじゃないなら、自由にしてあげないといけないだろうと、自分を責める自分もいた。
葛藤の中毎日苦しんでいた。
でも!ミリアが自分のことを心配して、自分からここまで来てくれた。
自分のところへこんな時間にわざわざ足を運んでくれた!
これが愛じゃなければなんだ?
愛だ…これは…
そう思うと、アレスの目に溜まった涙がまた頬を伝った。
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