【完結】魔女のおしごと

かまり

文字の大きさ
上 下
57 / 80

57話 それは愛?

しおりを挟む

「大丈夫かい?ミリア…?」

背中をさすりながら、アレスは心配そうにミラの顔を覗き込んだ。

「…はい、すみません。ご迷惑をおかけしてしまって…」

止まらなくなってしまった涙にミラも困っていた。

アレスはふわりとそんなミラを抱きしめた。

「大丈夫、迷惑なんかじゃないよ。僕にそんな感情を見せてくれて、嬉しいくらいなんだよ?…泣きたい時は泣いてもいいんだから、気にしないでいっぱい泣けばいい」

そう言って抱きしめながら、ミラの頭をそっと撫でる。

「ほら、こうしてれば、泣き顔も見えないし、遠慮はいらないよ?僕も君を抱きしめられて嬉しいしね」

そうアレスは明るく言うと、ミラは泣きながら、ふふっと笑った。

「アレス、私あなたが好きなのかもしれません。わからないけど、これが好きということなのかもしれません…」

自然と口に出している自分に驚きながらも続けた。

「わからないんです…本当に。だから自分の気持ちに困っていて。

そしたら涙が勝手に出てきて…

ごめんなさい…」

「いいんだよ。教えてくれてありがとう。

ミリア?

君はもしかして今まで恋をしたことはない?

…僕も実は君が初恋相手だから偉そうなことは言えないけど…

自分で自分の気持ちがわからなくて、どうしたらいいか困ってしまうよね。

でもきっと、今のミリアのようにどうしようもなく泣いてしまうような、そんな気持ちがそうなのかもしれない。

でも、心配してここまで来てくれたってことは、君は僕を愛しく思って、大事にしようとしてくれたんじゃないかな。

それはね、ミリア?僕がミリアに思う気持ちと同じだ。

同じだと…思う」

アレスの頬に涙が一筋伝った。

何とも思われていないところから始まった。
いつか振り向かせたいと頑張っても頑張っても空振りで…
自分を見る目はいつも無表情。
もうダメなのかと思い始めていた。
自分を好きになってくれなくても、それでもそばにいて欲しくて、婚約解消なんてしたくなかった。
でも、自分を好きじゃないなら、自由にしてあげないといけないだろうと、自分を責める自分もいた。
葛藤の中毎日苦しんでいた。
でも!ミリアが自分のことを心配して、自分からここまで来てくれた。
自分のところへこんな時間にわざわざ足を運んでくれた!
これが愛じゃなければなんだ?
愛だ…これは…

そう思うと、アレスの目に溜まった涙がまた頬を伝った。
しおりを挟む

処理中です...