【完結】魔女のおしごと

かまり

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48話 奇跡の聖女

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「皆、よく聞け!

この度、このエストリア王国に、素晴らしい幸運が訪れた!

皆の病を治す力を持つ、聖女様が我が国にはいらっしゃったのだ!

その聖女様こそが、こちらのミリア殿だ!

ミリア殿は、貴賤問わず金銭も受け取らず、皆を苦しみから救いたいとお思いだ。

これから、ミリア殿は各地を周り、全ての民を癒やしてくださるだろう!

そして、この国の宝は、我が息子第一王子アレスフォード=エストリアと婚約し、

いずれは王妃となってこの国の母となり、その力を惜しみなく使ってくださる運びとなった!

その方こそが、今私の横に立つこの方だ!」

エストリア国王ウィリアムは、自分の横に立っていたミラを、国民に聖女として公表した。

ミラは純白の上質だが飾り気は少ないドレスに身を包み、そのカーティスに変えてもらった金色の髪は、太陽の光を受けて煌めき、まさに聖女といった様相で、見る物を圧倒する。

アレスに手を引かれて2人で一歩前に出ると

「さあ、ミリア、みんなに手を振ってあげて?」

とアレスは微笑んでミラに言った。
そのあとすぐ自分が先に手を振ってみせると、それに倣って後からミラも手を振る。

その瞬間、大勢の国民の大歓声が湧き上がり、喜びの渦に包まれていた。

「聖女様バンザイ!」
「ミリア様バンザイ!」


…本当にこの方たちは、何にもわかっていないですね…
嬉しいのはこちらの方なのに。
あなたたち家畜に長生きしてもらって、
一番嬉しいのは魔界人なんですから…


ミラはその大歓声を冷ややかに見つめながらそう思っていた。

「ミリア、みんな喜んでるね。これから僕たちは、ここにいる人たち、この国の人たちをずっと守っていかなければならない。
大変だけど、一緒に頑張ろうね?」

アレスは優しい笑顔でミラを見た。

「はい、頑張りましょう!」

と、ミラも微笑んだ。意味は違えど、多分ミラはアレスよりも強く、国民を、嫌、全ての人間を救いたいと思っていた。


———それから間もなく、婚約式も無事終えると、ミラはいよいよ聖女として、王子の婚約者として、エストリア国の中枢へと近づいていく…

ミラはまず、国内の各地を巡業し、治らない病に苦しむ者を次から次へと回復させていくと、一巡する頃には皮肉なことに『奇跡の聖女』と呼ばれるようになっていた。
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