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29話 どうでもいい
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と、ミラは戸から顔を出した。
待合にいた2人はそれを見てすぐに立ち上がり、近づいていく。
「お待たせしました。診察も準備も終わりましたので、いつでもお伺いできます」
「お疲れのところ申し訳ありません。ではよろしくお願いします」
とアレスが言うと、
セラフィはミラが持っている手荷物を、お預かりします、と言って自分が持ち、すぐに扉へ向かって行った。
「では、参りましょうか?ミリア」
そう微笑むと、アレスは手を差し出してミリアをエスコートしようとする。
これは…
貴族のエスコートですね?
ということはこの方たちは町人の格好をしているけれど、貴族?
確かに身のこなしは綺麗だし、
2人とも整った顔立ち。
この、アレスという男は特に美しい顔で、艶めいた銀髪に青い目。
もう1人は少し体が大きくて、赤い髪に茶色い目。
町人にしてはどちらも珍しい見た目ね。
もし貴族なら、大物だったら入り込む相手に丁度いいんですけれど。
ミラはそう思いながら、カーティスに教わったエスコートをされた時の歩き方を思い出し、手をアレスの手に添えて上品に歩いて外へ出た。
外へ出ると、馬が2頭、木に繋がれていた。
「ごめんね、ミリア。急いで来たから、馬車じゃないんだ。
どちらかの馬に2人乗りで一緒に乗って貰いたい。
どっちがいい?」
と、アレスは自信満々気にウインクした。
アレスの美しさは神がかっている。
こういう時にはいつも選ばれる側の人間なんだろう、とミリアは思った。
しかし、ミリアにとってはどうでもいいこと。
見た目がどうであれ、人間は所詮家畜なのだ。
人間の中に、この牛さんカッコいい!きゃー!となる人は一体どれくらいいるだろうか。
それと同じ事なのだ。だから、
「どちらでも構いません」
と、ミラは無表情で答えた。
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