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28話 不思議な薬の作り方
しおりを挟むセラフィが戸をノックすると
「はい、どうぞお入りください」
と、若い女性の声がした。
ガチャ
と開けて2人は中へ入ると、20歳になるかならないかくらいの、美しい女性が椅子に座って迎えてくれた。
「どうぞ、こちらへおかけになってください。もしどこかお辛ければ、そちらのベッドへ横になって頂いても構いませんよ?」
そう言って微笑みながら可愛いらしく小首を傾げると、
金色のサラサラの髪がハラリと質素なワンピースの肩にかかる。
その髪は質素なワンピースを上質なものと思わせるほど、美しい髪だった。
2人は見惚れて呆然と立ち尽くしてしまった。
「あの?大丈夫でしょうか?どこかご気分でも?」
「あっ、いえっ、あっ!アレス様!早くお座りください!」
「ああ、はいはい、セラフィってば、そう怒らないでよ?可愛くて見惚れちゃっただけなんだから。ね?」
と彼女を見ながら微笑んで、示された長椅子に腰掛けた。
「君もだろう?」
アレスは意地悪そうな目でセラフィを見た。
「い、いやっ、そのっ」
「いいから、早くこっちに座って?」
アレスは慌てるセラフィを隣に座らせた。
「お2人は今日はどうされましたか?」
何事もなかったかのように、彼女は質問する。
「先生…とお呼びすれば良いですか?」
「いえ、私のことはミリアとお呼びください。
他の皆さまも、そう呼んでくださってます」
「では、ミリア。あなたはどうやって患者さんを治しているのでしょう?
待っていた患者たちは、皆、一様にすっかり治っていたように見えましたが…」
「ええ、そうですね。知らない方は不思議で奇妙ですよね。
私は皆さんをお薬で治しています。ですが、このお薬は私にしか作れません。
自分でもよくわからないのですが、手をかざすと光が出て、それを薬に混ぜると、その患者さんに合った薬ができるのです。
皆さん最初は気味悪がられますが、いざ治ってみると、噂が広まったのか、このようにたくさんの人が集まるようになってしまって…」
と、少し困った顔をした。
「そうでしたか。それはすごいお力をお持ちなのですね。
ぜひ、そのお力をお借りして、治して頂きたい人がいるのですが…」
「ええ、そちらの方でしょうか?」
と、ミリアはセラフィを見た。
セラフィはぶんぶんと首を横に振る。
「ああ、私たち2人は問題ないんだけどね、
家にいる父を助けて貰いたいんだ。
ここへ来られないんだけど、もしよかったら家まで来てもらうことは出来ないかな?」
アレスは首を振るセラフィを見て少し微笑んでから、事情を説明した。
「ええ、今日の患者さんを全員見終わった後でよろしければ構いませんよ?
もし遠いのでしたら、支度をしたいのでお待ち頂きたいのですが」
「ああ、それなら、ここから3時間くらいなんだけど、終わった後からだと夜になってしまうから、泊まってもらわないといけないかもしれないね。
君の仕事道具以外、身の回りの準備ならこちらでできるから、身支度は簡単にで大丈夫だよ?」
ミラは、泊まるのか…
カーティス様に会えないなぁ
断ろうかな…
と思いながらも、仕事!仕事!と内心、頭を振って、カーティスへの気持ちを打ち消した。
「わかりました。では、また診察が終わりましたらお呼びしますね」
「ああ、お願いするよ」
そう言って、2人はまた先程の待合へ戻って長椅子に座った。
「…不思議な話だな」
と、セラフィは腕組みしながら難しい顔をして呟いた。まだ信じられないらしい。
「うん、本当にね。でもそれが本当で父が治るなら儲けものだよ。」
アレスはそれが嘘か本当かわからないけど、本当だった時にはとても有難いことだから、前向きに考えていた。
「間違いない」
セラフィもその考えに賛同した。
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