【完結】魔女のおしごと

かまり

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20話 別の部屋

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ミラは、自室になる部屋の案内が終わったあと、

また違う部屋に通された。

扉から一歩入ると、リカルドが、

「では、私はここでお待ちしておりますね。

中にカーティス様がおられますから、大丈夫ですよ」

と、扉の前から優しく微笑んで安心させてくれた。


今度はとても不思議な部屋で、

暗いけれど、天井も壁も床まで、

至る所が星のように小さく光っていて、

プラネタリウムのようにどこか落ち着く不思議な部屋だった。

そこには言われた通り、カーティスが先に居て、

中にあるソファにゆったりと座っていた。

カーティスの体の周りは紫のオーラのようなもので包まれていたので、暗くてもよく見えた。

「ミィ、部屋は問題なかったか?」

ミラが入ってきたのに気づいて、カーティスは声をかけた。


「はいっ、あの、本当にあんなにいいお部屋を私のような魔女が使わせて頂いても良いのですか?」

「ような、じゃない。お前だから使えるんだ。自分を卑下するな。気にせず使え」

「あ、ありがとうございます」


リカルド様からカーティス様のことを聞いたおかげか、なんだかこの口調が全く恐くなくなってしまいました…

むしろその言葉の裏の、心配してくださる気持ちが少しわかるような…ふふっ

たぶん本当にお優しい方なのでしょうね。


そう思ったミラは、少し口の端が緩んでしまう。

「ミィ、こっちへ来い」

そう言うと、カーティスのところまでの足元が、ボゥッと白く照らされ、歩きやすくなる。

「これならお前でも大丈夫だろう」

「はい、ありがとうございます」

やっぱり優しい…

そう思うと、少し落ち着いて話せるようになった。

カーティスの座るソファの近くまで行くと、

「お前もここに座れ」

と言われたので、

「…はい、失礼します」

と言って、言われた通りにミラは隣に座る。

「あの、ここはなんですか?とても穏やかな空間ですね?」

キョロキョロしながら、部屋に入ってからずっと気になっていたことをミラは聞いてみた。

たぶん、この方なら、自分から話しかけても大丈夫かもしれない、と少し安心したのもあった。

「ああ、ここはな、俺の食堂みたいなものだ。これからはお前もここで一緒に摂るといい。

ここの空間にはマイナスエネルギーが蓄えられていて、いつでも供給できるようになっている。

俺の体がこの暗い空間なら光っているように見えるだろう?

それが満たされている証拠だ。

お前はエネルギーがかなり不足しているようだから、しっかり摂っておけ。

このソファに座ってじっとしていれば吸収できる。

自分の体が光ってきたら完了だ」

「すっ、すごいです!こんなお部屋があるなんて!エネルギーは普通ドリンクタイプで、飲むと吸収できるものなのに、

こんな、座っているだけだなんて…」

「面白いだろ?この魔王城にいる魔神の中に、開発能力に優れたものがいてな。

いろいろ要らないものも作るから困ってはいるが、たまにこういう使えるのができるんだ。

この空間はエネルギーの吸収だけでなく、

精神の浄化なども一緒にされる優れもので、仕事に疲れた時はけっこう助かってる」

そんな話を聞いている間にも、少しずつ足先の方から光り始めてきた。

ミラはそれが面白くて、ワクワクしながら全身が光るのを待った。
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