【完結】魔女のおしごと

かまり

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19話 優しい人は誰?

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その扉をリカルドが開けると、

とにかく広い研究室のような場所が眼前に広がった。


「あ、あの?こちらは?」


「はい、こちらはミラ様がお薬を調合なさる時のための研究室ですよ。

ご自由にお使いください。  

それから、ミラ様の家にあった物は全て棚に仕舞っていますから、またゆっくりご確認ください。

足りないものがあれば取り寄せますから、

なんでもおっしゃってくださいね?」


小首を少し傾げながら、ニッコリ微笑んだリカルドを見て、

こんなに優しい人がいるんだと、

ミラは部屋にも驚いたが、何よりそのことに驚いていた。


ぼうっとリカルドの笑顔を見ていたミラに


「どうかなさいましたか?」


と不安気な顔で聞かれてしまったので、

慌てて本当のことを言ってしまう。


「あっ、あの、こんなにお優しくして頂いたのは、初めてなものですから。

少し驚いてしまいました」


「ふふっ。私は優しくないですよ?

腹黒ですからお気をつけください」


ニコッと笑いながら、本当とも冗談ともとれるような言い方に、ミラは目を丸くしたが、

腹黒と言うにはあまりに邪気のない笑顔なので、

絶対この魔神さんなりの照れ隠しの嘘だと思うと、


「…ふふっ」


と、少し笑ってしまい、


「あっ、すみませんっ」


と、失礼な事をしたと思い、慌てて謝った。


「大丈夫ですよ?どんどん笑ってください!

楽しく生きなくちゃ、長~い寿命なんですから!…ね?」


と、リカルドはパチリとウインクする。


「それに」


と続けると、


「私なんかよりよっぽど優しい方が、

あなたのお側にはいらっしゃっいますよ?」


「?」


「ふふっ、不器用ですからねー

わかりにくいのが残念なお方です」


ニコッとして小首を傾げる。ちっとも残念そうには見えない。

これが腹黒?とミラはちょっと思った。


「あっ…、もしかして、カーティス様ですか?」


ここまでの行動は、言葉や態度はぶっきらぼうだったけど、

私が嫌がるようなことはしていない…

ううん、むしろ気遣ってくださっていたような…


「ふふ、あたりです。

あの方は本当に照れ屋で、言葉はひどいですが、

いつも魔界や魔界人のことを考えていらっしゃる、

実はとても心根の深い方なのですよ。

この魔王城でも、とても信頼の厚い方なんです。あれでもね?

伝わりづらいのが玉に瑕なのですが。

この部屋の準備をしたのも、カーティス様の指導の元ですからね?

お気に召して頂けましたか?…ふふっ」

と、準備に奮闘するカーティスのことを思い出して、

リカルドは少し微笑ましそうに笑った。
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