80 / 82
80話 この国では…違う
しおりを挟む「ねぇ、アリア?」
「なぁに?」
仕事終わりにアリアの自室に寄ったルシードは、
ソファに座るアリアの膝に頭を置いて寝そべっていた。
アリアは、そのサラサラした黒髪を、愛しそうに撫でながら聞き返す。
「何かマルシェに教えたの?」
「何を?」
「さあ?それがよくわからないんだけど、
何か、クロード様がアリアに礼を言っといてほしいって言ってたから。
結婚して湯浴みすればわかる、とか?
あとは、アリアの国の文化はすごい、とか?
何?その文化って、どんなの?
何かすごく素晴らしいって、クロード様がぼーっとしながら言ってたから、どんなにすごいのか…すごく…気になって…」
アリアの太腿の柔らかさと温かさに包まれて、
その上頭まで触られて気持ち良くなったルシードは、質問しながらうとうとし始めた。
ふふっ、疲れてるのね?
なんだか、懐いた黒猫みたいで可愛い。
そう思って、アリアはルシードを見つめながら優しく微笑んだ。
それにしても…
なんのことかしら?
結婚して湯浴みすればわかる…?
マルシェが初夜についてどうしたらいいか聞いてきたアレかしら?
私もこの世界の初夜のことまではよくわからないけど、
みんな人間やることは同じでしょって思って、日本人だった記憶で教えたのが、
何かこっちと違うところがあったってこと?
「…えっと、結婚して湯浴みと言えば、
一緒に湯浴みするってことでしょ?
何か、違ってた?」
自分がその日を迎えた時に間違えたくないので、思い当たることを聞いてみた。
ガバッ
「⁈⁈⁈一緒に入る⁈湯に⁈一緒に⁈裸で⁈」
眠りかけていたルシードは、一気に目が覚め、
あまりのことに起き上がって、アリアに向き直って聞いた。
「ええ、そうよ?」
日本だと、結婚すればよくあることだし、結婚前からでもよくあることでしょ?と思っていたが、あまりの反応に自信がなくなり、アリアは聞き返した。
「…違った?」
そういうことか‼︎クロード様‼︎
…やったんですね?
この国では絶対やらない、それを。
マルシェと⁈
一瞬ルシードの目は吊り上がる
しかし、次の瞬間はっとして、何か気づいた目に変わった。
ちょっと待て?
今アリアに、この国ではそんな事しないなんて教えたら、俺たちはどうなる?
何でかはわからないけど、アリアはそれを当たり前だと思ってるんだ。だったら…
……当たり前のままにしておこう…
うん、…絶対それ、当たり前がいい……
まずい…想像したらだめだ。…落ち着け…
「…いや、あってる。全くその通りだ。
クロード様は何をおっしゃってたんだろうな?
また詳しく聞いておくよ。
ごめんごめん、もう忘れて。」
ルシードの目の奥が怪しく光っていることにアリアは気づかなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
188
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる