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68話 戦禍の中の光

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それを聞いた群衆は、

おおおおお‼︎‼︎

と、唸り声を上げて、その言葉に応えた。

この国の人たちの、王に対する心からの叫び。

皆クロードに王になって貰いたい一心で戦っている。

これは、ルシードとアリアを助けるためだけの問題ではないのだとアリアは気づいた。

そうだ!

このクーデターの組織は、そもそもクロードがガルティア国へ薬を売りに来る前から少しずつ大きくなっていたような話だった。

クロードは、ずっと前からこれを計画していたのだ。

そして、時を待っていた…

確実に倒せるまで力を蓄えて…

獲物を狩る時を、…静かに待っていたのだ。

だとしたら、もうアリアになす術はなかった。

クロードは覚悟している。

わからないが、

たぶん、もうずっと長い間。


アリアはクロードの姿を見届けようと、

誰も居なくなったバルコニーから、部屋の中へ戻り、

王とクロードを探した…


王宮の中をクロードを探して歩くが、

後ろ手に縛られているのと、

泣きながらで前が見え辛いのとで、

早く歩けずに、モタモタとしていた時、


「アリア‼︎」


と後ろから声をかけられ、ビクッとしたが、

その声が誰のものかすぐにわかり、

安心して振り向いた…


振り向くと同時に強く抱きしめられ、

例えようのない安心感が体中を駆け巡る。


「ルシード様!…無事だったのね…っく、ひっく」


「ああ、ああ、大丈夫、ここにいるよ」


ルシードはそう言って、泣きじゃくるアリアを抱きしめながら、

小刀で手首の縄を切り、その戒めを解く。


放たれた手で、すぐアリアもルシードに抱きついた。


「よかった、よかった…」


アリアはそう言うと、力が抜けそうになったが、

クロードのことを思うと、ここで力を抜くわけにはいかないと、奮い立った。


「ルシード…様!ク…っクロード様がっ!」


泣きじゃくりながら必死にアリアは伝えようとした。


「ああ、わかってる。

これを兄上が準備していたとはな……

情けないことに、ずっと一緒にいたはずなのに全く知らなかった…

とにかく、王と兄上のところへ急ごう!

たぶん玉座の間にいるだろう!」

そう言うと、ルシードはアリアの手を引いて、玉座の間へと向かった。

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