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52話 大勝利

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クロードが王に説得に行くと言った夜、

どうなるのか不安で眠れずに、

アリアはベッドの上で何度も寝返りを打ちながら、色々考えていた。


どうなっちゃうのかなぁ


私がガルティアからの派遣宰相だからこそ、

こっそり自分の店をガルティアに出すことができるけど、

もし宰相をクビになって、ルシードが結婚してくれても、こっちの国の人間になってしまったら、

ガルティアに出店できなくなっちゃうんじゃ…

こっちの国はまだ貴族もそんなに裕福とまではいかないから、

湯水のように散財してドレスを買ってくれる貴族は少ないはず…

ガルティアで出店できないと意味ないのよね…

うーん…

ルシードったら!ほんとに、どうするのよ!


そんなことを思っていた時、


コンコン


と、静かなノックの音がして、身構える。


今は寝る前だから、男装もしていない。

急いで、男装の準備をしかかると、


「ルシードだ」


と、アリアが慌てて男装しなくていいようにすぐ教えてくれたので、

安心して扉を開ける。


ガチャリ


と、そっと扉を開けて、ルシードが入ってきた。


ルシードはアリアを見たとたん、我慢できずに、そっと抱きしめる。


「ルシード…どうしたの?」


驚いたアリアは、抱きついている胸を少し押し返しながら聞いた。


「いいから…もう少しこうさせて」


ルシードは押し返せないように、もっと強く抱きしめる。


「ふふっ、ルシードってけっこうかわいいわよね」


ルシードは21歳、アリアは18歳

でもアリアの中身には28歳だった前世の記憶も入っている。

21歳のカッコいい男の子が甘えて抱きついてきたら、とにかく可愛くてたまらないのだ。


アリアは思わずそっと頭を撫でると、


「君の方が年下なのに、俺を子供扱い?」


そう言ったルシードはちょっと悪い目でアリアを睨み、

そのまま私の唇を奪う。


「ぅゔっ、うぅ」


と、一瞬もがいて、『やめて』と言いたくて口を開けると、

ルシードはその隙に舌を滑り込ませて、深いキスに変わる。

アリアの口の中は蹂躙され、力がぬけて、その場に座り込んでしまった。


「ふふっ、ごめんごめん。君がからかうからだよ」


と、アリアを横抱きに抱え上げ、額にそっとキスすると、ベッドに優しく寝かせた。

アリアはベッドに連れてこられてしまって、身を固くした。


「大丈夫、何もしないから、こわがらないで」


身を固くされてしまったのを見て、

ルシードは困ったような笑顔で言った。


「…もう…したじゃない」


と、アリアはルシードを小さく睨んだが、

逆に煽ってしまったのか、また軽くキスされた。


「これのこと?」


と、ルシードは意地悪く微笑んだ。


口を手で塞ぐアリアを見て、

ルシードはクスクス笑って頭を撫でる。


「ほんとに可愛いね、アリア。

…ほんとはね、明日クロード様からお話があるはずなんだけど、

アリアは早く聞きたいと思っているだろうから、教えてあげたくて。

まぁ、君に会いに来るための口実だけどね」


と、ルシードは軽くウインクする。


何を教えてくれるんだろうと、

気になって見つめるアリアに、ルシードは続けた。


「王の説得がうまくいったんだよ。

君は女性の姿で、アリアとして宰相になっていいんだ。

まぁ、俺としては、すぐに結婚できなくなりそうで、残念ではある…がっ⁉︎」


最後まで話終える前に、アリアが飛びついてきた!


「いいのね⁉︎

私、男装やめて、ほんとにいいのね⁇」


アリアの目がキラキラ輝いた。


「ああ、もう大丈夫だ」


勢いに押されながらもルシードは頷き、

しっかり抱きしめ返した。


「明日、クロード様からお話があった後、

アリアには、王にもう一度女性姿で、挨拶に行ってもらうことになる。

君のドレスや侍女の選定なんかの準備があって、

正式に話すのは明日になる予定だったんだ。

だけど、アリア、気にしてるだろうなと思って」


アリアは嬉しかった。

女性に戻っていいことも、

それをいち早く伝えてくれたルシードにも、

そもそもこうなるように仕向けてくれたルシードに本当に感謝しかなくて、

思わずルシードの頬にキスをした。

ルシードは目を大きくしてアリアを見ると、

優しく微笑んで、

アリアの唇に、長い長いキスをした。
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