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51話 君自身に価値がある
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クロードとルシードは、ソファに対面で腰掛けると、
ルシードがアリアを側へ手招きで呼んだ。
どういうつもりかと思ったが、
ひとまず呼ばれたルシードの隣へ座る。
黙っていると、クロードが口火を切った。
「トレイル殿」
「はい」
妙に真剣な顔つきで、静かに呼ばれたので、アリアは緊張し、おずおずと返事をする。
「君は、その、…女性だというのは本当なのか?」
クロードが恐る恐る聞いた。
あまりに突然だったので、アリアは何が正しい答えなのかわからず、
動揺して、ルシードの方を見た。
ルシードは微笑んで頷いたので、
言っても構わないのだと悟り、クロードの方を向き直ると、
「…はい、おっしゃる通りです。
…今まで隠していて、申し訳ございませんでした…」
アリアはついにバレてしまった、
道半ばでガルティアに返されてしまうのか…
と肩を落として答えると、
クロードはアリアの手を取り、
「トレイル殿、いや、アリアだったね。
これまで、そのように窮屈な男装まで強いて、
無理をさせてすまなかった。
全て、ルシードから聞いたよ。
男装のことも、2人は想い合っていて、
今すぐにでも結婚したいぐらいなのだということも…」
ぐりんっと首を回してルシードを見た。
ルシードは満面の笑みでこちらを見つめている。
なんで?
そんなに結婚を急いだりしていないのにっ
この国はまだ道半ばなのに…
自分の目で国の発展と幸せになったクロード様を見届けたいのに!
どういうこと⁈ルシード様ったら!
…あっ…まさか…さっきの本…
私が結婚したくて悩んでると思って?
目を白黒させて考えるアリアをよそに、
クロードは続ける。
「アリア、このことを私が知った以上、
君にこれ以上苦労はかけられない。
しかし、だからと言って、
恥ずかしながら、君の手を借りなくて良いと言えるほど、
この国は成熟していない。
君はこれまで、驚くべき早さで、国民の健康と生活を安定させてくれた。
その功績を国民たちが一番わかっている。
だから、宰相が男だろうと女だろうと、
必要なのは君自身だということは、
国民にはすぐに理解できるだろう。
あとは、父が納得さえすれば、君を女性宰相として正式に迎えることができる。
…この件、いったん私に預からせてくれないか?
必ず父を納得させてみせるよ」
もしだめだったら?
それって一か八かなんじゃないの?
と不安になって、ルシードを見る。
ルシードは優しい微笑みで頷いた。
ルシードのことだ。
もし宰相がだめでも、
第二王子である自分の妃になれば、国のことに全く口を出せないわけじゃないから、
何も問題ないとでも思っているのだろう。
いや、むしろそうなるのを待っているような…
アリアはちろりとルシードを睨んだ。
でも自分と早く結婚したいと思ってくれるのはやっぱり嬉しかったので、
どのみち帰らなくて済むならと、クロードの返事に頷いた。
「よし!決まりだ!
じゃあ、父の説得に行ってくるよ。
それまでは、申し訳ないが、まだトレイル姿のままで頼む。
じゃあ失礼するよ。
ルシード、君もいくら想い合っていても、
婚約もしていないのに、2人きりはいけない。
一緒に行こう」
そう言うと、クロードは早速扉の方へと向かった。
「はい、クロード様」
と、ルシードはもう少しアリアと一緒にいたかったと思いながら、しぶしぶ着いて行った。
ルシードがアリアを側へ手招きで呼んだ。
どういうつもりかと思ったが、
ひとまず呼ばれたルシードの隣へ座る。
黙っていると、クロードが口火を切った。
「トレイル殿」
「はい」
妙に真剣な顔つきで、静かに呼ばれたので、アリアは緊張し、おずおずと返事をする。
「君は、その、…女性だというのは本当なのか?」
クロードが恐る恐る聞いた。
あまりに突然だったので、アリアは何が正しい答えなのかわからず、
動揺して、ルシードの方を見た。
ルシードは微笑んで頷いたので、
言っても構わないのだと悟り、クロードの方を向き直ると、
「…はい、おっしゃる通りです。
…今まで隠していて、申し訳ございませんでした…」
アリアはついにバレてしまった、
道半ばでガルティアに返されてしまうのか…
と肩を落として答えると、
クロードはアリアの手を取り、
「トレイル殿、いや、アリアだったね。
これまで、そのように窮屈な男装まで強いて、
無理をさせてすまなかった。
全て、ルシードから聞いたよ。
男装のことも、2人は想い合っていて、
今すぐにでも結婚したいぐらいなのだということも…」
ぐりんっと首を回してルシードを見た。
ルシードは満面の笑みでこちらを見つめている。
なんで?
そんなに結婚を急いだりしていないのにっ
この国はまだ道半ばなのに…
自分の目で国の発展と幸せになったクロード様を見届けたいのに!
どういうこと⁈ルシード様ったら!
…あっ…まさか…さっきの本…
私が結婚したくて悩んでると思って?
目を白黒させて考えるアリアをよそに、
クロードは続ける。
「アリア、このことを私が知った以上、
君にこれ以上苦労はかけられない。
しかし、だからと言って、
恥ずかしながら、君の手を借りなくて良いと言えるほど、
この国は成熟していない。
君はこれまで、驚くべき早さで、国民の健康と生活を安定させてくれた。
その功績を国民たちが一番わかっている。
だから、宰相が男だろうと女だろうと、
必要なのは君自身だということは、
国民にはすぐに理解できるだろう。
あとは、父が納得さえすれば、君を女性宰相として正式に迎えることができる。
…この件、いったん私に預からせてくれないか?
必ず父を納得させてみせるよ」
もしだめだったら?
それって一か八かなんじゃないの?
と不安になって、ルシードを見る。
ルシードは優しい微笑みで頷いた。
ルシードのことだ。
もし宰相がだめでも、
第二王子である自分の妃になれば、国のことに全く口を出せないわけじゃないから、
何も問題ないとでも思っているのだろう。
いや、むしろそうなるのを待っているような…
アリアはちろりとルシードを睨んだ。
でも自分と早く結婚したいと思ってくれるのはやっぱり嬉しかったので、
どのみち帰らなくて済むならと、クロードの返事に頷いた。
「よし!決まりだ!
じゃあ、父の説得に行ってくるよ。
それまでは、申し訳ないが、まだトレイル姿のままで頼む。
じゃあ失礼するよ。
ルシード、君もいくら想い合っていても、
婚約もしていないのに、2人きりはいけない。
一緒に行こう」
そう言うと、クロードは早速扉の方へと向かった。
「はい、クロード様」
と、ルシードはもう少しアリアと一緒にいたかったと思いながら、しぶしぶ着いて行った。
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