上 下
41 / 82

41話 恋のお話

しおりを挟む
「ねぇ、アリアってほんとにすごいのね!

私と同い年だなんて思えないわ!」


目をキラキラさせてマルシェはアリアを見た。


「そんなにすごくはないですよ。

私の兄の方がよっぽどすごいですし、ちょっとガリ勉なだけの家系なんです」


と謙遜はしてみたが、褒められて悪い気はしなかった。


あれからアリアは自室に戻ると、マルシェが部屋に遊びに来た。


せっかく全部秘密をしっているマルシェなので、男装は解きたかったが、

まだ日中なので、誰かが部屋に来てもいいように、

男装はしたままにしておいた。


「ねぇ、私、信頼できる女の子がいたら、

話してみたいことがあったんだけど、

アリアに話してみていいかな?」


「…?私でいいなら聞くわよ?」


「えへっ、じゃあ言うね?

…ねえ、アリアってね?その…好きな人いる?」


「え?…」


今まで国の大変な話ばかりで、そんな明るい話は久しぶりだったため、

アリア少し面食らってしまった。


アリアの大事な推しはもちろんクロード様だ。

しかし、たぶん今聞かれているのは、

恋人として好きかどうかということだろう。

だとしたら、それは違った。

あの小説で、なんだか1人だけあんまり幸せそうじゃないなぁって思って、

どうしても助けたくなったからここに来たけど、

そういう好きとは違う気がした。


「…いない…かな?たぶん」


「え~?そうなの?ざんねん!

好きな人のお話がしたかったのに!」


なるほど!恋バナしたいお年頃よね!

どこの世界でも変わらないわね。


「マルシェはいるの?」


聞くと、マルシェは急に顔が赤くなった。

自分から話し出しておいて、

自分のこととなるとやっぱり恥ずかしいらしい。

それから小さく頷いたのが、とても可愛らしかった。 


「…私ね、ずーっと前からクロード様が好きなの」


「えっ⁈」


でも、今は兄なんじゃ…

まぁ、血は繋がっていないから、いいのか? 


「兄だからダメって思った?」


そういう顔をしてしまっていたのか、

図星を突かれてしまって、焦った。


「血は繋がってないから、いいんじゃないの?って思ったけど、

関係性的には大変そうな恋ね?」


正直に思ったことを伝えた。


「そうなのよね。

クロード様の方は私のこと妹としか思ってないし、

そういう感じで可愛がろうとして近づいてくれるんだけど、

私はお兄様として見ていないから、

なんだか恥ずかしくて逃げてばかりなの。

こんなことしてたら嫌われちゃうよね。

それに、お兄様って呼んでほしいって何度も言われるけど、

私、兄妹になりたくないから、絶対お兄様とは呼びたくないの。

はあ~

どうしたらいいのかしら。

ねえ?アリアはどう思う?」


うーん…

応援してあげたいのは山々だけど…

ここの国の法律的なものを調べないと、

簡単に返事はできないわね

 
「そうね、想うのは自由だから、いいと思うんだけど…

発展させたいなら、

今の私はこの国が何を禁止して、

何を許しているのかわからないから、

何とも言えないわ。

マルシェは知ってる?」


「ううん、わからないの。

女性は知恵をつけてはいけないって、

あまりお勉強させてもらえないし、

こんなことそもそも誰にも相談できなかったし…」


マルシェは辛そうな表情で俯いた。


「そっかぁ。大変だったのね。

わかった、私が調べておくから安心して!」

そう言うと、少し涙ぐんだマルシェを抱き寄せ、

ゆっくり背中を撫でてやった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

Wヒロインの乙女ゲームの元ライバルキャラに転生したけれど、ヤンデレにタゲられました。

舘野寧依
恋愛
ヤンデレさんにストーカーされていた女子高生の月穂はある日トラックにひかれてしまう。 そんな前世の記憶を思い出したのは、十七歳、女神選定試験が開始されるまさにその時だった。 そこでは月穂は大貴族のお嬢様、クリスティアナ・ド・セレスティアと呼ばれていた。 それは月穂がよくプレイしていた乙女ゲーのライバルキャラ(デフォルト)の名だった。 なぜか魔術師様との親密度と愛情度がグラフで視界に現れるし、どうやらここは『女神育成~魔術師様とご一緒に~』の世界らしい。 まあそれはいいとして、最悪なことにあのヤンデレさんが一緒に転生していて告白されました。 そしてまた、新たに別のヤンデレさんが誕生して見事にタゲられてしまい……。 そんな過剰な愛はいらないので、お願いですから普通に恋愛させてください。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

処理中です...