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33話 2つ目のプラン

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「では、資金繰りはいったんそれを進めるとして…」


と、アリアはさらに、国の立て直し計画を話していく。


「一番の最優先すべき問題は、

この国の飢饉と病の蔓延をどう止めるかですね。

ガルティアから貰った苗や種も、

いくら不安定な気候に強いからといって、

さすがに今すぐ植えても収穫までには数ヶ月かかる。

それに畑の整備に多くの人手がいるのに、

たくさんの人が病に侵され、その手も少ない。

では、まずその手を増やすために、病を治すのが先決。

この国の領土は103区域で間違いないですか?」


アリアは書類に書かれていた数字を思い出す。

国は小さいのに区割りが多いと思っていた。

つまり、日本でいうところの市レベルだろうか…


「ああ、そうだ。本当によく覚えいるね」


と、クロードは感心する。


「では、協力的な領主はそのうちどのくらいですか?」


「ああ、それなら、私にはほとんど皆協力的だ。

どの土地も豊かな土地はなく、

この国の領主たちは、皆国を憂いている者ばかり。

王宮に送るための税を、領土から徴収するために、

町民たちを締め上げるものもいるが…

しかし、国が良くなろうとすることに反発する者はいないだろう。」


「そうですか…

では、今回派遣された光魔術師は50人ほど。

1人につき隣り合った2つの区域を担当させます。

1週間~2週間毎くらいに光魔術師を行き来させることにして、

103区域を漏れなく診ることができるようにします。

しかし、

たくさんの家を1人で回ることはできません。

そこで、領主の抱える人間や馬車を使って、

病人の送迎をお願いします。

場所は領主の邸を借り、

一つの場所に病人を集めます。

重病人はそこに泊まらせ集中的に治療します。

もし、病人を入れるのを嫌がる領主がいれば、

仮にテントなど、

すぐに作れる建物と、ベッドが準備できれば

それでもかまいません。

…できそうですか?」


「ああ、できるできないではない。やるしかないのだから」

クロードは強い目をして言った。


「はい、そうですね。

限られた人数や物でやれることをやるしかありません。

一度に同じ場所に病人が集められれば、

光魔術師も時間を無駄にせず、

早く治癒がすすむでしょう。

それで元気になった方たちに、

畑の整備にとりかかってもらいます。

…私、ひとつ、考えていたことがあって、

これは試してみたことがないのでわからないのですが…

光魔術師は治癒の他に活力を湧き起こさせることができます。

これを、畑の作物に応用できないのか、試してみたくて…

そしたら、早く収穫できるのでは?と思っているのです。

一度、どこかで実験させて頂けませんか?

どこか畑になりそうな場所をお借りしたいのですが…」


「ああ、わかった、すぐに手配しよう!

トレイル!

やらなければならない事だらけだが、

こんなに嬉しい忙しさは初めてだ!

本当にこの国のために知恵を貸してくれてありがとう!」

クロードはキラキラした目をしながら、

アリアの両手を掴んでお礼を言った。


きゃー!手っ!手っ…て…

と、一瞬気を失いかけ、


「トレイルっ⁈」


と呼びかけられて、なんとか意識を戻したアリアだった…
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