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25話 朝のクロード様

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翌日———


ふぁぁ…


アリアは大きなあくびをしながら目覚め、


なんだかだるい…


と思いながら身支度をしていると、

テーブルに置かれてあった書類を見つけた。


昨日は早くから寝たものだから、

まだ夜明け前に目が覚めてしまったので、

朝食に集まる時間にはまだ早いため、

その書類に目を通していく。


読むことは大好きだったし、

書類にはルバニアの内情が詳しく書かれていたのが興味深く、

夢中になってどんどん読み進め、

一通り頭に入れた頃には、

朝の光が窓から差し込んでいた。


コンコン


とノックの音がして、アリアは朝食のお迎えかなと、返事を返す。


「はい、どうぞ」


ガチャ


「トレイル殿、おはようございます」


と言って入ってきたのは…


クロード様⁉︎

ああ…金色の髪とスカイブルーの瞳が朝日に透けて煌めいて…なんて神々しいの…


思わず手を合わせて拝みたくなってしまう衝動をこらえたアリアは、

さっと立ち上がると、なんとか返事をする。


「おっ、おはようございます!クロード様!」


「ははっ、クロードでいいよ。

私もこれからは長いお付き合いになるだろうし、

トレイルと呼ばせて貰おうかな。」


と美しい笑顔で言うと、


「昨日は本当に申し訳なかったね。

もう一度ゆっくり謝りたくて、

あれから夜に来たんだけど、 

もう休まれていたみたいだから、

朝声をかけられたらと思って。」


それを聞いたアリアは青ざめた。


カツラもサラシも外して寝ていたから、

まさか見られてはいないかと焦った。


「あっ、あの、部屋に入られたのですか?」


「いや、ちょうどルシードが書類を届けにきていて、休まれていると教えてくれたから、

入らずに引き返したんだよ?

…どうかした?」


「いっ、いえ、あの、私はその神経質というか、恥ずかしがりというか、変なところがありまして、

あまり人に部屋に入られるのは好きではないものでして…」


「ああ、そうなんだね。覚えておくよ。

じゃあ、今も出て行った方がいいかな?」


「あっ、いえ、その、起きている時に、

ノックさえしてくだされば大丈夫です。

こちらからの返事なしに入られるのが苦手なものですから…」


それを聞いて、


…なるほど

確かに…18歳だし…そういうお年頃か…

こんなに華奢で、まるで女性のようだが、…

突然誰かが入ってきて、

…そういうことをしているのを見られるのも困るよな…

…鍵でもつけてあげようか…ふむ


というクロードの盛大な勘違いによって、

その後早々に鍵が取り付けられ、

アリアはよくわからなかったが、

急に入られることがなくなり、助かった。
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