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19話 最推し見参!

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うわぁ、やったわねー、この王様

えらい酔っ払いだわ


と、またまた、28歳社畜ともなれば、

そんなことはよくあることなので、

あまり気にしていなかったのだが、


「父上っ!」

と、走ってきたのは

きゃー!

クロード様ー‼︎

「何をなさっているのです!

我が国のためにわざわざ来てくださった 

ガルティアの重鎮、トレイル殿なのですよ⁈」

そう言って、お酒に濡れた私の腕を引き、

ソファから立ち上がらせると、

クロード様の背中の後ろへ隠してくださった!


うそっ⁉︎

私、今、クロード様に助けてもらってるの⁈

きゃー‼︎死ぬー‼︎

なんで男姿なのよー!くやしー!

でも推しと恋愛なんてできないー!

あー、何この葛藤!



悶絶しながら

クロード様の素敵な背中を眺めていると、



「ああ、もうお前は本当に堅苦しい。

興醒めじゃ!行って良いぞ!」

王はそう言って、クロード様、私、ルシード様に向かって、しっしっと追い払うように手をひらひらさせた。


「はぁ…」

とクロード様は溜め息をついて、

諦めたように、私の方を振り返ると、

「トレイル殿、参りましょう」

と、ひとまず王のそばから離れさせ、



「いったんお部屋にお戻りになってください。

湯と着替えの用意を致します。

お疲れでしたら、

そのままお休みいただいても構いません。

父が大変申し訳ございませんでした。

息子の私から、

どうか非礼をお詫びさせてください」

と、胸に手を当てて、俯きながら、本当に申し訳なさそうにクロード様が謝った。


「あっ、大丈夫です。このくらい。

気にしないでください」

と、クロード様と話せたことに、ついつい満面の笑みを溢してしまう。


「そのように寛大な……本当にありがとうございます。

私はこの後、

もう少し他の派遣者様との話がございますので、

このまま残らねばならないのですが、

ルシードについて行かせますので、

どうかご容赦ください」

「あっ、いえ、1人で大丈夫です!」


そんな2人を遮って、

「いえ、そんなわけには参りません。

では参りましょう」

ルシードはそう言うと、また部屋へ向かって、

アリアの前を歩き始めたので、急いでついていく。


あ~、クロードさまぁ、また後でねー


と、内心名残りを惜しみながら、

後ろのクロードを恨めしそうに見た。
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