上 下
17 / 82

17話 キャバクラですか?

しおりを挟む


私は王の前まで行くと、片膝を付き、胸に手を当てて、騎士の礼をする。


きゃー!

私、これ一回やってみたかったのよねー!

まさか王様相手に出来るなんて、思わなかったわ!



と、俯きながらアリアは内心ワクワクしていた。

横からルシードが紹介してくれる。

「こちら、トレイル=シュバルツ殿は、

今回ガルティア王国より、

我が国ルバニアの宰相職を担う人材として、

こちらへ参られました。

お目通りをお願い致します」


「ああ、よいよい、堅苦しいのは苦手じゃ」

そういうと、王は急に私の腕を掴んで引っ張ると、

自分の隣に引き寄せ、密着して肩を組んだ。

「きゃっ」

転んだようにソファに引き摺り込まれたせいで、

思わず女の子の叫び声を漏らしてしまって、

慌てて口に蓋をした。

ルシードは横から

あっ!

と、手を伸ばしてはくれたが、 

途中で、王相手に逆らえないことに気づき

悔しそうな顔をして、その手を引っ込めてしまった。


「なんじゃなんじゃ。

キレイな顔をしておると思えば

叫び方まで女みたいじゃな!

ガッハッハッ

して?お主がわが国の宰相になってくれるとか?」

「あっ、あの、ええ。トレイルと申します。よろしくお願いしますっ」

と、初体験のキャバクラで縮こまる、

社長に連れてこられた新人社員のようになりながら

アリアは言った。

それを見て、

きゃーかわいいわ~

食べちゃおうかしらっ

など、周りの女性たちが、口々に言って

私をベタベタと触ってくる。


「なんじゃ、なんじゃ、妬けるのう。

お前たち、こんなヒヨッコがいいのか?」


とギラリと王に睨まれた女性たちは、慌てて


「そっ、そんなわけないじゃないですかぁ」


と、また王にすり寄った。



どこの世界も同じだなぁ



と、なんだが懐かしささえ感じられて、

こんなことにさえ、嬉しくなってしまった。
しおりを挟む

処理中です...