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18話 皇帝の初デート

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「まぁ…本当に綺麗な薔薇ですわ。それに見たことのない種類のものがこんなにたくさん…素晴らしいお庭ですね」

 百近い種類の薔薇が見事なバランスに配置され、庭師に会ってみたいと思うほどの素晴らしいローズガーデンにエリーゼは息を呑んで見惚れていた。

「ここに連れて来て正解だったようだな」

 エリーゼはそう言われて隣を歩く長身のフィリップを見上げた。

 フィリップは優しく微笑んでエリーゼを見つめていて、エリーゼは気恥ずかしくなって俯いてしまった。 

 それを見たフィリップは、自分が無意識にエリーゼを見つめ過ぎていたことに気付き、自分まで恥ずかしくなる。

「ああ、いや、どうも先程は落ち込んでいるように見えたが、花を見て笑顔が戻ったようだからな。少し気持ちが晴れたようで何よりだ」

 照れ臭くなったフィリップは、頭を掻きながらそう言った。

「あ…陛下…そのように温かいお気遣いを賜り本当にありがとうございます」

 エリーゼは改まって丁寧に礼をした。

 あの侍女のポーラもフィリップのことを『あんなに優しい人は見た事がない』と言っていたが、本当にその通りだと実感したエリーゼは、その優しさに対して丁寧に礼を返さなくてはならない気持ちにさせられた。

「そうかしこまらなくていい。あの従者にしていたような話し方の方が楽しそうだ」

 ルシファーに対して怒っていたエリーゼを思い出して、あんな風に自分にも話して貰えたらどんなに楽しいだろうと、フィリップの妄想は広がっていた。

「…ルシファーは…幼い頃からずっと一緒だったものですから…同じというのは…」

 皇帝にそんな態度はできないといった風にフィリップには聞こえたかもしれないが、エリーゼはルシファーとの特別な関係は誰かと同じにはしたくないという思いだった。

 『従者』という言葉に反応して、またエリーゼの表情が曇ってしまったのを見て、フィリップは理解した。

「そうか。そなたがそのように暗い表情になったのは、その馴染みの従者がいなくなったからなのだな。…心細いか?」

 『幼い頃からずっと一緒の従者』なら、フィリップにもいる。自分から、もしラルフを取り上げられてしまったらどうだろうと想像してみたら、やはりそれはこわかった。

「…いえ。大丈夫です。もともと一緒に連れて来るつもりもなかったのですから」

(毅然としているがきっと寂しいのだろう…
かわいそうに…
それにしても、何故急に帰ってしまったのだ?
どうせ着いて来たなら、ずっと居てやればいいものを…
挨拶に来た時はあんなにこの姫君を大切そうにしていたのに、解せんな…)
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