17 / 22
17
しおりを挟む
クコリとの薔薇園デート後。
アイツはあれから一切俺に接触してこなくなった。
学校で顔を合わせてもすぐに背けられ、鉢合わせても逃げられてしまう。
「ねえ、アズラオ様…クコリから避けられててなんか寂しそうじゃない?」
「ああ…前々からイザコザみたいなのはあったっぽかったけど…」
クラスメイト連中のヒソヒソ声があちこちで聞こえ、多くの視線を注がれる。
クコリが近寄らなくなったのは清々しているが、一日のほとんどの時間を過ごす学校でこの状況は居た堪れない。
だから授業など最低限の時間を除いたあいだは、無人の屋上で暇を潰したり、静かな図書室で勉強したり。
そんなことをしながらも平穏に過ごしていたある日のことだった。
「アズラオ。」
学校から帰ってきたばかりの俺を、ザフィルが呼び止める。
「来なさい。お前に客人が来ている。」
奴の後をついていくと、着き先は応接間だった。
見ればクコリが俯いて座っている。
「生徒たちから噂は聞いている。何があったかは知らないが、お互いにいつまでも意地を張り続けてばかりでは何も解決しない。話し合うべきだ。」
「……………」
誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ。
思わずその言葉が漏れそうになったが、今はグッと我慢だ。
俺はクコリと向かい合う形で席に座り、奴の出方を待つ。
「あのときはごめんなさい。ただ私と貴方の立場を考えたら、仕方のないことだったのよ。」
謝罪はされたが、何をどう詫びているのかは言及しない。
恐らく部屋の隅で監視しているザフィルにバレないよう、問題を解決させる方針でいくつもりなのだろう。
とことん舐め腐った態度だが、俺としてもそっちの方が都合が良いため、それに合わせる。
「ああ。俺も軽率な行動だった。でもお前だって、ああなることは予想ついたんじゃないのか?」
「それは…」
クコリは口篭る。
あまり沈黙が続くと、ザフィルから『何があったんだ?』と横槍を入れられかねない。
俺は口を開いた。
「いくらでもやりようはあったんじゃねえのか?それこそ、こうなる前に三人で話し合うとか。」
「それは…そうだけど…」
クコリは言い渋ってばかりで、話が発展しない。
(…参ったな…)
このまま俺ひとりがペラペラ話し続けるわけにはいかない。
かといってコイツが話すのを待ってたら、いつになるか分からないし、横槍のリスクも高まる。
俺は途方に暮れた。
その直後だった。
「失礼致します。」
突如として大勢の見知らぬ男たちが上がり込んできた。
奴らは忌々しげに俺を睨め付けている。
全員初めて見る顔だが、俺はこの連中の正体について察していた。
王家の神聖な血統を絶対視する団体だ。
「何者だ?ここを王城と知っての振る舞いか?」
静かに怒るザフィルに、男たちは静かに言い放つ。
「アズラオ・ランダ・ロザ・クランドル様。貴方を王家反逆の罪で起訴します。」
「!!?」
「罪状はお分かりですか?」
「はい。」
目を剥いて驚くザフィルをよそに、俺は頷いた。
「では、我々についてきていただきましょうか。」
「待て!!」
俺を連行しようとする男たちに、ザフィルが声をかける。
「王弟であるアズラオを王家反逆者として訴える?それが何を意味するのか、理解しているのか?」
そうだ。
一応は王族の俺を王家反逆の罪で訴えるということは、王族に対しての多大なる冒涜。
もし裁判をして敗訴したならば、訴えた側は極刑どころでは済まないだろう。
「重々承知です。その上で彼に令状を出させていただきました。」
男たちから差し出された逮捕状を目にした瞬間、ザフィルは唖然と言葉を失う。
「それでは、アズラオ被告。貴方には今から裁判所にまで来ていただきます。」
「さ、裁判所?そんないきなり!」
クコリは異議を唱えるように声を荒げるが、男たちは黙ってかぶりを振る。
もし逮捕から裁判までの期間を空けてしまったら、その間に俺とコイツらで口裏を合わせて無実を主張する可能性が十分にある。
それを防ぐために、今まで準備を整え、こうして逮捕と裁判を申し出たのだろう。
「それでは、参りますよ。」
男たちに連行される形で、俺は裁判所まで足を運んだ。
アイツはあれから一切俺に接触してこなくなった。
学校で顔を合わせてもすぐに背けられ、鉢合わせても逃げられてしまう。
「ねえ、アズラオ様…クコリから避けられててなんか寂しそうじゃない?」
「ああ…前々からイザコザみたいなのはあったっぽかったけど…」
クラスメイト連中のヒソヒソ声があちこちで聞こえ、多くの視線を注がれる。
クコリが近寄らなくなったのは清々しているが、一日のほとんどの時間を過ごす学校でこの状況は居た堪れない。
だから授業など最低限の時間を除いたあいだは、無人の屋上で暇を潰したり、静かな図書室で勉強したり。
そんなことをしながらも平穏に過ごしていたある日のことだった。
「アズラオ。」
学校から帰ってきたばかりの俺を、ザフィルが呼び止める。
「来なさい。お前に客人が来ている。」
奴の後をついていくと、着き先は応接間だった。
見ればクコリが俯いて座っている。
「生徒たちから噂は聞いている。何があったかは知らないが、お互いにいつまでも意地を張り続けてばかりでは何も解決しない。話し合うべきだ。」
「……………」
誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ。
思わずその言葉が漏れそうになったが、今はグッと我慢だ。
俺はクコリと向かい合う形で席に座り、奴の出方を待つ。
「あのときはごめんなさい。ただ私と貴方の立場を考えたら、仕方のないことだったのよ。」
謝罪はされたが、何をどう詫びているのかは言及しない。
恐らく部屋の隅で監視しているザフィルにバレないよう、問題を解決させる方針でいくつもりなのだろう。
とことん舐め腐った態度だが、俺としてもそっちの方が都合が良いため、それに合わせる。
「ああ。俺も軽率な行動だった。でもお前だって、ああなることは予想ついたんじゃないのか?」
「それは…」
クコリは口篭る。
あまり沈黙が続くと、ザフィルから『何があったんだ?』と横槍を入れられかねない。
俺は口を開いた。
「いくらでもやりようはあったんじゃねえのか?それこそ、こうなる前に三人で話し合うとか。」
「それは…そうだけど…」
クコリは言い渋ってばかりで、話が発展しない。
(…参ったな…)
このまま俺ひとりがペラペラ話し続けるわけにはいかない。
かといってコイツが話すのを待ってたら、いつになるか分からないし、横槍のリスクも高まる。
俺は途方に暮れた。
その直後だった。
「失礼致します。」
突如として大勢の見知らぬ男たちが上がり込んできた。
奴らは忌々しげに俺を睨め付けている。
全員初めて見る顔だが、俺はこの連中の正体について察していた。
王家の神聖な血統を絶対視する団体だ。
「何者だ?ここを王城と知っての振る舞いか?」
静かに怒るザフィルに、男たちは静かに言い放つ。
「アズラオ・ランダ・ロザ・クランドル様。貴方を王家反逆の罪で起訴します。」
「!!?」
「罪状はお分かりですか?」
「はい。」
目を剥いて驚くザフィルをよそに、俺は頷いた。
「では、我々についてきていただきましょうか。」
「待て!!」
俺を連行しようとする男たちに、ザフィルが声をかける。
「王弟であるアズラオを王家反逆者として訴える?それが何を意味するのか、理解しているのか?」
そうだ。
一応は王族の俺を王家反逆の罪で訴えるということは、王族に対しての多大なる冒涜。
もし裁判をして敗訴したならば、訴えた側は極刑どころでは済まないだろう。
「重々承知です。その上で彼に令状を出させていただきました。」
男たちから差し出された逮捕状を目にした瞬間、ザフィルは唖然と言葉を失う。
「それでは、アズラオ被告。貴方には今から裁判所にまで来ていただきます。」
「さ、裁判所?そんないきなり!」
クコリは異議を唱えるように声を荒げるが、男たちは黙ってかぶりを振る。
もし逮捕から裁判までの期間を空けてしまったら、その間に俺とコイツらで口裏を合わせて無実を主張する可能性が十分にある。
それを防ぐために、今まで準備を整え、こうして逮捕と裁判を申し出たのだろう。
「それでは、参りますよ。」
男たちに連行される形で、俺は裁判所まで足を運んだ。
38
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
華麗に素敵な俺様最高!
モカ
BL
俺は天才だ。
これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない!
そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。
……けれど、
「好きだよ、史彦」
何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる