王弟転生

3333(トリささみ)

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 クコリとの薔薇園デート後。
 アイツはあれから一切俺に接触してこなくなった。
 学校で顔を合わせてもすぐに背けられ、鉢合わせても逃げられてしまう。

「ねえ、アズラオ様…クコリから避けられててなんか寂しそうじゃない?」
「ああ…前々からイザコザみたいなのはあったっぽかったけど…」

 クラスメイト連中のヒソヒソ声があちこちで聞こえ、多くの視線を注がれる。
 クコリが近寄らなくなったのは清々しているが、一日のほとんどの時間を過ごす学校でこの状況は居た堪れない。
 だから授業など最低限の時間を除いたあいだは、無人の屋上で暇を潰したり、静かな図書室で勉強したり。
 そんなことをしながらも平穏に過ごしていたある日のことだった。

「アズラオ。」

 学校から帰ってきたばかりの俺を、ザフィルが呼び止める。

「来なさい。お前に客人が来ている。」

 奴の後をついていくと、着き先は応接間だった。
 見ればクコリが俯いて座っている。

「生徒たちから噂は聞いている。何があったかは知らないが、お互いにいつまでも意地を張り続けてばかりでは何も解決しない。話し合うべきだ。」
「……………」

 誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ。
 思わずその言葉が漏れそうになったが、今はグッと我慢だ。
 俺はクコリと向かい合う形で席に座り、奴の出方を待つ。

「あのときはごめんなさい。ただ私と貴方の立場を考えたら、仕方のないことだったのよ。」

 謝罪はされたが、何をどう詫びているのかは言及しない。
 恐らく部屋の隅で監視しているザフィルにバレないよう、問題を解決させる方針でいくつもりなのだろう。
 とことん舐め腐った態度だが、、それに合わせる。

「ああ。俺も軽率な行動だった。でもお前だって、ああなることは予想ついたんじゃないのか?」
「それは…」

 クコリは口篭る。
 あまり沈黙が続くと、ザフィルから『何があったんだ?』と横槍を入れられかねない。
 俺は口を開いた。

「いくらでもやりようはあったんじゃねえのか?それこそ、こうなる前に三人で話し合うとか。」
「それは…そうだけど…」

 クコリは言い渋ってばかりで、話が発展しない。

(…参ったな…)

 このまま俺ひとりがペラペラ話し続けるわけにはいかない。
 かといってコイツが話すのを待ってたら、いつになるか分からないし、横槍のリスクも高まる。
 俺は途方に暮れた。
 その直後だった。

「失礼致します。」

 突如として大勢の見知らぬ男たちが上がり込んできた。
 奴らは忌々しげに俺を睨め付けている。
 全員初めて見る顔だが、俺はこの連中の正体について察していた。
 王家の神聖な血統を絶対視する団体だ。

「何者だ?ここを王城と知っての振る舞いか?」

 静かに怒るザフィルに、男たちは静かに言い放つ。

「アズラオ・ランダ・ロザ・クランドル様。貴方を王家反逆の罪で起訴します。」
「!!?」
「罪状はお分かりですか?」
「はい。」

 目を剥いて驚くザフィルをよそに、俺は頷いた。

「では、我々についてきていただきましょうか。」
「待て!!」

 俺を連行しようとする男たちに、ザフィルが声をかける。

「王弟であるアズラオを王家反逆者として訴える?それが何を意味するのか、理解しているのか?」

 そうだ。
 一応は王族の俺を王家反逆の罪で訴えるということは、王族に対しての多大なる冒涜。
 もし裁判をして敗訴したならば、訴えた側は極刑どころでは済まないだろう。

「重々承知です。その上で彼に令状を出させていただきました。」

 男たちから差し出された逮捕状を目にした瞬間、ザフィルは唖然と言葉を失う。

「それでは、アズラオ被告。貴方には今から裁判所にまで来ていただきます。」
「さ、裁判所?そんないきなり!」

 クコリは異議を唱えるように声を荒げるが、男たちは黙ってかぶりを振る。
 もし逮捕から裁判までの期間を空けてしまったら、その間に俺とコイツらで口裏を合わせて無実を主張する可能性が十分にある。
 それを防ぐために、今まで準備を整え、こうして逮捕と裁判を申し出たのだろう。

「それでは、参りますよ。」

 男たちに連行される形で、俺は裁判所まで足を運んだ。
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