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拷問最終日 〜エピローグ〜
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「マカーイ広場にお越しください。
魔王陛下がお呼びです。」
拷問最終日当日。
リーモンはしもべに言われ、魔王城の自室から屋外のマカーイ広場へと移動した。
其処には大勢の魔物たちと魔王が既に集まっており、中心には猿轡を噛まされ磔にされたルタがいる。
「……」
「……」
ふたりは僅かの間視線を交わして、そらす。
言葉はもう必要ない。
あとはお互いを信じるだけだ。
「静粛に!!」
魔王の一喝で、大衆のざわめきが止む。
「これより伝説の勇者の尋問を執り行う!
奴らの居場所を把握次第すぐに攻め入るため、諸君らは戦の準備をするように!」
ーーーーーオオオオオオ!!!!
大勢の魔物たちが勝ち鬨の如く喜びの声を上げる。
そんな彼らを見て、ルタの表情に翳りが現れる。
「さて、早速始めよう……オイ。」
魔王が視線を送ると、係官たちが頷いてルタの猿轡を外し、磔から解放する。
「さあ、伝説の勇者の息子よ。
貴様ら一族の居所を吐け。」
「……」
ルタは震えていた。
引き攣らせた真っ青な顔で、口をはくはくと動かしながら、言葉にならない言葉を紡ぐ。
無理もない。
いくら苦しめられてきたとはいえ、今まで自分を育ててくれた人たちを裏切ろうとしているのだ。
「……おれ は」
その時だった。
「ギャアアァァァァァ!!!」
大衆の後方から悲鳴が轟く。
「何だ!?」
魔王と係官たちが驚いて見遣ると、其処には…
「覚悟しろ、魔王!!」
金に輝く装飾、そしてそれらに劣らぬ程にまばゆい顔の美丈夫が、遠方から黄金に光る大剣を魔王に突きつける。
「貴様、まさか…」
「ルタ!!!」
美丈夫はルタを目に入れた瞬間、声を張り上げる。
「陛下、ここは…」
「良い。下がっておれ。」
魔王は係官たちや大衆を退かせると、特大の光線を美丈夫に向けて放つ。
光線はヒットし、辺りは爆煙に包まれた。
「ウォーッ!!陛下の暗黒魔光砲!!
まさか見られるときが来るとは!!」
「いよっしゃあ!!これであの勇者気取りの糞餓鬼も木っ端微塵よ!!」
「ヒャハハハ、ざまあみやがれってんだ!!」
「……」
爆煙が止むと、其処には蟻の子一匹いなかった。
「どうやら奴は消えたようですね、陛下。」
「ふむ。拍子抜けしたな。」
ーーーーーザシュッ
瞬間、魔王の首が飛んだ。
「へっ……陛下あああ!!!」
絶叫を上げた幹部のアクアスフィードの首が飛び、辺りは絶叫に包まれる。
「ヒッ…ヒイイィッ!!!」
「うわあああっ、助けてくれえっ!!!」
「ぎゃあっ!!!」
噴出する血飛沫。
止まらない断末魔。
次々と増える屍。
阿鼻叫喚の地獄絵図と化した広間の片隅で頽れるリーモンに、歩み寄る男がひとり。
「…ルタ。」
リーモンはへたり込んだまま見上げる。
「兄貴…ユタが魔王を倒した。
此処にいる魔物どもも、じきに皆殺しにされるだろう。
この場に居合わせた魔物のお前も、例外じゃない。
だが助かる方法がひとつだけある。」
「…何だよ。」
ルタはゆっくりと笑みを形作る。
今までの幼さの残る愛らしいそれでも、快楽に蕩けきったそれでもない、ひどく妖艶だが底の見えない笑顔。
そしてしゃがみ込むと、リーモンから首輪を取り上げて彼に付ける。
「俺が飼ってやる。」
奈落に落ちるように、意識は急速に暗転した。
LAST TORTURE ~魔界の拷問吏と捕虜勇者~
ー完ー
魔王陛下がお呼びです。」
拷問最終日当日。
リーモンはしもべに言われ、魔王城の自室から屋外のマカーイ広場へと移動した。
其処には大勢の魔物たちと魔王が既に集まっており、中心には猿轡を噛まされ磔にされたルタがいる。
「……」
「……」
ふたりは僅かの間視線を交わして、そらす。
言葉はもう必要ない。
あとはお互いを信じるだけだ。
「静粛に!!」
魔王の一喝で、大衆のざわめきが止む。
「これより伝説の勇者の尋問を執り行う!
奴らの居場所を把握次第すぐに攻め入るため、諸君らは戦の準備をするように!」
ーーーーーオオオオオオ!!!!
大勢の魔物たちが勝ち鬨の如く喜びの声を上げる。
そんな彼らを見て、ルタの表情に翳りが現れる。
「さて、早速始めよう……オイ。」
魔王が視線を送ると、係官たちが頷いてルタの猿轡を外し、磔から解放する。
「さあ、伝説の勇者の息子よ。
貴様ら一族の居所を吐け。」
「……」
ルタは震えていた。
引き攣らせた真っ青な顔で、口をはくはくと動かしながら、言葉にならない言葉を紡ぐ。
無理もない。
いくら苦しめられてきたとはいえ、今まで自分を育ててくれた人たちを裏切ろうとしているのだ。
「……おれ は」
その時だった。
「ギャアアァァァァァ!!!」
大衆の後方から悲鳴が轟く。
「何だ!?」
魔王と係官たちが驚いて見遣ると、其処には…
「覚悟しろ、魔王!!」
金に輝く装飾、そしてそれらに劣らぬ程にまばゆい顔の美丈夫が、遠方から黄金に光る大剣を魔王に突きつける。
「貴様、まさか…」
「ルタ!!!」
美丈夫はルタを目に入れた瞬間、声を張り上げる。
「陛下、ここは…」
「良い。下がっておれ。」
魔王は係官たちや大衆を退かせると、特大の光線を美丈夫に向けて放つ。
光線はヒットし、辺りは爆煙に包まれた。
「ウォーッ!!陛下の暗黒魔光砲!!
まさか見られるときが来るとは!!」
「いよっしゃあ!!これであの勇者気取りの糞餓鬼も木っ端微塵よ!!」
「ヒャハハハ、ざまあみやがれってんだ!!」
「……」
爆煙が止むと、其処には蟻の子一匹いなかった。
「どうやら奴は消えたようですね、陛下。」
「ふむ。拍子抜けしたな。」
ーーーーーザシュッ
瞬間、魔王の首が飛んだ。
「へっ……陛下あああ!!!」
絶叫を上げた幹部のアクアスフィードの首が飛び、辺りは絶叫に包まれる。
「ヒッ…ヒイイィッ!!!」
「うわあああっ、助けてくれえっ!!!」
「ぎゃあっ!!!」
噴出する血飛沫。
止まらない断末魔。
次々と増える屍。
阿鼻叫喚の地獄絵図と化した広間の片隅で頽れるリーモンに、歩み寄る男がひとり。
「…ルタ。」
リーモンはへたり込んだまま見上げる。
「兄貴…ユタが魔王を倒した。
此処にいる魔物どもも、じきに皆殺しにされるだろう。
この場に居合わせた魔物のお前も、例外じゃない。
だが助かる方法がひとつだけある。」
「…何だよ。」
ルタはゆっくりと笑みを形作る。
今までの幼さの残る愛らしいそれでも、快楽に蕩けきったそれでもない、ひどく妖艶だが底の見えない笑顔。
そしてしゃがみ込むと、リーモンから首輪を取り上げて彼に付ける。
「俺が飼ってやる。」
奈落に落ちるように、意識は急速に暗転した。
LAST TORTURE ~魔界の拷問吏と捕虜勇者~
ー完ー
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